講座名:「近江の寺と城」
日 時:平成23年9月24日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英ホール
講 師:下坂守氏(奈良大学 教授)

中世と呼ばれる鎌倉、室町時代は強大な中央権力が弱く、寺院や町衆など様々な新興勢力の台頭など非常に複雑で捉えにくい時代である。その中世を僧侶(寺)と武士(城)の対立を中心として奈良大学文学部教授下坂守先生に語っていただきました。
下坂先生は、中世は寺院の勢力が最も強く、大きく時代の流れに影響を与えたということを前提に、「仏法(仏教勢力)」と「王法(朝廷)」のバランスによってこの時代が成立していたと多くの文献を紹介しながらこの時代の特徴を述べられました。
やがて、新興の武士団勢力が台頭してくると、武装化した寺院と武士団の対立が激化し、寺院建築物も城塞化していった。交通の要衝にあたる近江は観音寺城に代表されるように寺院要塞がたくさんあったことで知られる。そしてその最終戦争として織田信長の比叡山延暦寺の焼き討ちが行われ、中世の時代が終焉を迎えた。
下坂先生はこのような視点で中世の時代を説明され、織田信長は延暦寺の焼き討ちは単に、武士に反旗を翻したから行ったのではなく、仏教勢力と朝廷の権力(仏法と王法)を根本から覆すために行ったと中世の時代の最後をまとめられました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治