おうみブログ
近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。
建築学生ワークショップ滋賀2011に参加しました!
全国の環境デザインや建築家を志す学生たちが琵琶湖竹生島に集結するという「建築学生ワークショップ2011」の現地見学会が7月2日竹生島で行われ、参加してきました。
この企画は地域滞在型(合宿)で行われるワークショップで、現地に数日滞在して、斬新でありながらその空間にとけ込んだ建築デザインによる構造物を制作するというものです。9月6日(火)から12日(月)の6泊7日、竹生島を舞台に制作される予定になっています。
7月2日はその現地見学会が行われ、本学の空間デザイン領域の学生さん2人を含む約40名が参加されました。
主催者であるAAF(建築学生ワークショップ実行委員会)から近江学研究所に依頼があり、琵琶湖汽船のエコクルーズ船megumiの船上にて竹生島の弁才天信仰と琵琶湖の呼称の由来に付いて解説してきました。
参加した学生さんたちのほとんどが琵琶湖のクルージングははじめて。
全国から集まった学生さんたちが竹生島を舞台に大学の垣根を越えて取り組むこの企画は、滋賀県にとっても、学生さんたちにとっても、主催者や協力者の地元の方々にとっても非常に意義のあるものと感じました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
学芸員課程一泊現地研修が行われました!
7月2日(土)、3日(日)美術館・博物館の学芸員を目指す学芸員課程3年生約30名対象の一泊研修が行われました。恒例となったこの研修はこれで8年目となります。県内に散らばる幅広い時代の文化財を「本物を見る」というコンセプトで見学するという非常に有意義な研修です。
三井寺の非公開の建築物や襖絵、彦根城博物館の近世日本美術、長浜のガラス工芸、長浜曳山博物館の曳山展示、国宝の湖北十一面観音など琵琶湖を一周するかたちで巡りました。
引率には学芸員課程担当の辻喜代治先生、小嵜善通先生(ともに近江学研究所研究員)と担当職員があたり、近江学研究所の木村至宏所長と同研究員の私がゲスト解説者としてお手伝いしました。
天候にも恵まれ、2日間ハードなスケジュールでしたが、文化財資料集を片手に各年代の様々な形態の文化財をじっくり観察し、熱心にメモを撮る学生さんの姿が印象的でした。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
近江学フォーラム会員限定講座「中世、仏像と人々の時代」開講しました。
講座名:「中世、仏像と人々の時代―銘文から仏像を取り巻く社会を探る―」
日 時:平成23年7月2日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英ホール
講 師:高梨純次氏(滋賀県立近代美術館 学芸課長
平安時代後半(十一世紀)から鎌倉時代を中心として、仏像に記された銘文や胎内納入品の記録などから、仏像を取り巻く社会や信仰する人々の思いなどを考察しようと、日本彫刻史がご専門で滋賀県立近代美術館の高梨純次先生に語っていただきました。
仏像に刻まれた銘文を読むといつ誰がどこで何のためにこの仏像を制作したのかという様子が分かり、生産性の高い地域である近江の仏像にはしっかりとした銘文が残る仏像が多い。また、近江の中世の仏像には一つの仏像に多くの人名を見ることができる。と中世近江の仏像の概略を語られることから始まりました。
その上で、延久六年(一〇七四)称念寺の木造薬師如来立像、長承二年(一一三三)善明寺の木造阿弥陀如来坐像、嘉応二年(一一七〇)福寿寺の木造千手観音立像など一一世紀から一二世紀の仏像に多くの人名が見られるが、おそらく仏像を中心として地域社会の血縁が結ばれ、信仰とともにその地域が一つとなっていた証として考えられると述べられました。
今回の講座で、現代社会においても小さなコミュニティーの存在が重要視されていますが、中世の村落では仏像を中心として固く結束した理想のコミュニティーが存在していたことを知りました。
報告:加藤賢治(附属近江学研究所研究員)
連続公開講座「近江~風景のかたちー琵琶湖と丸子船ー」開講しました
講座名 『近江~風景のかたち―琵琶湖と丸子船―』
日 時 平成23年6月25日(土) 10:40~12:00
場 所 成安造形大学 聚英ホール
講 師 津田直氏(写真家)
対 談 木村至宏
江戸時代から戦前まで琵琶湖の湖上交通の主役であった「丸子船」。現在その勇姿を湖上に見ることはできません。丸子船が消えてしまった琵琶湖の風景を写し、展覧会を通して「漕(こぎ)」という一冊の本を出版したという写真家津田直(つだなお)氏を講師に迎えました。
はじめの50分間は津田先生の著書「漕」の解説をスライド中心に行っていただき、斬新な写真表現の世界と近江の風景について語っていただきました。
津田先生ご本人がかつては船でしか行くことのできないことから陸の孤島と呼ばれた湖北菅浦集落に入り、現代にはなくなってしまった丸子船の幻影を追いつつ、須賀神社の参道の階段を裸足で登った経験から、今の風景を目で見るのではなくその場の歴史や人の営みを足裏で感じ取るという感覚をそこで学んだと話されました。
また、丸子船をつくる技術を持つ造船所を訪ねたとき、その船大工の棟梁が木造船を造る材料となる木にまず祈りを捧げてから切り出すということを聞き、船自体が森であると感じたなど、丸子船自体が単なる湖上交通に使われる道具ではなく、それを使用する人々の一部として同化しているように思ったと、独自の自然観が語られました。
その後、附属近江学研究所木村至宏所長との対談があり、木村所長は「見えないものを撮る」という津田先生の写真家としての活動の方向性に共感され、過去の暮らしの知恵を今後の生活に活かせるよう様々な取り組みを続ける近江学研究所の指針と重なって見えたと感想を述べられました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
近江の催し:2011年7月
5月31日(火)~7月10日(日)
金谷生誕250年記念ミニ企画展( 第91回ミニ企画展)
横井金谷-奇僧が描いた文人画の世界-
大津市歴史博物館
7月12日(火)~9月4日(日)
第92回ミニ企画展 大津・戦争・市民
大津市歴史博物館
7月23日(土)~8月28日(日)
大津市埋蔵文化財センター開設15周年記念企画展(第55回企画展)
地中からの贈りもの-遺跡が語る大津-
大津市歴史博物館
3月26日(土)~7月7日(木)
平山郁夫展 日本の美を描く
佐川美術館【企画展】
7月16日(土)~8月21日(日)
アルプスの画家 セガンティーニ -光と山-
佐川美術館【企画展】
3月26日(土)~7月7日(木)
平山郁夫 シルクロードを行く
佐川美術館【平山郁夫館】
7月16日(土)~10月30日(日)
平山郁夫 文明の十字路シルクロードを辿る
佐川美術館【平山郁夫館】
3月26日(土)~9月4日(日)
白寿記念 佐藤忠良展〈前期展示〉
佐川美術館【佐藤忠良館】
3月26日(土)~8月21日(日)
INSPIRATION 樂吉左衛門フランスでの作陶/茶碗
佐川美術館【樂吉左衛門館】
3月26日(土)~7月7日(木)
平山郁夫展 日本の美を描く
佐川美術館【企画展】
7月16日(土)~9月25日(日)
第42回企画展 滋賀県文化財保護協会調査成果展「大国近江の壮麗な国府」
滋賀県立安土城考古博物館
7月9日(土)-9月11日(日)
五味太郎作品展[絵本の時間]
滋賀県立近代美術館
6月28日(火)-9月4日(日)
夏休み子ども美術館《アートはヒミツのかくれんぼ》
滋賀県立近代美術館
6月30日(木)~12月11日(日)
特別企画「グ・ル・メなやきものたち-陶芸を楽しむ」展
滋賀県立陶芸の森
4月29日(金・祝)~9月4日(日)
水族企画展示 「レッドリストの魚たち」
滋賀県立琵琶湖博物館
7月16日(土)~11月23日(水・祝)
第19回企画展示 『こまった!カワウ-生きものとのつきあい方-』
滋賀県立琵琶湖博物館
6月22日(水)~7月18日(月・祝)
【特別陳列】平成22年度新収蔵館品展
長浜城歴史博物館【2階展示室】
7月23日(土)~8月31日(水)
【特別展】NHK大河ドラマ 江~姫たちの戦国~
長浜城歴史博物館【2階展示室】【3階展示室】
6月4日(土)~7月18日(月・祝)
第5回テーマ展 謎の秀吉の息子たち
長浜城歴史博物館【3階展示室】
7月9日(土)~8月14日(日)
夏季特別展「アメリカ古代文明」
MIHO MUSEUM
6月24日(金)~7月26日(火)
テーマ展「藍の彩り-染付の世界-」
彦根城博物館
7月28日(木)、29日(金)
川裾まつり
唐崎神社(高島市マキノ町)
7月28日(木)、29日(金)
みたらし祭
唐崎神社(大津市唐崎)
近江学フォーラム会員限定講座がスタートしました!
講座名:「近江と渡来人」
日 時:平成23年6月18日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英ホール
講 師:井上満郎 氏(京都市歴史資料館 館長)
近江学フォーラム会員限定講座がスタートしました!
近江学研究所が主催します会員制の「近江学フォーラム」は、おかげさまで昨年よりまして多くの方々に参画いただいております。そのフォーラムの中心的な事業としまして会員限定講座を開講しています。
6月18日(土)はその第1回目の講座が開講されました。全6回ある限定講座のトップは「近江と渡来人」と題して、日本古代史がご専門で京都市歴史資料館館長の井上満郎先生にご登壇いただきました。
講座のはじめに、下にアジア大陸があり上に日本列島が横たわっているという大変珍しい位置関係の地図が紹介され、「このように見ると、日本列島は島国として独立しているというよりもアジア大陸の一部に見えませんか」と問いかけられました。日本海側沿岸部で「貸泉」という中国の貨幣が多数発掘されていることからも縄文、弥生という古代から大陸文化は日本に入ってきており、大陸と日本の間には大きな隔たりがなかったと考えられると持論を語られました。また、今に伝わる文献から見ると古代の国際ルートは朝鮮半島から北陸へ入り、近江を経て山城(京)、大和へとつながっていたことがわかり、近江国はその通り道にあたり、文化が往来し、多くの渡来人が定住、都にもなったと近江の地理的な重要性を強調されました。
最後に、古代の日本の人口に触れられ、当時の渡来人の人口の割合から考えると、現在の日本人もその多くは大陸民族の子孫であるといえると話され、海を隔て遠くにあると考えていた大陸文化を大変身近に感じることができました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治