おうみブログ2022-03-29T17:42:04+09:00

おうみブログ

近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。

近江学フォーラム会員限定講座「大津絵と疱瘡絵―近江発、禍への絵画的対抗手段―」講座映像視聴会 報告

令和5年度 第2回 近江学フォーラム会員限定講座
「大津絵と疱瘡絵―近江発、禍への絵画的対抗手段―」

【講座映像視聴会】
日時:7月19日(水)14:30~16:00
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:※映像出演
横谷賢一郎 氏|大津市歴史博物館学芸員

令和5(2023)年度第2回目の近江学フォーラム会員限定講座を
オンデマンド配信と講座映像視聴会で開催しました。
オンデマンド配信は7月4日から7月18日まで。
配信終了の翌日に講座映像視聴会を大学内で実施しました。

今年度の近江学フォーラムのテーマは「禍 転じて」。
2回目の会員限定講座では、大津絵と疱瘡絵について
大津市歴史博物館の学芸員である横谷賢一郎氏にご講演いただきました。

新型コロナウイルスの脅威にさらされて3年。
過去に猛威をふるった疫病のひとつに「天然痘」があります。
強い感染力と高い致死率、そして深刻な後遺症は、
当時の人々にとって脅威でしかありませんでした。
疫病に対抗するために、人々は、神の仕業として、
その神を歓待してもてなし、なだめ、そして送り出しました。
講座では、大津絵や疱瘡絵という絵画が生まれた背景や、
絵に込められた意味や願いについてもお話いただきました。

受講者のみなさんからは、
・大津絵は身近にありながら、歴史的背景など、全く知らなかったので、大変興味深かったです。
・昔から定期的に疫病が流行り、今も昔も、かからないように、かかっても軽症で済むようにと願うのは変わらないのだなと思いました。
・もともと、民画であり土産物である大津絵に関心があったので、とても興味深くお聞きしました。絵画に厄除けの役割があるというのが面白いです。
・かつて疫病として、庶民ならず高貴な人にも恐れられた天然痘を沈静化するため、巨大な腕力を持った源為朝や坂田金時などが大津絵に描かれたことを知り興味深いものがあった。
などといったご感想をいただきました。

[講師プロフィール]

横谷賢一郎 氏(大津市歴史博物館学芸員)
1968年、東京都生まれ。1993年、同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒業。同年より大津市歴史博物館学芸員。専門は、日本近世絵画史。特に18世紀の京派の絵師たちを専門とするほか、大津市歴史博物館では、大津絵をはじめ、近江八景の肉筆・浮世絵作品、ご当地絵師のほか、書跡・陶磁器・漆工芸など江戸時代の美術工芸全般を担当している。2019年には、パリ日本文化会館で「OTSU-E Paintures Populaire du Japon(日本の庶民絵画大津絵)」を担当した。

2023年7月25日|Categories: 近江学フォーラム|

第19回参与会議 報告

令和5年7月10日(月)10時から第19回附属近江学研究所参与会議を開催しました。
参与会議は、県内の経済、文化、宗教、芸術など第一線でご活躍される参与の方々と、
成安造形大学の理事長、学長をはじめとする関係者にご出席いただき、
近江学研究所の活動に対してのご意見をいただくという重要な会議です。

会議では、研究所の昨年度後期から今年度前期の事業報告と研究活動についてスライドで紹介し、参与の方々並びに学内関係者からご意見をいただきました。

参与の皆様からは、本研究所がオンデマンド講座をはじめ、今のインターネット社会に対応しながら、公開講座のPR動画制作やSNSアカウントの強化など、研究活動の発信力を高めていることのほか、三井寺の古文書などタイムリーなことを取り上げている点についても高い評価をいただきました。
一方、紀要の電子化などについて、研究成果をインターネットを通じて広げていくのは素晴らしいことであるが、「本という形のあるものを残していくことも重要」ではないか、といったご意見がありました。

また、今年度からスタートした「近江のコミュニティ『惣・座・講』研究プロジェクト」に関する研究報告については、
参与の皆様から、「惣・座・講」は一般的に分かりにくいテーマであること、単体ではなく絡み合うテーマであることなどから、どのようにまとめて伝えていくのか大変興味深い。
滋賀県は、地形的に各地域にさまざまな特色があり、それは、惣で村を守ってきた歴史であるともいえる。比叡山や三井寺の存在もあることから、宗教的な側面も重要である。中世からの惣・座・講を現代とどのようにつないでいくのか期待したい。とのご意見をいただきました。

また、次回の文化誌『近江学』が第15号となることから、15年の研究が多岐にわたるため、20号の発刊や近江学研究所開設20年を迎える際には、これまでの研究をもう一度くくり直すと、素晴らしいものが残るのではないか、といったご意見もありました。

今回の参与会議でいただいた様々なご意見を今後の事業運営や研究活動に活かしながら、開設20周年に向けて、ますます近江学研究を深めていきたいと思います。

2023年7月20日|Categories: 研究プロジェクト, 研究員の活動|

第27回近江学研究会 報告

6月19日(月)9:30から、客員研究員のみなさまをお招きして、今年度第1回目の近江学研究会を開催しました。
本研究所では今年度から令和7年度にかけて、新たに「近江のコミュニティ『惣・座・講』研究プロジェクト」をスタートしています。今回の研究会では、この3ヵ年の研究プロジェクトの概要と今年度の研究テーマ「惣」、そして次年度の研究テーマとなる「座」について、近江学研究所副所長の加藤賢治研究員から説明があり、その後、意見交換を行いました。

今年度から客員研究員にご就任いただいた大津市歴史博物館副館長の木津勝氏からは、「惣・座・講」それぞれの「差」を一般の方がイメージできるように見せていけるかがポイントではないか。
たとえば、大津祭は規模が大きく、地域外の人や会社等の経済的な力によって維持されてきている。「講」という視点で、大津祭を学びたい、大津祭に関わりたいと外部から入ってこられる方々の動向に着目するのも面白いのではないか。大津祭には「惣・座・講」すべての要素が含まれているといったお話がありました。

對馬佳菜子客員研究員からは、「惣・座・講」のつながりや精神的なところが見えてくると、近江人の姿が見えてくるのではないか。私は「惣・座・講」それぞれに受け入れていただいており(地縁のつながり[惣]・事業者のつながり[座]・サバイブユートピアのような年齢性別関係のないつながり[講])、それぞれ、人間として生活する中で重要なポイントだと感じている。

大原歩客員研究員からは、比良山麓の場合は毎年の大雨で水に対する防御が必要となるため、コミュニティの中で水を管理していくということが今もなお続いている。守山地区は旧住民が少ない地域のため、自主防災を中心において、新旧の住民が一緒にコミュニティを作り上げ、まちづくりを組み立てようという試みが行われている。この防災を中心とした新しいコミュニティの形から、現代の「惣」の視点を見つけられたらと考えている。
「座」では、滋賀県にある素材をどのように流通させてきたかを押さえておくと近江の流通・経済が見えてくるのではないか。とのお話がありました。

また木村至宏顧問からは、「惣・座・講」は通底しているので分けるのが難しい。
それぞれに中心軸がないと、同じようなことを単に言葉として分けられているように思われるのではないか。
(「惣」で堅田に焦点を当てることについて)「惣=堅田」といってもよいが、堅田を含め「惣」に地域コミュニティの基本的な考え方をすべて投入してしまうと、「座」「講」を表現していくことが非常に難しいと思うが、期待をしている。

オブザーバーの田口真太郎助教からは、地域おこし協力隊として近江八幡で活動している際に、地域外の者や若者、女性が伝統的な集落に入っていくことの難しさや魅力を肌で体験した。様々な地域で地域おこし協力隊の活動が行われているが、その効果や成功例は出てきていないように思う。沖島には、移住者や研究者などが入っていて複合的にコミュニティが支えられている。限界集落の現代をインタビューしたいと考えている。というお話がありました。

また、真下武久研究員からは研究会当日の朝に撮影した写真をもとに、近江のコミュニティを「景」をテーマに検証する試みについて報告がありました。滋賀県の自然そのものは普遍的に昔から存在している。琵琶湖の対岸から集落・コミュニティを撮影し、そこに住んでいる人は知らない風景がちょっと離れたところから見ると、自然や環境的に面白い、ということを写真を通してそこのコミュニティに属している人が知ることによって、自分の住んでいる場所が他の人にとって興味のある場所であり、今後もここに来たいと思う人が現れる余地がある、ということが伝わるといいのではないかと考えている。というお話がありました。

近江学研究所では、今年度の研究テーマ「惣」についての研究活動を進めながら、今回の研究会で出た様々な意見を次年度の「座」、そしてその次の「講」の研究につなげていこうと考えています。

===================

第27回近江学研究会

日時:令和5年6月19日(月) 9:30-11:00

出席者(50音順):
[客員研究員] 大原歩氏、木津勝氏、對馬佳菜子氏
[顧 問] 木村至宏氏
[所 長] 小嵜善通
[副所長] 加藤賢治
[研究員] 石川亮、永江弘之、真下武久
[オブザーバー] 田口真太郎

===================

2023年6月27日|Categories: 研究プロジェクト, 研究員の活動, 近江学研究所の活動の進捗|

近江学フォーラム会員限定講座「近江における厄除 元三大師信仰」講座映像視聴会 報告

令和5年度 第1回 近江学フォーラム会員限定講座
「近江における厄除 元三大師信仰」

【講座映像視聴会】
日時:6月21日(水)14:30~16:00
場所:成安造形大学 I棟 プレゼンルーム
講師:※映像出演
福井智英 氏|長浜市長浜城歴史博物館館長
加藤賢治|本学教授・近江学研究所副所長

令和5(2023)年度第1回目の近江学フォーラム会員限定講座を
オンデマンド配信と講座映像視聴会で開催しました。
オンデマンド配信は6月6日から6月20日まで。
配信終了の翌日に講座映像視聴会を大学内で実施しました。

今年度の近江学フォーラムのテーマは「禍 転じて」。
会員限定講座では、文化誌『近江学』第14号のご執筆者数名に順番にご講演いただきます。

近年、新型コロナウイルス感染症がもたらした「禍」の渦中に、
アマビエとともに近江の厄除として広く知られる
元三大師の「角大師」の護符が注目を集めました。
今回の講座では、近江の元三大師信仰の研究をライフワークとする2人の研究者が、
元三大師信仰が人々の暮らしにどのように根付いてきたか、
また、元三大師の存在がいかに人々の心のよりどころとなっているか、
などについて、それぞれの視点からお話いただきました。

受講者のみなさんからは、
・元三大師の詳細と元三大師信仰が現在まで受け継がれている実情がよく分かりました。
・仰木地区の人が元三大師を大切に守っていることを初めて知り感動しました。
・元三大師の深い信仰の一端を知ることができ面白かった。
・身近な信仰が風俗になっている(特に漬物など)ことに興味がつきなかった。
などといったご感想をいただきました。

[講師プロフィール]

福井智英 氏(長浜市長浜城歴史博物館館長)
1972年、奈良県桜井市生まれ。天理大学文学部卒業。虎姫町教育委員会を経て、現在、長浜市長浜城歴史博物館館長(学芸員)。おもに湖北・長浜の歴史や文化を調査研究。長浜出身の天台僧・元三大師の研究をライフワークとする。また、長浜城歴史博物館友の会と協働で教育普及事業に携わる。執筆・共著に「勝光寺の『元三大師御鬮鈔』について」(研究紀要 第1号 東浅井郡教育委員会連絡協議会社会教育部会文化財保護連絡協議会)、「御籤と元三大師」考(研究紀要 第2号 東浅井郡教育委員会連絡協議会社会教育部会文化財保護連絡協議会)、『疫神病除の護符に描かれた元三大師良源』(サンライズ出版)などがある。

2023年6月23日|Categories: 近江学フォーラム|

【公開講座】近江―受け継ぐかたち「町衆文化の心意気 大津祭の今とこれから」報告

近江―受け継ぐかたち
「町衆文化の心意気 大津祭の今とこれから」

【公開講座】
日時:6月10日(土)11:00~12:30
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:⼤津祭「湯⽴⼭保存会」から
湯⽴⼭保存会 会⻑ 千⽯敏男 氏
湯⽴⼭保存会 会計 天孫神社⽒⼦会 会⻑ 岩崎博 氏
湯⽴⼭保存会 監査 元NPO法⼈⼤津祭曳⼭連盟理事⻑ ⽩井勝好 氏
コーディネーター:加藤賢治(本学教授・近江学研究所副所⻑)

本研究所では、2020年度から新型コロナウイルス感染症への対応のため、
講座の実施方法を対面開催からオンデマンド講座へ変更して開講してきました。
今回の公開講座は、本学に講師をお招きして開催する4年ぶりの対面講座となりました。

今回の講座では、大津祭「湯立山保存会」のみなさまにお越しいただき、
大津祭の概要から、大津祭が今日に至るまでどのように祭を引き継ぎ発展してきたか。
また、コロナ禍中の祭の様子やこれからの展望についてお話いただきました。

湯立山保存会会長 千石敏男 氏

湯立山保存会 会計 岩崎博 氏

湯立山保存会 監査 白井勝好 氏

コーディネーター 加藤賢治

講座の中では、NPO法人大津祭曳山連盟の公式キャラクターとして
2007年に本学学生がデザインした「ちま吉」を活用し、
学生たちが大津祭の広報活動を企画・デザイン・制作するプロジェクト授業を
担当しているイラストレーション領域の田中真一郎教授に
「ちま吉」プロジェクトにかける思いをお話しいただきました。

ちま吉プロジェクト担当 イラストレーション領域 田中真一郎 教授

また、講座の最後には本研究所の木村至宏顧問からも本講座に対する感想とともに
大津祭の稀少性や継承の重要性等についてのお話がありました。

近江学研究所顧問 木村至宏 氏

受講者のみなさまからは、
・裏方のご苦労をNPO法人化で乗り切っている知恵はすごいと思いました。
・たくさんの映像を使って大津祭をご紹介いただき、大津祭にかける方たちの想いがすごく伝わってきました。歴史ある大津祭への知識を少し深めることができました。
・お囃子を聞きながら、実際に10年も前にくじ取りをされた方のお話が新鮮で楽しい時間でした。
・多くの方のご尽力にてお祭りが現存していることがすごいことだと思う。
・滋賀県の文化、歴史を支える市民の方の心の豊かさに感動を覚える。
といったたくさんのご感想をいただきました。

[講師プロフィール]

湯立山保存会
「湯立山」には、13基の曳山の中でも、創始が古いという伝承があります。その伝統を今に受け継ぎ、後世につなぐために結成された保存会。お町内の人々をどのように巻き込み、氏神である天孫神社とその氏子としてのつながりなど、現代社会に伝統的な祭りをどう活かすかを常に検討されています。

2023年6月16日|Categories: 公開講座|

「淡海の夢2023 坂本・石垣と里坊の町写生会」を開催しました

「淡海の夢2023 坂本・石垣と里坊の町写生会」
日時:5月27日(土)9:30~17:00
場所:大津市坂本周辺
講師:永江 弘之(本学イラストレーション領域教授・本研究所研究員)、待井 健一(本学非常勤講師)

5月27日(土)、大津市坂本にて、公開講座「淡海の夢2023 坂本・石垣と里坊の町写生会」を開催しました。「淡海の夢」は、年2回の写生会と公募風景展を通して、近江の素晴らしさを体感し、近江の固有の価値を再発見する講座です。

一般の方24名、学生15名が参加された今回の写生会は、午前中曇りの予報でしたが、朝からよく晴れて日中は暑いくらいの写生日和となりました。

開催地の大津市坂本は、比叡山延暦寺や日吉大社の門前町として古くから栄えた情緒豊かな町。比叡山で修行をつんだ僧の隠居所「里坊(さとぼう)」が点在していたり、古くから延暦寺の堂塔の石組みなどを行っていた石工集団「穴太衆」による石垣「穴太衆積み(あのうしゅうづみ)」が見られ、独特の町並みが魅力的な町です。

 

写生会では、はじめに、講師の永江弘之研究員と待井健一氏から写生を行う際のアドバイスや注意事項について説明があった後、一旦解散して、自由に坂本の町を歩きながら参加者のみなさんそれぞれが描きたい風景を見つけて写生をスタート。

 

 

 

講師は、写生中のみなさんを巡回して個別に風景写生のコツについてアドバイスを行いました。

 

15:30からは、坂本コミュニティセンターにて作品鑑賞会を開催。一般の方も学生も入り混じって、お互いの作品を見ながら感想や質問が交わされ、ご自身の作品について講師に講評をお願いされている方もいらっしゃいました。一般の方から学生に対して使っている画材について質問されている場面もありました。

 

講座終了後、受講者のみなさんからは、
「あちこち素敵な風景ばかりで描きたいところがいっぱいでした。」
「先生の助言はハッと目が覚める思いで、新しい視点を与えてくださり、大変勉強になります。」
「先生から直に指導いただけたことが大変うれしく刺激になりました。」
「絵を描くのは30年ぶりくらいだと思いますが、とても楽しかったです。」
など、たくさんのご感想をいただきました。

次回の写生会は、10月14日(土)に近江八幡市で開催します。
初心者の方も気軽にご参加いただけますので、ご興味のある方はぜひ下記よりお申込みください。
ご参加をお待ちしています。

「淡海の夢2023 近江八幡・八幡堀と城下町写生会」お申込みフォーム
https://www.seian.ac.jp/public/41214

2023年6月6日|Categories: 公開講座|
Go to Top