近江学研究所の活動の進捗

第19回参与会議 報告

令和5年7月10日(月)10時から第19回附属近江学研究所参与会議を開催しました。
参与会議は、県内の経済、文化、宗教、芸術など第一線でご活躍される参与の方々と、
成安造形大学の理事長、学長をはじめとする関係者にご出席いただき、
近江学研究所の活動に対してのご意見をいただくという重要な会議です。

会議では、研究所の昨年度後期から今年度前期の事業報告と研究活動についてスライドで紹介し、参与の方々並びに学内関係者からご意見をいただきました。

参与の皆様からは、本研究所がオンデマンド講座をはじめ、今のインターネット社会に対応しながら、公開講座のPR動画制作やSNSアカウントの強化など、研究活動の発信力を高めていることのほか、三井寺の古文書などタイムリーなことを取り上げている点についても高い評価をいただきました。
一方、紀要の電子化などについて、研究成果をインターネットを通じて広げていくのは素晴らしいことであるが、「本という形のあるものを残していくことも重要」ではないか、といったご意見がありました。

また、今年度からスタートした「近江のコミュニティ『惣・座・講』研究プロジェクト」に関する研究報告については、
参与の皆様から、「惣・座・講」は一般的に分かりにくいテーマであること、単体ではなく絡み合うテーマであることなどから、どのようにまとめて伝えていくのか大変興味深い。
滋賀県は、地形的に各地域にさまざまな特色があり、それは、惣で村を守ってきた歴史であるともいえる。比叡山や三井寺の存在もあることから、宗教的な側面も重要である。中世からの惣・座・講を現代とどのようにつないでいくのか期待したい。とのご意見をいただきました。

また、次回の文化誌『近江学』が第15号となることから、15年の研究が多岐にわたるため、20号の発刊や近江学研究所開設20年を迎える際には、これまでの研究をもう一度くくり直すと、素晴らしいものが残るのではないか、といったご意見もありました。

今回の参与会議でいただいた様々なご意見を今後の事業運営や研究活動に活かしながら、開設20周年に向けて、ますます近江学研究を深めていきたいと思います。

2023-07-25T16:18:51+09:002023年7月20日|研究プロジェクト, 研究員の活動|

第27回近江学研究会 報告

6月19日(月)9:30から、客員研究員のみなさまをお招きして、今年度第1回目の近江学研究会を開催しました。
本研究所では今年度から令和7年度にかけて、新たに「近江のコミュニティ『惣・座・講』研究プロジェクト」をスタートしています。今回の研究会では、この3ヵ年の研究プロジェクトの概要と今年度の研究テーマ「惣」、そして次年度の研究テーマとなる「座」について、近江学研究所副所長の加藤賢治研究員から説明があり、その後、意見交換を行いました。

今年度から客員研究員にご就任いただいた大津市歴史博物館副館長の木津勝氏からは、「惣・座・講」それぞれの「差」を一般の方がイメージできるように見せていけるかがポイントではないか。
たとえば、大津祭は規模が大きく、地域外の人や会社等の経済的な力によって維持されてきている。「講」という視点で、大津祭を学びたい、大津祭に関わりたいと外部から入ってこられる方々の動向に着目するのも面白いのではないか。大津祭には「惣・座・講」すべての要素が含まれているといったお話がありました。

對馬佳菜子客員研究員からは、「惣・座・講」のつながりや精神的なところが見えてくると、近江人の姿が見えてくるのではないか。私は「惣・座・講」それぞれに受け入れていただいており(地縁のつながり[惣]・事業者のつながり[座]・サバイブユートピアのような年齢性別関係のないつながり[講])、それぞれ、人間として生活する中で重要なポイントだと感じている。

大原歩客員研究員からは、比良山麓の場合は毎年の大雨で水に対する防御が必要となるため、コミュニティの中で水を管理していくということが今もなお続いている。守山地区は旧住民が少ない地域のため、自主防災を中心において、新旧の住民が一緒にコミュニティを作り上げ、まちづくりを組み立てようという試みが行われている。この防災を中心とした新しいコミュニティの形から、現代の「惣」の視点を見つけられたらと考えている。
「座」では、滋賀県にある素材をどのように流通させてきたかを押さえておくと近江の流通・経済が見えてくるのではないか。とのお話がありました。

また木村至宏顧問からは、「惣・座・講」は通底しているので分けるのが難しい。
それぞれに中心軸がないと、同じようなことを単に言葉として分けられているように思われるのではないか。
(「惣」で堅田に焦点を当てることについて)「惣=堅田」といってもよいが、堅田を含め「惣」に地域コミュニティの基本的な考え方をすべて投入してしまうと、「座」「講」を表現していくことが非常に難しいと思うが、期待をしている。

オブザーバーの田口真太郎助教からは、地域おこし協力隊として近江八幡で活動している際に、地域外の者や若者、女性が伝統的な集落に入っていくことの難しさや魅力を肌で体験した。様々な地域で地域おこし協力隊の活動が行われているが、その効果や成功例は出てきていないように思う。沖島には、移住者や研究者などが入っていて複合的にコミュニティが支えられている。限界集落の現代をインタビューしたいと考えている。というお話がありました。

また、真下武久研究員からは研究会当日の朝に撮影した写真をもとに、近江のコミュニティを「景」をテーマに検証する試みについて報告がありました。滋賀県の自然そのものは普遍的に昔から存在している。琵琶湖の対岸から集落・コミュニティを撮影し、そこに住んでいる人は知らない風景がちょっと離れたところから見ると、自然や環境的に面白い、ということを写真を通してそこのコミュニティに属している人が知ることによって、自分の住んでいる場所が他の人にとって興味のある場所であり、今後もここに来たいと思う人が現れる余地がある、ということが伝わるといいのではないかと考えている。というお話がありました。

近江学研究所では、今年度の研究テーマ「惣」についての研究活動を進めながら、今回の研究会で出た様々な意見を次年度の「座」、そしてその次の「講」の研究につなげていこうと考えています。

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第27回近江学研究会

日時:令和5年6月19日(月) 9:30-11:00

出席者(50音順):
[客員研究員] 大原歩氏、木津勝氏、對馬佳菜子氏
[顧 問] 木村至宏氏
[所 長] 小嵜善通
[副所長] 加藤賢治
[研究員] 石川亮、永江弘之、真下武久
[オブザーバー] 田口真太郎

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びわ湖放送「琵琶湖まんだら」に出演しました

近江学研究所の副所長である加藤賢治副学長(地域実践領域教授)が、この春スタートしたびわ湖放送のテレビ番組「琵琶湖まんだら」の初回放送(4月15日)に出演しました。ぜひ動画をご覧ください。

「琵琶湖まんだら」
テレビ番組(びわ湖放送) 放送日:毎月第3土曜日18:15~18:30
ラジオ番組(エフエム滋賀) 放送日:毎週木曜日13:30~13:55

びわ湖放送とエフエム滋賀が共同制作する「琵琶湖まんだら」は、世界に誇る自然環境とその周辺に広がる人々の暮らしや文化の魅力と大切さをテレビとラジオで紹介する番組です。近江学研究所では、番組の制作協力を行っています。

2023-04-25T10:07:26+09:002023年4月17日|研究員の活動|

成安造形大学附属近江学研究所「紀要」 第12号を公開しました

研究所の研究員や客員研究員の論考をまとめた「成安造形大学附属近江学研究所 紀要」 第12号をウェブサイトで公開しました。
今号は、客員研究員の髙梨純次氏、和田光生氏、研究員の加藤賢治教授、石川亮准教授が執筆されています。
紀要のPDFデータは下記より自由にダウンロードしていただけますので、ぜひご覧ください。

2023-04-25T10:08:59+09:002023年3月27日|関連出版物案内|

文化誌「近江学」第14号(特集 禍 転じて )発刊いたしました

文化誌「近江学」第14号

このたび、近江学研究所では、初年度から発刊して参りました文化誌『近江学』の第14号(特集 禍 転じて)を出版いたしました。
新型コロナウイルス感染症がもたらした大きな「禍」の渦中に、改めて近江で起こった様々な禍、そしてその時人々が禍とどう向き合い乗り越えてきたかを検証し、先人の知恵を現在そして未来に活かす手段を見いだそうと進めてきた研究活動の成果をぜひご覧ください。

文化誌「近江学」第14号
<概要>
特集テーマは「禍(わざわい) 転じて」。疫病や風水害などの自然災害に対して人々はどのように対応してきたのか?──コロナ禍で厄除けとして再び注目をあびた「角大師」の護符、疱瘡(天然痘)にかかった病人の症状を軽くするとされた疱瘡絵や大津絵、土砂崩れを防ぐために建造された長大な石垣などから、人びとの災いとのつきあい方を読み解く。

<目次>

禍 転じて─再生への道筋 インタビュー:今森光彦
聞き手:加藤賢治、石川亮
禍 転じて─結ぶ地図 石川亮、金再奎
近江における厄除 元三大師信仰 加藤賢治、福井智英
近江における悔過と造形 髙梨純次
大津絵と疱瘡絵  近江発、禍への絵画的対抗手段 横谷賢一郎
かわそ信仰と女性 對馬佳菜子
禍をさける・はらう・おくる ─四季折々の祭礼のかたち 大原歩
百間堤 ─江戸時代の自然災害と防災・減災と暮らし─ 高橋大樹
疫病と向き合う ─祈りから医術へ─ 岡井健司
長浜の天正大地震 畑中英二
禍におもう 木村至宏

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発行    成安造形大学附属近江学研究所  〒520-0248滋賀県大津市仰木の里東4丁目3-1
発行人   小嵜 善通
編集長   小嵜 善通
デザイン  塩谷 啓悟 http://shiotanikeigo.com/
編集    玉置 慎輔
校正    岸田 幸治(サンライズ出版株式会社)
印刷    宮川印刷株式会社
発売元   サンライズ出版株式会社  〒522-0004滋賀県彦根市鳥居本町655-1 TEL 0749-22-0627
発行部数  1,200部
定価    1,800円+税
ISBN  ISBN978-4-88325-782-9 C1402
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2023-01-20T09:13:09+09:002023年1月18日|お知らせ, 研究プロジェクト, 関連出版物案内|

永江弘之研究員「Fabriano in Acquarello 2023」選抜報告

世界最大の水彩画の祭典である「Fabriano in Acquarello 2023」が
2023年4月から約7月半ばまでの期間、
イタリアのボローニャとファブリアーノで開催されます。

その日本チームの選抜メンバーに本研究所の研究員で、
「淡海の夢写生会」講師や「淡海の夢風景展」の企画をされている
永江弘之教授(イラストレーション領域)が選出されました。

https://japanfabriano.wixsite.com/japan-fabriano/general-8-1

参加 アーティストの選抜は、
各国のリーダーとそのチーム(Japan Fabriano)によって行われ、
各国それぞれの水彩画をより良く代表できる作家と作品が選ばれます。

世界各国から選出された2000点以上の作品がイタリアに集まり、
4月22日~7月はファブリアーノ市、4月23/24/25日はボローニャ市にて作品が展示されます。

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「日本チーム40名の一員として、イタリアで作品を発表します。」

この度、このような大変貴重な機会を頂き、心から感謝しております。
そしてFabriano in Acquarelloの理念と方向性に沿った
ファブリアーノJapanの取り組みが大変素晴らしく、共感いたします。
日本チームの作品はイタリアの後、日本でも展示される予定ですので、
よろしくお願いいたします。 

永江弘之

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2023-02-25T00:50:37+09:002022年12月25日|お知らせ, 研究員の活動|

第18回参与会議 報告

令和4年7月5日(火)10時から第18回附属近江学研究所参与会議を開催しました。
参与会議は、県内の経済、文化、宗教、芸術など第一線でご活躍される参与の方々と、
成安造形大学の理事長、学長をはじめとする関係者にご出席いただき、
近江学研究所の活動に対してのご意見をいただくという重要な会議です。

新型コロナウイルス感染症への対応により、対面での会議は3年ぶりの開催となりました。
会議では、研究所の昨年度後期から今年度前期の事業報告と研究活動についてスライドで紹介し、参与の方々並びに学内関係者からご意見をいただきました。

参与の皆様から、コロナ禍の中、オンデマンド講座や近江学フォーラム現地研修など、感染症拡大防止対策を講じながら実施している取り組みについて評価をいただきました。

また、次年度からの研究テーマ「結・コミュニティ」の研究報告については、
参与の皆様から、「自治会への加入率の低下」「新住民のコミュニティのあり方」や「コロナ禍でのコミュニティの変容」などについて、様々な事例をご紹介いただき、「地域・人々のつながりや地域のアイデンティティがコロナ禍によりさらに希薄になってきている中、新しいコミュニティの形を示していってほしい」など貴重なご意見をいただきました。
「結・コミュニティ」という言葉は、時代、地域などで様々な捉え方があり、大変難しいテーマであるとのご意見もいただき、近江学研究所では次年度からの研究スタートに向けてさらに議論を進めていきたいと思います。

2022-07-22T11:46:51+09:002022年7月7日|お知らせ, 近江学研究所の活動の進捗|

第25回近江学研究会 開催報告

近江学研究所では、年2回、
客員研究員のみなさまをお招きして研究会を開催しています。
先日、今年度第1回目の近江学研究会を開催しました。

2018年度から取組んできた
「近江の里・川・祭研究プロジェクト」が昨年の「祭」をもって終了し、
本来であれば、今年度から「結・コミュニティ」をテーマにした
研究プロジェクトが始まる予定でしたが、
新型コロナウイルス感染症による大きな「禍」に見舞われたことから、
今年度は「近江の禍(わざわい)」をテーマに研究活動を進めています。

今回の議題は、延期となっていた3ヵ年研究プロジェクト「結・コミュニティ」について。
「結・コミュニティ」という言葉が
時代、個人、場所、場面、人生の中の時間軸等において、
様々な捉え方ができることから、
その定義について地域での事例紹介を交えながら、
様々な意見が交わされました。

現代のネット社会では、メタバースなどの新しい技術も登場し、
おびただしい数のコミュニティが生まれています。
そこで、改めて人と人がつながるきっかけは一体何なのかを考えていくと、
「利害」「情報」「防災」「共感」、、、など
様々なキーワードが見えてきました。

研究所では、今後も議論を進め、次年度から3年をかけて
「結・コミュニティ」という大きなテーマを検証していきます。

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第25回近江学研究会

日時:令和4年6月20日(月) 9:30-11:00

出席者(50音順):
[客員研究員] 大原歩氏、髙梨純次氏、對馬佳菜子氏、山本晃子氏
[顧 問] 木村至宏氏
[所 長] 小嵜善通
[副所長] 加藤賢治
[研究員] 石川亮、永江弘之、真下武久
[オブザーバー] 田口真太郎

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2022-06-24T16:19:49+09:002022年6月24日|研究プロジェクト, 研究員の活動|

成安造形大学附属近江学研究所「紀要」 第11号を公開しました

研究所の研究員や客員研究員の論考をまとめた「成安造形大学附属近江学研究所 紀要」 第11号をウェブサイトで公開しました。
今号は、客員研究員の髙梨純次氏、和田光生氏、大原歩氏、研究員の永江弘之教授、加藤賢治教授、石川亮准教授が執筆されています。
紀要のPDFデータは下記より自由にダウンロードしていただけますので、ぜひご覧ください。

2022-04-01T09:15:41+09:002022年3月30日|お知らせ, 研究プロジェクト, 関連出版物案内|

文化誌「近江学」第13号(特集 祭 よりどころ )発刊いたしました

文化誌「近江学」第13号

このたび、近江学研究所では、初年度から発刊して参りました文化誌『近江学』の第13号(特集 祭 よりどころ)を出版いたしました。昨年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で発刊延期を余儀なくされたため、今回の発刊は約2年ぶりとなります。

文化誌「近江学」第13号
<概要>
特集テーマは「祭 よりどころ」。絢爛豪華な山車が街中にくり出す滋賀県内各地の曳山祭、山中で人知れず催される山の神祭、中世芸能の「風流(ふりゅう)」を伝える雨乞い返礼踊りや六斎念仏など、長引くコロナ禍でその継承が危惧される「祭」の過去と現在をめぐる論考を収録。

<目次>

祭—よりどころ 場所の中心とゆるい境界 木村至宏、石川亮、金再奎、加藤賢治
「コンチキチン」見に行こか —愛すべき大津祭─ 今森光彦
近江の祭・神仏習合のかたち、比叡山と日吉大社 嵯峨井建
宮座と当屋制 市川秀之
山の神祭 和田光生
オコナイは何のために 湖南市三雲の妙感寺地区の「大講内」から考える 中島誠一
近江の曳山祭 橋本章
風流の祭り 大塚活美
銅鐸祭儀をめぐって 進藤武
現代と祭り 過去と未来をつなぐ玉手箱 矢田直樹
長浜の漆文化の継承 曳山修復を手がける塗師 渡邊嘉久氏 真下武久
近江の美術 園城寺 勧学院客殿障壁画 小嵜善通

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発行    成安造形大学附属近江学研究所  〒520-0248滋賀県大津市仰木の里東4丁目3-1
発行人   小嵜 善通
編集長   小嵜 善通
デザイン  塩谷 啓悟 http://shiotanikeigo.com/
編集    玉置 慎輔
校正    岸田 幸治(サンライズ出版株式会社)
印刷    宮川印刷株式会社
発売元   サンライズ出版株式会社  〒522-0004滋賀県彦根市鳥居本町655-1 TEL 0749-22-0627
発行部数  1,200部
定価    1,800円+税
ISBN  978-4-88325-747-8 C1402
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2023-01-20T09:15:53+09:002022年3月16日|お知らせ, 研究プロジェクト, 関連出版物案内|
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