おうみブログ
近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。
公開講座
近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。
公開講座
講座名 『近江~風景のかたち―琵琶湖と丸子船―』
日 時 平成23年6月25日(土) 10:40~12:00
場 所 成安造形大学 聚英ホール
講 師 津田直氏(写真家)
対 談 木村至宏
江戸時代から戦前まで琵琶湖の湖上交通の主役であった「丸子船」。現在その勇姿を湖上に見ることはできません。丸子船が消えてしまった琵琶湖の風景を写し、展覧会を通して「漕(こぎ)」という一冊の本を出版したという写真家津田直(つだなお)氏を講師に迎えました。
はじめの50分間は津田先生の著書「漕」の解説をスライド中心に行っていただき、斬新な写真表現の世界と近江の風景について語っていただきました。
津田先生ご本人がかつては船でしか行くことのできないことから陸の孤島と呼ばれた湖北菅浦集落に入り、現代にはなくなってしまった丸子船の幻影を追いつつ、須賀神社の参道の階段を裸足で登った経験から、今の風景を目で見るのではなくその場の歴史や人の営みを足裏で感じ取るという感覚をそこで学んだと話されました。
また、丸子船をつくる技術を持つ造船所を訪ねたとき、その船大工の棟梁が木造船を造る材料となる木にまず祈りを捧げてから切り出すということを聞き、船自体が森であると感じたなど、丸子船自体が単なる湖上交通に使われる道具ではなく、それを使用する人々の一部として同化しているように思ったと、独自の自然観が語られました。
その後、附属近江学研究所木村至宏所長との対談があり、木村所長は「見えないものを撮る」という津田先生の写真家としての活動の方向性に共感され、過去の暮らしの知恵を今後の生活に活かせるよう様々な取り組みを続ける近江学研究所の指針と重なって見えたと感想を述べられました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
講座名 『近江~大地のかたち―穴太衆積み―』
日 時 平成23年6月11日(土) 10:40~12:00
場 所 成安造形大学 聚英ホール
講 師 粟田純司氏(穴太衆第十四代目石匠)
対 談 大岩剛一
6月11日(土)連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」第1弾の2回目が、「大地のかたち~穴太積み」と題して開催されました。今回は一般から230名の応募があり、聚英ホールが満席となりました。
当日の講座は近江学研究所大岩剛一研究員(本学住環境デザインコース教授)のコーディネイトで「穴太衆」第14代目石匠の粟田純司さんをお迎えし、講演と対談というかたちで行ないました。
はじめの40分間は粟田さんによる講演で、湖西地域にある古墳群にある横穴式石室見られる石積みにその原点があり、信長の安土城築城により全国の城にその技術が広がったという「穴太衆積み」の起源や、野面積みといわれる「穴太衆積み」独特の技法もスライドによって解説されました。
対談では、大岩研究員がその技術を裏で支える精神的な部分について粟田さんに質問され、粟田さんは師匠である先代に「石の声を聞け」厳しく指導されながらその境地を知ることができたと語られました。石を生き物のように身体で感じ、数式では計りきれないファジーな感覚によって何百年と崩れることのない石積みをつくるという「穴太衆積み」の技術は非常に素晴らしいと大岩研究員がまとめられました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
6月4日(土)・5日(日)の2日間、附属近江学研究所主催の写生会が前回の湖族の郷堅田に続き第2回目として仰木の棚田を舞台に行なわれました。
主催者で担当の近江学研究所研究員でイラストレーション領域の永江弘之准教授が2日間引率し、ご指導いただきました。
両日とも多少風はありましたが、写生日和に恵まれ、一般参加者、学生とも存分に写生会を楽しまれました。
秋には第3回目として比叡山麓坂本の町で写生会を開催します。また、11月末から12月にかけてこの淡海の夢2011の公募展覧会を本学【キャンパスが美術館】のメインギャラリーで開催する予定です。写生会にご参加いただきたくさんのご応募を期待しています。
附属近江学研究所研究員 加藤賢治
講座名 『近江~大地のかたち―信楽焼―』
日 時 平成23年5月28日(土) 10:40~12:00
場 所 成安造形大学 聚英ホール
講 師 奥田博土氏(元信楽陶芸作家協会会長)
対 談 辻喜代治
5月28日(土)、近江学研究所では今年度初めての試みとして一つのテーマで講座を結ぶ連続公開講座を開講することになりました。
「近江のかたちを明日につなぐ」というテーマで、近江学研究所研究員がコーディネイターとして造形家を招聘し、第1弾「大地のかたち」、第2弾「風景のかたち」、第3弾「魂のかたち」と3つのステージに別け、それぞれ2回ずつ連続講座を開講します。
この日はその第1弾の1回目、「大地のかたち-信楽焼-」と題し、辻喜代治研究員がコーディネイト、現在国際的に活躍されている陶芸家奥田博土(おくだひろむ)氏を迎えて、現代陶芸の諸相について語っていただきました。
奥田氏は江戸期から代々続く信楽の献上茶壷をつくる窯元に生まれ、奥田三衛門家15代目として陶芸をはじめられました。1969年の大阪万博では、太陽の塔の裏面にあるタイル地の「黒い太陽の顔」を故岡本太郎氏とともに制作され、これを転機として陶彫の世界に入られました。以後、アメリカやヨーロッパを舞台に現代アート作品を次々に発表され、最近は信楽高校でのワークショップなどの開催など、後進の造形教育にも力を入れておられます。講座では、これらのスライドに加えて、自然環境にもう一度真摯な目を向けようというメッセージがこもった直近の作品なども含め、たくさんのスライドを紹介していただきました。
最後に辻喜代治研究員は、信楽から一歩も出ることなくここの土にこだわり、そしてその思想は常に未来を見ているという奥田氏はこの講座のテーマである「近江のかたちを明日へつなぐ」をいままさに実践されているとその制作活動を賞賛されました。
報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治
5月14日(土)・15日(日)の2日間、附属近江学研究所主催の写生会が湖族の郷堅田で行なわれました。
両日とも午前9時半にJR堅田駅に集合。堅田漁港を本部として写生会の説明が行なわれ、10時から写生が開始されました。公開講座としての一般の参加者が約30名、学生さんも約30名が参加、講師は近江学研究所研究員でイラストレーション領域准教授の永江弘之先生にご担当いただきました。
両日とも天候に恵まれ、3時半からの好評会にも多くの作品が出され盛りあがりました。
6月4日・5日は仰木・棚田の写生会です。多くのご参加お待ちしています。また、11月末から12月にかけてこの淡海の夢2011の公募展覧会を本学【キャンパスが美術館】のメインギャラリーで開催します。写生会にご参加いただきたくさんのご応募を期待しています。
近江学研究所研究所研究員 加藤賢治
講座名:「戦国近江の歴史的位置」
日 時:平成23年5月7日(土) 10:40~12:00
場 所:ピアザ淡海 ピアザホール
講 師:小和田哲男(歴史家・静岡大学名誉教授)
5月7日(土)13:30から、研究所設立3周年記念講演が行われました。近江学研究所主催の講演会としてははじめて大津市打出浜の「ピアザ淡海」のピアザホールで開催しました。
講師は歴史家で静岡大学名誉教授、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」の時代考証をされている小和田哲男先生にご担当いただきました。
この日、近江学フォーラムの会員さんも含めて300名以上が会場に来られました。
近江学研究所では常に近江の独自性について検証をしていますが、木村所長は「近江を歴史の視点で捉えると「金太郎あめ」である。歴史のどこを切っても近江が出てくる。」といつもお話しされますが、この日は小和田先生が戦国時代を切ってくださいました。話しは近江の守護六角氏と京極氏から始まり、織田信長、明智光秀、羽柴秀吉、石田三成、浅井三姉妹と続いていきます。姉川の合戦、小谷城陥落、賤ヶ岳の合戦、安土城築城などこの時代の重要な出来事はすべて近江が舞台となっています。
小和田先生はその内容を丁寧に解りやすく解説いただきました。その中で大河ドラマの時代考証についても触れられ、史実をいかに脚色するかという難しさを楽しく語っていただきました。
参加者の皆さんの多くは「大変勉強になりました」と満足そうでした。
報告:近江学研究所 研究員 加藤賢治
講座名 滋賀の文化の特性とこれから
日 時 平成23年4月23日(土)10:40〜12:00
場 所 成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師 石丸正運・木村至宏(対談)
進 行 辻喜代治
成安造形大学附属近江学研究所3周年記念講演「滋賀の文化の特性とこれから」を4月23日(土)、聚英ホールで開催しました。
今回は3周年記念の第1弾として、1980年代から滋賀県の文化振興をリードされてきた美術史家で近江学研究所参与の石丸正運先生と近江学研究所所長の木村至宏先生が対談されました。
当研究所研究員の辻喜代治先生の進行で対談が開始。滋賀県の文化の独自性とこれからのあり方について、各先生が意見を述べられました。
はじめは自己紹介を兼ねて石丸先生は滋賀県立近代美術館を、木村先生は大津市歴史博物館を設立された当時の滋賀の文化の諸相をお話しされました。
その後、人口増加率や住宅の増加、光ファイバーの普及率など滋賀県の日本一が辻先生から紹介され、近年、滋賀県が文化、経済的に成長する可能性を示唆されました。
続いて石丸先生が「近江八景」の「唐崎夜雨」を例に、滋賀県の風光明媚な自然環境が中世から現代にまで絵画の画題として描かれてきたと、滋賀の文化の特性を述べられ、木村先生は、湖・山・街道という3つの要素が滋賀県に豊かな歴史文化遺産を残したとその独自性を語られました。
最後に3名の先生方は、これからの文化振興のあり方として、成安造形大学の地域貢献を例に、大学生をはじめとする若年層の活躍や、それらを支援する文化振興団体である「文化・経済フォーラム滋賀」などの活発な活動が不可欠であり、そのような活動の積み重ねが滋賀県の文化の未来をつくるとまとめられました。
成安造形大学附属近江学研究所 研究員 加藤賢治
2011年度前期公開講座の受付を開始しました。近江学研究所主催の公開講座は以下の通りです。
附属近江学研究所設立3周年記念講演
「滋賀の文化の特性とこれから」
講師:石丸正運氏(美術史家)×木村至宏(本学名誉教授・近江学研究所長)
進行:辻喜代治(本学教授・近江学研究所研究員)
日時:4月23日(土)10:40-12:00
「戦国近江の歴史的位置」
講師:小和田哲男氏(歴史家・静岡大学名誉教授)
日時:5月7日(土)13:30-15:30 ※会場はピアザ淡海 滋賀県立県民交流センター
連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」
第1弾「近江~大地のかたち」
「近江~大地のかたち‐信楽焼‐」
講師:奥田博士氏(元信楽陶芸作家協会会長)
対談者:辻 喜代治(本学教授・近江学研究所研究員)
日時:5月28日(土)10:40~12:00
「近江~大地のかたち‐穴太衆積み‐」
講師:粟田 純司氏(古式特技法「穴太衆」第十四代目石匠)
対談:大岩 剛一(本学教授・近江学研究所研究員)
日時:6月11日(土)10:40~12:00
第2弾「近江~風景のかたち」
「近江~風景のかたち-琵琶湖と丸子船-」
講師:津田 直氏(写真家)
対談:木村 至宏(本学名誉教授・近江学研究所所長)
日時:6月25日(土)10:40~12:00
「近江~風景のかたち‐心象絵図‐」
講師:上田 洋平氏(滋賀県立大学地域づくり調査研究センター研究員)
対談:永江 弘之(本学教授・近江学研究所研究員)
日時:7月9日(土)10:40~12:00
淡海の夢2011
「堅田・湖族の郷写生会」
日時:5月14日(土)、5月15日(日)9:30~17:30※雨天中止
講師:永江弘之(本学教授・近江学研究所研究員)
「仰木・棚田写生会」
日時:6月4日(土)、6月5日(日)9:30~17:30※雨天中止
講師:永江弘之(本学教授・近江学研究所研究員)
講座名 日本画家から見た近江の風景
日 時 平成22年11月20日(土)10:40〜12:00
場 所 成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師 大野俊明(成安造形大学教授)
江戸時代初期に成立した近江八景に代表される近江の風景を、これまで現代の日本画家がどのように表現してきたのか、数多くのスライドを用いての紹介から講座はスタートしました。池田遥邨・下保昭氏をはじめとする日本画家を取り上げられ、その作風の特徴や制作手法など、長年の知己でもある大野教授ならではの興味深いお話を聞くことができました。
続いては大野教授ご自身のこと。本学が湖西に開校されたことが近江を描くようになったきっかけとなったこと、また琵琶湖や三上山、比良山などをモチーフとする作品やスケッチをスライドを用いて紹介されました。写生を行なう場所探しの苦労や、時刻や季節によってその表情を変える風景のすばらしさなど、個々の作品制作の裏側にも触れていただきました。
現在も近江での取材は進行中とのことで、近い将来、琵琶湖十景というような形でまとめてみたいとおっしゃっておられます。果たして何処がどのように描かれるのか、今から大変楽しみです。
近江学研究所研究員 小嵜善通
講座名:琵琶湖観光の過去・現在・未来
日 時:平成22年10月2日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:中井保氏(株式会社 琵琶湖汽船 代表取締役社長)
前回に引き続き、少し前の歴史として、琵琶湖観光の今と昔が紹介されました。お話しいただいたのは琵琶湖汽船株式会社 代表取締役社長の中井保先生です。120年を超える歴史を誇る琵琶湖汽船株式会社の貴重な映像と写真を中心にその歴史が紹介されました。
始めは湖上交通として鉄道連絡船や運送業として活躍していた琵琶湖汽船は、明治27年(1894)から方向性を転換、湖上遊覧船を就航させ、大正3年(1914)には「竹生島めぐり」が開始、昭和5年(1930)にマキノスキー場開設に伴ってスキー船が就航するなど早くも琵琶湖観光時代に突入した。昭和57年(1982)には大型外輪船ミシガンが、平成2年(1990)には大型客船ビアンカが就航し、湖上に異空間を演出するという新しい観光のあり方が提案された。そして、平成21年(2009)にエコクルーズ船megumiが就航し、琵琶湖にとけ込み、琵琶湖をじっくりと眺めるという形式の琵琶湖観光が今まさに始まった・・・。中井先生は琵琶湖汽船の歴史を辿りながら琵琶湖観光を語られ、まとめとして滋賀県の観光のあり方を問う観光論にまで及びました。
最後に琵琶湖観光の発展のためには、生物多様性をはじめとして琵琶湖が持つ特有の観光資源の価値を再認識し、「琵琶湖ブランド」を確立して世界に発信すべきであると熱く語られました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治