おうみブログ

近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。

イベント

小嵜研究員執筆の書籍『祇園祭大船鉾復原の歩み』が発刊されました

発刊された冊子と、付録の大船鉾木部設計図

発刊された冊子と、付録の大船鉾木部設計図


本研究所の小嵜善通(おざきよしゆき)研究員(本学教授)が委員をつとめる大船鉾復原検討委員会から「祇園祭大船鉾復原の歩み―基本設計図完成報告書―」が発刊され、小嵜研究員は「絵画資料からみた大船鉾の形状と変遷」を執筆しました。
祇園祭の山鉾の一つ、『大船鉾』は、1864年の蛤御門の変により、その大半を消失したが、本年(平成26年)7月の祇園祭山鉾巡業で、150年ぶりにその復原した姿を現すことになりました。その復原に至る過程が『祇園祭大船鉾復原の歩み』としてまとめられました。
また、先日1月15日には、「大船(おおふね)鉾」の屋形部分が完成し、京都市下京区の市無形文化遺産展示室で関係者に公開されました。
3月末までJR京都駅前の京都市無形文化遺産展示室で公開中です。
ご興味のある方は、ぜひ足をお運びください。
===========
凱旋 祇園祭大船鉾復原の歩み―基本設計図完成報告書―
編集 大船鉾復原検討委員会
発行 公益財団法人 祇園祭山鉾連合会
発行日 平成25年3月31日
===========
大船鉾について(公益財団法人 四条町大船鉾保存会)の公式ホームページは>>>こちらから
 

『湖国と文化 146号 2014年冬号』にて近江学研究員の記事が掲載されました!


滋賀の様々な文化情報が盛りだくさんの公益財団法人滋賀県文化振興事業団が発行する季刊誌『湖国と文化』。
1月1日に冬号が販売されています。
特集は『瀬田唐橋と滋賀の橋』。
瀬田唐橋の考古学的な史料を元にした考察や、唐橋で始まった大綱引祭り、
また滋賀の琵琶湖大橋建設プロジェクトや、近江の石橋についてなど
多角的に情報が網羅されており、読み応えがあります。
また、表紙の写真は、近江学フォーラム会員でもある写真家の長井泰彦さんです。
近江学研究所からは、
木村所長と加藤研究員と石川研究員の記事が掲載されます。
木村所長の連載『近江人物伝(18)』では、天智天皇の子「大友皇子」を取り上げています。

また、加藤研究員の連載『おうみ おうみ 歩く(12)』では、
〝志賀の山越″を取り上げています。

また、石川研究員の連載『近江の水をめぐる(5)』では、「人物の水・伝説の水」として
織田信長や中江藤樹、蒲生氏郷、弘法大師などの人物とゆかりのある湧水をとりあげています。

ぜひ、興味のある方はご一読ください!
===========
詳細や購入については、滋賀県文化振興事業団のホームページより>>>こちらから
===========
『湖国と文化146号 2014年冬号』
特集 瀬田唐橋と滋賀の橋

表紙/琵琶湖大橋の黎明 撮影:長井 泰彦
特集 瀬田唐橋と滋賀の橋
瀬田橋を考える-架橋、移動、そして今- 松浦 俊和
日本有数の長大橋・琵琶湖大橋 禮場 侍郎 ※「禮」しめすへんに豊
人と人をつなぐ夢の大綱引 若山 義和
石橋の物語るもの 米田 実
無料開放された近江大橋  編集室
湖岸の橋探訪 植田 耕司(編集室)
新連載
天下人「信長」の実像(1)内面の変化を伝える「しるし」 髙木 叙子
連載
四季をめぐる健康食 冬編 小川久子・武田律子・齊田充子
元気な商店街その魅力(3)大津市の堅田と仰木 町田 雅子
いまどきの“元気なお寺”見聞(10)錦織寺(最終回) 辻村 琴美/写真 辻村 耕司
近江人物伝(18)大友皇子 木村 至宏
近江の水をめぐる(5)人物の水、伝説の水 石川 亮
歴史文書は語る(10)伊香相救社 大月 英雄
おうみおうみ歩く(12)志賀の山越を行く 加藤 賢治
心と体のツボ・冬 横田 佳子
など
===========

2014-01-07T11:45:24+09:002014年1月7日|おうみブログ, お知らせ, イベント, 研究員の活動|

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」〉近江~地域文化のかたち-「風と土の交藝」にみる地域活動-開催

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」〉近江~地域文化のかたち-「風と土の交藝」にみる地域活動
日時:2013年12月21日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師: 清水 安治 氏(滋賀県職員・一級建築士)
対談:辻 喜代治 (本学教授・本研究所研究員)
タイトル:「近江~地域文化のかたち-「風と土の交藝」にみる地域活動」

講師 清水安治氏

講師 清水安治氏


2011年から、高島市全域を使って開催されている「風と土の交藝」の陰の仕掛け人である清水安治氏に、
このプロジェクトの具体的な内容について紹介していただきました。
講演ではまず、4回目となる2013年のイベントをまとめたダイジェスト版ビデオによるプレゼンテーションで、全体が紹介されました。
近年各地域で開催されているアートイベントとの違いについて、「他のイベントとは違い工芸や地域の産業、古民家の再生、農業や漁業も含んだ、暮らしを意識した地域イベントである」ことを強調されました。
さらに開催期間もあえて寒い冬の11月から12月を選び、高島らしい季節を体験してもらうことも、特徴の一つになっています。
今年からは開催地域を二つにわけて、二週の週末3日間ずつ計6日間開催されました。
このプロジェクトのきっかけは、毎年春に開催されている地域の工芸家たちのオープンアトリエをヒントにして、地域間住民の交流と、外に向けて高島市の魅力をアピールする目的でスタートしました。
高島市も高齢化と過疎化が進み空き家も多く見られ、それらを活用することも大きな目的になっています。タイトルの“風”は来訪者や移住した作家、“土”は地域の作家や住民をさします。
お互いがその暮らしや作品を通じて交流し、多くの人に高島の魅力を感じてほしいと生み出された、滋賀スタイルのプロジェクトです。
今回は50か所の会場が設けられ、会期中それらの会場を巡った人は4500人以上になります。
講演会場には90人近くの聴取の人が集まりました。その中には他の地域のモノづくりの人も多く参加していて、最後の意見交換のところでは、これから出来れば連携をしていきたいと提案されていました。
すでに信楽を中心とする工芸家たちも会期中に視察を行っており、交流が始まろうとしています。
今後こうした取り組みが進み、この滋賀スタイルのプロジェクトが広がれば、県全体の活性化と、他府県にその魅力を強くアピールできると強く感じました。    
(辻喜代治)
講師プロフィール
清水 安治 氏(高島市職員・一級建築士)
1961 年滋賀県高島市生まれ。滋賀県庁職員として、滋賀県立大学「近江環人地域再生学座」の
開設や半世紀ぶりとなる高校の木造校舎新築を地元産木材で造ることに関わるなど、地域資源を
活かすことにこだわる活動を続けている。地元高島市では、地域の工芸作家の暮らしぶりと作品
を住み開きする「風と土の交藝」を立ち上げ、高島の魅力を発信する。一級建築士。
対談 辻 喜代治研究員

対談 辻 喜代治研究員



文化誌『近江学』第6号(特集 火の物語り)発刊しました

成安造形大学附属近江学研究所は、「芸術による社会への貢献」を教育の理念とする
成安造形大学の附属研究機関として2008年4月に発足し、
この3月で開所6周年を迎えることになります。
このたび、近江学研究所では、初年度から発刊して参りました
文化誌『近江学』第6号(特集 火の物語り)を下記の通り出版いたしました。

文化誌「近江学」6号表紙

文化誌「近江学」6号表紙

文化誌「近江学」第6号
特集    「火の物語り」

■内容紹介
近江の火にまつわる世界に着目し、「火の物語り」を特集。
比叡山の「不滅の法灯」に関する論考、国産の櫨にこだわった「和ろうそく」
職人へのインタビュー、国友鉄砲鍛冶からつづく花火職人の想いなど。
不滅の法灯、火祭り、かまどの火、常夜灯、和ろうそく、花火師など、
近江の火にまつわる世界を、様々な切り口で語ります。
■目次
● 「火と営みの文化」
木村 至宏 (近江学研究所 所長)
● 比叡山の「不滅の法灯」
武 覚超 (比叡山延暦寺執行)
● 《対談》「櫨の和ろうそくー命が宿る炎」
大西 明弘 (和ろうそく職人)×大岩 剛一 (近江学研究所客員研究員)
●「人を包み込む自然 琵琶湖」
今森 光彦 (写真家)
●「近江の火祭りー火の風流を楽しむ」
米田 実 (日本民俗学会評議員)
●「村における信仰の灯ー神主の献灯、講の常夜灯」
大塚 活美 (京都府立総合資料館主査)
●「花火 夏の風物詩湖国の花火を訪ねて」
加藤 賢治 (近江学研究所研究員)
●「火と食」
岩田 康子 (有限会社ブルーベリーフィールズ紀伊國屋代表取締役)
●「蒲生氏郷の光」
寿福 滋 (写真家)
●「安土城随想ー安土山より三上山を眺む」
小嵜 善通 (本学教授・近江学研究所研究員)
●《インタビュー》成安のファインアート「田辺由子ー思考と触覚の造形」
辻 喜代治 (本学教授・近江学研究所研究員)
●《近江の意匠Ⅴ》「麻の物語ーすべては近江の蚊帳生地との出会いから」
河原林 美知子 (近江学研究所客員研究員)
●「仏領ニューカレドニアの滋賀移民 犬上郡 多賀町 リリアンの墓参り 」
津田 睦美 (本学准教授・近江学研究所研究員)
●「仰木ふるさとカルター気持ちやいのちをカルタに映す」
永江 弘之 (本学准教授・近江学研究所研究員)
=======================
文化誌「近江学」第6号
1,800円+税
ISBN978-4-88325-495-8 C1402
AB 96ページ 並製
初版発行年月日:2014年1月10日
書店発売日:2013年12月20日
発行    成安造形大学附属近江学研究所
〒520-0248滋賀県大津市仰木の里東4丁目3-1
発行者   木村 至宏(近江学研究所所長)
編集    辻 喜代治(近江学研究所研究員)
写真    寿福 滋
デザイン  大向デザイン事務所
印刷    宮川印刷株式会社
発売元   サンライズ出版株式会社
〒522-0004滋賀県彦根市鳥居本町655-1
発効部数  1,600部
定価    1,800円+税
=======================
<購入方法>
◎12月中旬には、滋賀県下の主な書店にて販売いたします。
「サンライズ出版WEBサイト」から>>>こちらから
=======================

近江の火にまつわる文化の総論「火と営みの文化」 著:木村至宏 写真:寿福滋

近江の火にまつわる文化の総論「火と営みの文化」
著:木村至宏 写真:寿福滋

比叡山延暦寺執行が語る「不滅の法灯」の物語り 著:武覚超

比叡山延暦寺執行が語る「不滅の法灯」の物語り
著:武覚超

民俗学者米田実氏のよる、近江の火祭りを読み解き、地域に引き継がれる「風流」に関する論考

民俗学者米田実氏のよる、近江の火祭りを読み解き、地域に引き継がれる「風流」に関する論考

国産櫨を使った和ろうそく職人・大西明弘氏の手仕事を追うインタビュー 著:大岩剛一 写真:永江弘之

国産櫨を使った和ろうそく職人・大西明弘氏の手仕事を追うインタビュー 著:大岩剛一 写真:永江弘之

櫨の和ろうそくができるまでの取材をイラスト図解で表現 イラスト・編集:大原歩

櫨の和ろうそくができるまでの取材をイラスト図解で表現
イラスト・編集:大原歩

国友鉄砲鍛冶の歴史をくみ活躍する「花火師」へのインタビュー 著:加藤賢治

国友鉄砲鍛冶の歴史をくみ活躍する「花火師」へのインタビュー
著:加藤賢治

米田 実氏:近江学フォーラム会員限定講座 第5回

日時:2013年12月14日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:米田 実氏(日本民俗学会評議員)
タイトル:「民俗の力―近江の地域史と伝承―」

講師:米田実氏

講師:米田実氏


今年度のフォーラム会員限定講座の最終回は、日本民俗学会評議委員で甲賀市教育委員会事務局
歴史文化財課市史編さん室室長の米田実先生にご登壇いただきました。
 講演は「民俗の力 –近江の地域史と伝承−」と題し、甲賀市油日の油日神社や「奴振り」で
知られる油日祭りを例に挙げながら、急速に変わりつつある祭礼について語っていただきました。
 はじめに、祭礼のような無形の民俗文化財は、国宝や重要文化財のようないわゆる有形の
文化財と違って、伝承として受け継いできた人物がいなくなればその時点で無くなってしまう
非常にはかない文化財であるとしながら、歴史資料ともなる貴重で素晴らしいものであると紹介されました。
 それらの祭礼が、高度経済成長の時代から急速に形を変え、農村と都市の境が曖昧となってきている近年、
伝統の祭礼を何のためにやっているのかという問いかけに答えられず、重層的で複雑な村落の
素晴らしい儀礼が簡素化あるいは消滅する場合も多くなってきているとの現状も報告されました。
IMG_6814
 講義の終盤には、五年に一回行われるという油日祭りの「奴振り」を紹介する映像が流され、
その祭礼を見ることで近世の村組織の構造が理解できることや、それらを後世に伝えることで
村の人々の絆が深まって行く現状を理解することができました。
 民俗文化財を継承することは、第三者として村の外から見れば美しいものであるかもしれないが、
それらを受け継ぐために祭礼を行っている村の人々の苦労は計り知れない。その両面を知りながら、
現代の民俗文化財のあり方を常に考えなければならない。
今回の講座では民俗の持つ素晴らしき「力」と、その継承の難しさを改めて学ぶことができました。
報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治 
講師プロフィール
1959年大津市生れ。立命館大学経済学部卒、同文学部史学科中退。日本民俗学とくに祭礼文化史に関心を持ち、滋賀県内を中心に調査・研究を進め、各自治体史などに執筆する。現在甲賀市史編さん室勤務。日本民俗学会評議員
IMG_6817

「棚田・里山、湖辺の郷 淡海の夢2013風景展」 を開催します!


「淡海の夢風景展2013風景展」
琵琶湖を中心とした湖国の自然や風景、町並みは今、次世代に引き継ぎたい美しく
貴重な日本の原風景として広く注目されています。
本展は公募風景展です。
一般の方や学生の作品を通して、近江の素晴らしい景観と固有の価値を再発見していただけると幸いです。
ご高覧ください。
【公募展】  「棚田・里山、湖辺の郷 淡海の夢2013風景展」
【会 期】  12月7日(土)~12月19日(木)
       12:00~18:00 | 入場無料 | 日曜休館 |
【会 場】  成安造形大学 ギャラリーアートサイト
【企画・監修】永江弘之(成安造形大学准教授・近江学研究所研究員) 
【主 催】  成安造形大学附属近江学研究所
【協 賛】  株式会社クサカベ、ホルベイン工業株式会社

2013-12-06T19:56:16+09:002013年12月6日|おうみブログ, お知らせ, イベント|

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」 近江~屋根のかたち-檜皮葺-

日時:2013年11月30日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:河村 直良氏 (株式会社河村社寺工殿社 代表取締役)
対談:小嵜 善通(本学教授・本研究所研究員)
タイトル:「近江~屋根のかたち-檜皮葺-」

講師の河村直良さん

講師の河村直良さん


11月30日(土)、近江学フォーラム連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」の4回目を開催しました。今回は、檜皮葺や杮葺を専門とされておられる河村直良氏を講師としてお迎えしました。
社寺などの伝統建築のなかでも、檜皮葺や杮葺は格式の高い和風建築に用いられてきたものですが、河村氏はこれまで県内では三井寺や石山寺、日吉大社などの檜皮葺工事に携わってこられました。
小嵜善通 研究員(本学教授)

小嵜善通 研究員(本学教授)


専門的な話がはずむ対談

専門的な話がはずむ対談


当日は、檜皮の現物だけでなく、檜皮採取や檜皮葺に用いる道具なども持って来ていただき、その使用方法をうかがうとともに、原皮師(もとかわし)が行う檜皮採取の方法や時期、また、檜皮は10年ほどで再生し、2回目以降の檜皮が実際に使用されていること、さらに、檜皮葺の寿命や、檜皮を留める竹釘のことなど、普段知る機会の少ない貴重なお話をうかがうことができました。
持続可能な材料を用いる檜皮葺の工法が、現在よく耳にするようになったエコの考え方にも通じると指摘された点や、「視る」ということが様々な状況においていかに大切かということを熱く語られる河村氏がたいへん印象的でした。

IMG_4216
IMG_4235
IMG_4224
IMG_4316
IMG_4279
報告:小嵜 善通

寺島典人氏:近江学フォーラム会員限定講座第4回開講

日時:2013年11月16日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:寺島 典人氏 (大津市歴史博物館学芸員)
タイトル:「快慶とその弟子行快-仏師の癖と分業-」

寺島典人氏

寺島典人氏


11月16日(土)、近江学フォーラム会員限定講座の4回目が開催されました。
今回は、「快慶とその弟子行快」と題して、大津市歴史博物館学芸員の寺島典人先生にご登壇いただきました。
新進気鋭の研究者である寺島先生を紹介する木村所長

新進気鋭の研究者である寺島先生を紹介する木村所長


寺島先生は美術史の中でも彫刻史がご専門で、今回は、前段で仏像がいつ頃、誰によって制作されたかを
判定する手段をわかりやすく解説していただきながら、後半は、その中でも非常に多く作品が残る快慶と
その弟子行快について、作風やその判定に関する最新の研究成果を発表していただきました。
はじめに、仏像の基礎知識をプリントで学びました

はじめに、仏像の基礎知識をプリントで学びました


寺島先生は、仏像の顔や、全体のスタイル、衣紋は仏像の制作を依頼する人の意向が反映され、
仏師の個性や特徴が出にくいが、耳や手足、指など造形的にあまり重要でない部分に仏師の癖などが
見られると解説され、最新の研究として仏像の耳を対象にした調査の事例を示されました。
耳のかたちだけですべてが解るわけではないが、仏像を刳り貫いた様子や、その他の造形的な特徴、
そしてそこに書かれた墨書(銘文)もすべて含めて、誰がいつ頃何のために制作したかが
徐々に解ってくるという地道な研究の姿を知ることができました。

今回、寺島先生にお話しいただいた研究内容は、今年の12月に発刊が予定されている
小学館の『日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院』の中で発表されるということです。
その難しい研究内容を丁寧な資料とともに、解りやすく解説いただき、終了後のアンケートにも
「難しい仏像の研究を解りやすく紹介していただき、新しく知ることがたくさんありました。」と
満足度の高い回答がいくつもありました。
報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治 

仰木ふるさとカルタ原画展-在りし日の里山のくらし

成安造形大学附属近江学研究所では、開学20周年記念事業「2013秋の芸術月間SEIAN ARTS ATTENTION VOL.5「Sites-ふうこうのありか-」」にて、「仰木ふるさとカルタ原画展-在りし日の里山のくらし」を開催いたします。

琵琶湖をのぞむ豊かな里山に囲まれた千年以上の歴史を持つ農村集落「大津市仰木」。
本展は、その仰木にて、二年間にわたり聞き取り調査を行い制作した「仰木ふるさとカルタ」原画48枚と、関連する民具や野良着などを展示します。
【会期】※台風のため会期開始日が変更になりました
変更後…2013年10月29日(火)~12月1日(日)12:00-18:00 入場無料
11月10日(日)は作家・研究スタッフが在廊します。
※休館日11月11日(月)~15日(金)

【会場】
成安造形大学【キャンパスが美術館】G棟103(ライトギャラリー横)
仰木ふるさとカルタの取り組みについて詳しくはこちらから
成安造形大学【キャンパスが美術館】

第五回近江学フォーラム現地研修「琵琶湖から見る近江八景~沖島上陸」開催

近江学フォーラム現地研修 チラシ
10月5日(土)、第5回目となる近江学フォーラム現地研修が行なわれました。
今年のテーマは、「琵琶湖から見る近江八景」と「沖島散策」です。
近江八景については、近衛信尹(1565〜1614)が膳所城からの眺望を和歌で詠み、その風景を八つにまとめたものが「近江八景」であったと証明される資料が昨年9月に研究者によって明らかにされたことを受け、研究所では湖上からその風景を新たに再確認しようとこの企画が立ち上がりました。
そして、沖島については、今年の6月に沖島が湖に浮かぶ島としては初めて「離島」の認定を受けたということで、沖島の歴史や現在のくらしを学ぶため、八景巡りに加えて島を訪問する計画が追加されました。
この日の降水確率が70%と発表されていたにも関わらず、なんとか雨も降らず、時折日差しもさすという天候に恵まれ、76名の参加者を乗せて琵琶湖汽船のエコクルーズ船「megumi」は予定通り10時に大津港を出港しました。

近江八景を解説する木村至宏所長

近江八景を解説する木村至宏所長


加藤賢治研究員

加藤賢治研究員


現地研修の講師は恒例となっている木村所長。進行役はこれも恒例の加藤研究員が担当しました。
出航後すぐの冒頭、所長の挨拶がありましたが、そのまま近江八景の講義へ。木村所長の軽快で明快な解説を聞きながら、三井晩鐘、粟津晴嵐、石山秋月、瀬田夕照、矢橋帰帆、唐崎夜雨、堅田落雁、比良暮雪の八ヶ所の名勝を船上から眺めました。特に、八景の美しさを詠った近衛信尹の歌と松尾芭蕉の俳句が資料で紹介され、和歌や句を鑑賞しながら、湖岸の風景を楽しみました。
航路
船上から見えた「堅田・浮御堂」

船上から見えた「堅田・浮御堂」


琵琶湖大橋をくぐると、いよいよ沖島です。源氏の7名の武将がこの島に住んだことに始まる沖島の歴史が木村所長によって語られ、加藤研究員が沖島の見所をスライドで紹介しました。沖島小学校前の栗谷港に入港。記念撮影のあと、自由散策となりました。自動車が一台も無く、変わって三輪自転車がいたるところに駐車されているという島の道は狭く、平地に密集する民家の間を散策しながら、神社やお寺を巡り、漁村の雰囲気を堪能しました。
沖島西側のさんばし

沖島西側のさんばし


沖島 西福寺

沖島 西福寺


奥津島神社から (撮影20130827)

奥津島神社から (撮影20130827)


昼食は沖島で水揚げされた湖魚料理です。沖島漁業会館に再集合してお弁当をいただきました。お弁当を前に、漁業組合組合長の森田正行さんをお迎えし、湖魚の料理の説明と、沖島独特の漁業や島民の生活、後継者不足などの島の課題など貴重なお話を聞かせていただきました。
沖島 漁業会館

沖島 漁業会館


森田正行 沖島漁業協同組合長

森田正行 沖島漁業協同組合長


湖魚づくしの絶品のお手製お弁当

湖魚づくしの絶品のお手製お弁当


島を後にして、帰路につきましたが、途中、近江の厳島といわれる白鬚神社と湖上にそびえる鳥居を眺め、そこでも木村所長から近世の白鬚信仰の話など興味深い解説がありました。
船上からみる「白髭神社」

船上からみる「白髭神社」


この日は、雲が多い空模様でしたが、湖面の波は穏やかで、琵琶湖を囲む山々の稜線は霧にかすみながらも確認でき、まさに墨絵のような世界を湖上で体験することができました。四校(現金沢大学)漕艇部の悲劇を歌った「琵琶湖哀歌」やその旋律のもととなった三校(現京都大学)漕艇部に由来する「琵琶湖周航の歌」が船内に流れ、二度と味わうことができない琵琶湖旅情を体感しました。

Go to Top