近江学研究所の活動の進捗 | 研究員の活動

第28回近江学研究会 報告

近江学研究所では、年2回、
客員研究員のみなさまをお招きして研究会を開催しています。
先日、今年度第2回目の近江学研究会を開催しました。

今回の研究会では、はじめに2023年度に客員研究員へご就任いただいた大津市歴史博物館副館長の木津勝氏に「大津市歴史博物館写真資料の整理と活用」と題して、ご自身の研究活動や今後の課題についてお話いただきました。

また、研究会後半では、2024年度の研究テーマ「座」、近江における生業(なりわい)のコミュニティについて意見交換を行いました。近江にどのような「座」のかたちがあるのか、髙梨客員研究員からは近江猿楽など芸能のコミュニティ、山本晃子客員研究員からは湖西北部にある酒造業や森林業、農業などのコミュニティ、對馬佳菜子客員研究員からは長浜の伝統工芸である楽器糸製造業のコミュニティが「座」の対象となるのではないかとのご提案がありました。

客員研究員のみなさまからの様々なご意見を受けて、次年度の研究テーマ「座」の研究対象について今後も議論を深めていきたいと思います。

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第28回近江学研究会

日時:令和5年12月18日(月) 9:30-11:00

出席者(50音順):
[客員研究員] 大原歩氏、木津勝氏、髙梨純次氏、對馬佳菜子氏、山本晃子氏
[所 長] 小嵜善通
[副所長] 加藤賢治
[研究員] 石川亮、永江弘之、真下武久
[オブザーバー] 田口真太郎

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2024-02-13T17:38:08+09:002023年12月22日|研究プロジェクト, 研究員の活動|

第19回参与会議 報告

令和5年7月10日(月)10時から第19回附属近江学研究所参与会議を開催しました。
参与会議は、県内の経済、文化、宗教、芸術など第一線でご活躍される参与の方々と、
成安造形大学の理事長、学長をはじめとする関係者にご出席いただき、
近江学研究所の活動に対してのご意見をいただくという重要な会議です。

会議では、研究所の昨年度後期から今年度前期の事業報告と研究活動についてスライドで紹介し、参与の方々並びに学内関係者からご意見をいただきました。

参与の皆様からは、本研究所がオンデマンド講座をはじめ、今のインターネット社会に対応しながら、公開講座のPR動画制作やSNSアカウントの強化など、研究活動の発信力を高めていることのほか、三井寺の古文書などタイムリーなことを取り上げている点についても高い評価をいただきました。
一方、紀要の電子化などについて、研究成果をインターネットを通じて広げていくのは素晴らしいことであるが、「本という形のあるものを残していくことも重要」ではないか、といったご意見がありました。

また、今年度からスタートした「近江のコミュニティ『惣・座・講』研究プロジェクト」に関する研究報告については、
参与の皆様から、「惣・座・講」は一般的に分かりにくいテーマであること、単体ではなく絡み合うテーマであることなどから、どのようにまとめて伝えていくのか大変興味深い。
滋賀県は、地形的に各地域にさまざまな特色があり、それは、惣で村を守ってきた歴史であるともいえる。比叡山や三井寺の存在もあることから、宗教的な側面も重要である。中世からの惣・座・講を現代とどのようにつないでいくのか期待したい。とのご意見をいただきました。

また、次回の文化誌『近江学』が第15号となることから、15年の研究が多岐にわたるため、20号の発刊や近江学研究所開設20年を迎える際には、これまでの研究をもう一度くくり直すと、素晴らしいものが残るのではないか、といったご意見もありました。

今回の参与会議でいただいた様々なご意見を今後の事業運営や研究活動に活かしながら、開設20周年に向けて、ますます近江学研究を深めていきたいと思います。

2023-07-25T16:18:51+09:002023年7月20日|研究プロジェクト, 研究員の活動|

第27回近江学研究会 報告

6月19日(月)9:30から、客員研究員のみなさまをお招きして、今年度第1回目の近江学研究会を開催しました。
本研究所では今年度から令和7年度にかけて、新たに「近江のコミュニティ『惣・座・講』研究プロジェクト」をスタートしています。今回の研究会では、この3ヵ年の研究プロジェクトの概要と今年度の研究テーマ「惣」、そして次年度の研究テーマとなる「座」について、近江学研究所副所長の加藤賢治研究員から説明があり、その後、意見交換を行いました。

今年度から客員研究員にご就任いただいた大津市歴史博物館副館長の木津勝氏からは、「惣・座・講」それぞれの「差」を一般の方がイメージできるように見せていけるかがポイントではないか。
たとえば、大津祭は規模が大きく、地域外の人や会社等の経済的な力によって維持されてきている。「講」という視点で、大津祭を学びたい、大津祭に関わりたいと外部から入ってこられる方々の動向に着目するのも面白いのではないか。大津祭には「惣・座・講」すべての要素が含まれているといったお話がありました。

對馬佳菜子客員研究員からは、「惣・座・講」のつながりや精神的なところが見えてくると、近江人の姿が見えてくるのではないか。私は「惣・座・講」それぞれに受け入れていただいており(地縁のつながり[惣]・事業者のつながり[座]・サバイブユートピアのような年齢性別関係のないつながり[講])、それぞれ、人間として生活する中で重要なポイントだと感じている。

大原歩客員研究員からは、比良山麓の場合は毎年の大雨で水に対する防御が必要となるため、コミュニティの中で水を管理していくということが今もなお続いている。守山地区は旧住民が少ない地域のため、自主防災を中心において、新旧の住民が一緒にコミュニティを作り上げ、まちづくりを組み立てようという試みが行われている。この防災を中心とした新しいコミュニティの形から、現代の「惣」の視点を見つけられたらと考えている。
「座」では、滋賀県にある素材をどのように流通させてきたかを押さえておくと近江の流通・経済が見えてくるのではないか。とのお話がありました。

また木村至宏顧問からは、「惣・座・講」は通底しているので分けるのが難しい。
それぞれに中心軸がないと、同じようなことを単に言葉として分けられているように思われるのではないか。
(「惣」で堅田に焦点を当てることについて)「惣=堅田」といってもよいが、堅田を含め「惣」に地域コミュニティの基本的な考え方をすべて投入してしまうと、「座」「講」を表現していくことが非常に難しいと思うが、期待をしている。

オブザーバーの田口真太郎助教からは、地域おこし協力隊として近江八幡で活動している際に、地域外の者や若者、女性が伝統的な集落に入っていくことの難しさや魅力を肌で体験した。様々な地域で地域おこし協力隊の活動が行われているが、その効果や成功例は出てきていないように思う。沖島には、移住者や研究者などが入っていて複合的にコミュニティが支えられている。限界集落の現代をインタビューしたいと考えている。というお話がありました。

また、真下武久研究員からは研究会当日の朝に撮影した写真をもとに、近江のコミュニティを「景」をテーマに検証する試みについて報告がありました。滋賀県の自然そのものは普遍的に昔から存在している。琵琶湖の対岸から集落・コミュニティを撮影し、そこに住んでいる人は知らない風景がちょっと離れたところから見ると、自然や環境的に面白い、ということを写真を通してそこのコミュニティに属している人が知ることによって、自分の住んでいる場所が他の人にとって興味のある場所であり、今後もここに来たいと思う人が現れる余地がある、ということが伝わるといいのではないかと考えている。というお話がありました。

近江学研究所では、今年度の研究テーマ「惣」についての研究活動を進めながら、今回の研究会で出た様々な意見を次年度の「座」、そしてその次の「講」の研究につなげていこうと考えています。

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第27回近江学研究会

日時:令和5年6月19日(月) 9:30-11:00

出席者(50音順):
[客員研究員] 大原歩氏、木津勝氏、對馬佳菜子氏
[顧 問] 木村至宏氏
[所 長] 小嵜善通
[副所長] 加藤賢治
[研究員] 石川亮、永江弘之、真下武久
[オブザーバー] 田口真太郎

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びわ湖放送「琵琶湖まんだら」に出演しました

近江学研究所の副所長である加藤賢治副学長(地域実践領域教授)が、この春スタートしたびわ湖放送のテレビ番組「琵琶湖まんだら」の初回放送(4月15日)に出演しました。ぜひ動画をご覧ください。

「琵琶湖まんだら」
テレビ番組(びわ湖放送) 放送日:毎月第3土曜日18:15~18:30
ラジオ番組(エフエム滋賀) 放送日:毎週木曜日13:30~13:55

びわ湖放送とエフエム滋賀が共同制作する「琵琶湖まんだら」は、世界に誇る自然環境とその周辺に広がる人々の暮らしや文化の魅力と大切さをテレビとラジオで紹介する番組です。近江学研究所では、番組の制作協力を行っています。

2023-04-25T10:07:26+09:002023年4月17日|研究員の活動|

永江弘之研究員「Fabriano in Acquarello 2023」選抜報告

世界最大の水彩画の祭典である「Fabriano in Acquarello 2023」が
2023年4月から約7月半ばまでの期間、
イタリアのボローニャとファブリアーノで開催されます。

その日本チームの選抜メンバーに本研究所の研究員で、
「淡海の夢写生会」講師や「淡海の夢風景展」の企画をされている
永江弘之教授(イラストレーション領域)が選出されました。

https://japanfabriano.wixsite.com/japan-fabriano/general-8-1

参加 アーティストの選抜は、
各国のリーダーとそのチーム(Japan Fabriano)によって行われ、
各国それぞれの水彩画をより良く代表できる作家と作品が選ばれます。

世界各国から選出された2000点以上の作品がイタリアに集まり、
4月22日~7月はファブリアーノ市、4月23/24/25日はボローニャ市にて作品が展示されます。

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「日本チーム40名の一員として、イタリアで作品を発表します。」

この度、このような大変貴重な機会を頂き、心から感謝しております。
そしてFabriano in Acquarelloの理念と方向性に沿った
ファブリアーノJapanの取り組みが大変素晴らしく、共感いたします。
日本チームの作品はイタリアの後、日本でも展示される予定ですので、
よろしくお願いいたします。 

永江弘之

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2023-02-25T00:50:37+09:002022年12月25日|お知らせ, 研究員の活動|

第25回近江学研究会 開催報告

近江学研究所では、年2回、
客員研究員のみなさまをお招きして研究会を開催しています。
先日、今年度第1回目の近江学研究会を開催しました。

2018年度から取組んできた
「近江の里・川・祭研究プロジェクト」が昨年の「祭」をもって終了し、
本来であれば、今年度から「結・コミュニティ」をテーマにした
研究プロジェクトが始まる予定でしたが、
新型コロナウイルス感染症による大きな「禍」に見舞われたことから、
今年度は「近江の禍(わざわい)」をテーマに研究活動を進めています。

今回の議題は、延期となっていた3ヵ年研究プロジェクト「結・コミュニティ」について。
「結・コミュニティ」という言葉が
時代、個人、場所、場面、人生の中の時間軸等において、
様々な捉え方ができることから、
その定義について地域での事例紹介を交えながら、
様々な意見が交わされました。

現代のネット社会では、メタバースなどの新しい技術も登場し、
おびただしい数のコミュニティが生まれています。
そこで、改めて人と人がつながるきっかけは一体何なのかを考えていくと、
「利害」「情報」「防災」「共感」、、、など
様々なキーワードが見えてきました。

研究所では、今後も議論を進め、次年度から3年をかけて
「結・コミュニティ」という大きなテーマを検証していきます。

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第25回近江学研究会

日時:令和4年6月20日(月) 9:30-11:00

出席者(50音順):
[客員研究員] 大原歩氏、髙梨純次氏、對馬佳菜子氏、山本晃子氏
[顧 問] 木村至宏氏
[所 長] 小嵜善通
[副所長] 加藤賢治
[研究員] 石川亮、永江弘之、真下武久
[オブザーバー] 田口真太郎

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2022-06-24T16:19:49+09:002022年6月24日|研究プロジェクト, 研究員の活動|

「世界文化遺産比叡山延暦寺への誘い 三社寺鼎談」/加藤賢治研究員

附属近江学研究所の副所長、加藤賢治研究員が「世界文化遺産比叡山延暦寺への誘い 三社寺鼎談」のコーディネートを行いました。

この鼎談は、比叡山から生まれた三つの延暦寺、日吉大社、西教寺、三社寺の代表の皆様が、歴史と、その長いかかわりあいを紐解きつつ、今日にも町や人々の間に生きている信仰と文化を紹介する内容となっています。また、コロナ禍中の世界において、信仰や文化ができること、また今後取り組んでいきたいと感じていることなどを率直に語られています。

今回の鼎談は映像が配信され、下記のリンクからどなたでもご視聴できます。ぜひご覧ください。

第1部 世界遺産比叡山延暦寺と麓の歴史文化

第2部 今に伝えられる神と仏のまち坂本

第3部 比叡山と麓のこれからコロナ後の社会へ向けて

出演:
天台宗総本山 比叡山延暦寺 代表責任役員 水尾 寂芳 執行
山王総本宮 日吉大社 馬渕 直樹 宮司
天台真盛宗総本山 西教寺 前阪 良憲 宗務総長
比叡山坂本活性化事業 実行委員会 谷 正男 会長

コーディネーター:
成安造形大学 准教授 宗教民俗学者 加藤賢治

主催:
比叡山坂本活性化事業実行委員会(事務局:坂本観光協会)
滋賀県大津市坂本6-1-13

2022-03-15T18:09:07+09:002021年3月20日|お知らせ, イベント, 研究員の活動|

加藤副所長 KBS京都『比叡の光』に出演します!

撮影は、成安造形大学の加藤研究室にて行われました。

撮影は、成安造形大学の加藤研究室にて行われました。


本研究所の加藤賢治副所長が、KBS京都の長寿番組「比叡の光」に出演されます。
内容は、成安造形大学における近江学研究の意義と研究者としての加藤研究員の活動の紹介です。
「近江学とは何か?」を語ります。
ぜひともご高覧ください。

「比叡の光」 放送予定
●KBS京都テレビ
2/23(日)・3/1(日)8:45-9:00

その他、以下でも放映します。
KBS京都 日曜日 8:45~9:00
びわ湖放送 日曜日 7:45~8:00
TOKYO MX 土曜日 8:45~9:00
スカイ・A (CS放送) 火曜日 8:45~9:00
新潟放送 日曜日 5:30~5:45
ハワイ(KIKU) 日曜日 12:30~12:45
また、WEBサイトでは、KBS京都でオンエアした翌週火曜日 午前10:00からインターネットで番組を配信します。
(配信期限は公開から一ヵ月間となります)
比叡の光 ウェブサイト>>>こちらから

近江学フォーラム会員限定講座第5回「里坊―律院の庭園と西教寺本堂大壁画」

近江学フォーラム会員限定講座第5回 「里坊―律院の庭園と西教寺本堂大壁画」
日時:12月14日(土)10:20~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:加藤 賢治(本学准教授・本研究所副所長)
ゲスト:木村 至宏(本学名誉教授・本研究所顧問)

加藤賢治副所長

加藤賢治副所長


木村至宏顧問

木村至宏顧問


 文化誌「近江学」11号、テーマ「里のいとなみ」の中で、発表した講座タイトルと同名の論考について、筆者である加藤副所長が解説しました。
 「門前町坂本には名勝庭園を有する里坊が点在するが、その作庭の背景には、比叡山で厳しい修行をしてきた僧侶のある種の「悟り」に近い思想が流れているのではないか。」「また、西教寺の本堂にある日本画家三輪牒勢が描いた大壁画は、江戸時代初期の禅僧沢庵禅師が西教寺を訪れた時に、詠んだ詩がもとになっている。」と解説した後、ともに自然の中に人間が溶け込み、草木も動物も安らかに暮らす浄土を表しているのではないかと里坊と壁画の共通点をまとめました。そして、最後の20分西教寺の話のつながりということで、木村至宏顧問が、西教寺を菩提寺とする明智光秀の人柄を西教寺に残る文書や、木像、梵鐘などの資料を紹介しながら解説されました。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公の舞台をしっかり学ぶことができ満足でしたという感想が多く聞かれました。

近江のかたちを明日につなぐ「近江―受け継ぐかたち―信楽勅旨、茶器をつくる―」報告

連続講座 近江のかたちを明日につなぐ
「近江―受け継ぐかたち―信楽勅旨、茶器をつくる―」
日時:11月30日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:大西 左朗 氏(陶芸家)
対談:石川 亮 (本学准教授・本研究所研究員)

大西左朗氏

大西左朗氏

石川亮研究員

石川亮研究員

古くから焼き物の産地として知られる甲賀市信楽町勅旨の陶芸家大西左朗氏の仕事に迫る講座を開催しました。 戦後まもなく小物づくりの復興を目指し、先人の仕事を学びながら機能性に優れた独自の作風を確立してきた左朗氏の実父である大西忠左氏のものづくりの精神性について、また、大西左朗氏がその伝統を継承しながらも新素材の研究開発に取り組まれ、近年では朝宮の茶農家と連携するなど、煎茶を美味しく飲むための茶器の追求している制作活動について、信楽勅旨の歴史に裏付けられた「陶璃窯」の普遍的なものづくりについて語っていただきました。講座の中では、左朗さん自らが、作陶した2種類の茶器でお茶を煎れていただき、前列の方に飲み比べをしていただきました。

お茶を煎れる大西左朗氏

お茶を煎れる大西左朗氏

また、当日は関連企画として「近江のかたちを明日につなぐ展vol.13 信楽勅旨、茶器をつくる」を開催しました。忠左氏と左朗氏の作品の数々、陶璃窯の名前の由来となった掛け軸、作品のインスピレーションを受ける室町時代の陶器の破片など、作品の世界観が伝わる展示となりました。

「近江のかたちを明日につなぐ展」展示

「近江のかたちを明日につなぐ展」展示

「近江のかたちを明日につなぐ展」

「近江のかたちを明日につなぐ展」

[講師プロフィール]
大西 左朗 氏(陶芸家)
1964年 滋賀県信楽町生まれ。’88年 東洋大学社会学部応用社会学科卒業。 ’93年 京都府立陶工高等技術専門校図案科修了。滋賀県立陶芸の森 創作研修館嘱託を経て、‘96年 自宅工房で独立。‘07年 第17回秀明文化基金賞受
賞。’13年 信楽焼伝統工芸士(総合部門)認定。個展を中心に作品を発表。
対談:石川 亮 (本学准教授・本研究所研究員)

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