おうみブログ
近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。
今森光彦氏監修【近江・里山フィールドワーク】始動!
プロジェクト演習A3「近江・里山フィールドワーク」として、
監修今森光彦先生、特別講師佐藤悦子先生の授業がはじまりました。
これまで行われてきた今森光彦氏の授業「雑木林再生プロジェクト」と、「仰木森林学入門/仰木森林保全ボランティア」の
2つの授業が合わさった形で、1年を通した授業として行われることになりました。
過日、5月17日(木)にガイダンス&レクチャーが行われました。
まず、本研究所の加藤研究員より、
日本の山の管理の背景と仰木の取り組みについて解説。
日本の多くの集落では、山を持っており、
燃料や建材などを得る重要な場所として、みんなで手入れし管理してきた。
明治以降、その山を国に預けるか村の財産にするの決める際、
仰木では、自分たちで管理することに決めた。
今回の活動の主体である上仰木辻ケ下森林生産組合でも、同じ状態ではあるが、
管理区の住民は全戸から参加し、山の管理作業する「山行(やまいき)」を年3回行っており、
また、近年からは森づくり活動として滋賀県の森づくり事業とタイアップし、
一般公開型の森の保全活動を行うなど、森の大切さ管理の大切さを地域にも外にも発信している。
今年は、その森づくり活動として、
3つの作業「踏査」「間伐・枝打ち作業」「間伐材木工体験」に参加しながら、
地域で森を管理することを学んで行くことになる。

山行に同行し、間伐材を切り出す作業を行う【間伐伐採】

間伐材が利用できるように枝をパイプソーで落とす【枝打ち】

間伐材を利用し、家具を製作。地元の大工さんが指導していただく【木工体験】

昨年度、間伐材で制作した家具類
続いて、佐藤悦子特別講師のお話。
佐藤先生は、中高校の理科の教員を経て、デジタルカメラを通して生き物に触れるきっかけをつくる「デジカメ探検隊」という
企画を長年されてきました。近年は、今森先生の企画する里山塾などのスタッフとしてご活躍されています。

佐藤先生は、
日本には、原生林ではなく、あるのは二次林と呼ばれる「人の手の入った林」がほとんどで、
縄文時代から植林してきたという遺跡が残っているほど、手を入れながら利用し育んできた。
日本の里山には、季節ごとや、人が介入する作業ごとに環境に変化が生まれ、生物層に多様性ができる。
能勢に通っていて、1週間ごとには生物層が変わっていると感じている、と。
また、雑木林に多く生息する「クヌギ」「コナラ」などの落葉樹の利用方法について、
ビデオをみながらレクチャーいただきました。

【映像詩 里山】 企画協力・出演:今森光彦(NHKエンタープライズ 2009年)
クヌギの萌芽更新について、
そこに生きる生き物とのつながりについて、
興味深いお話が続きました。
今年は、
高島市マキノ町にある今森先生所有の雑木林「萌木の里」や、マキノスキー場の雑木林再生プロジェクトに
参加し、雑木林の今の姿に触れます。

また、今森先生が長くフィールドにされてきた仰木地域の里山を歩き、文化的な観点から里山を見直す企画
「今森光彦の里山みらいじゅく」にスタッフとして参加し、学んでいきます。
次回は、7月8日(日)仰木森づくり①踏査です。
1年間を通して、近江の森に生きる人たちに触れ、学んでいきます。
淡海の夢2012「堅田・湖族の郷」開催しました。
5月26日・27日に淡海の夢2012「堅田・湖族の郷」を開催しました。
両日あわせて約40名の一般の参加者に、本学イラストレーション領域の学生さんたちも参加し賑やかな写生会となりました。
天候も両日とも晴れで暑い日差しのなかでしたが、参加者の皆さんは魅力的な堅田の町の写生を楽しんでおられました。
講評会では、一般参加者の力作を永江先生(両日担当)・待井先生(26日担当)・岸田先生(27日担当)が丁寧にかつわかりやすく制作のアドバイスをされ、参加者のみなさんにとって有意義な写生会になったと思います。

5/26永江先生(左)と待井先生(右)による講評の様子

5/27永江先生(左)岸田先生(右)による講評の様子
次回の写生会は、6月23日・24日の仰木・棚田の写生会です。次回も晴れますように。
成安造形大学イラストレーション領域の日々blogにも写生会の様子が報告されています。
イラストレーション領域の日々ブログはこちらから
2012年度近江学研究所の公開講座についてはこちらから↓
近江学研究第3期「八王寺山の家・自力建設プロジェクト」始動!

自力建設の舞台となる八王寺山全景 撮影:永江弘之
本研究所で2010年から3ケ年計画で取り組んでいる近江学研究「里山~水と暮らし」。
大津市仰木地域をフィールドに、大学教員が研究員を務め、学生と共に調査・研究を進めています。
これまでは、
2010年 第1期は、棚田での水利用についての調査、
築150年の民家の水利用や植生・信仰についての実測・聞き取り調査を行いました。
2011年 第2期は、仰木の生活文化の聞き取り調査と、
それをもとに「仰木ふるさとカルタ」をつくるプロジェクトを行ってきました。

食文化の聞き取りとして、「納豆餅」づくりを実体験しました。
本年度は、第3期目として、
上仰木地域で棚田保全活動や地域活性化活動に取り組んでいる
農業組合の有志で結成した「八王寺組」の皆さんの「拠点づくり」に関わります。
建築素材である「木、藁、竹、土」などを地元から採集し、
自分たちの手で建設する「自力建設」プロジェクトに参加・協力し、
家づくりの実践を体験しながら地域の素材と技術を学び、
地域住民との交流を深めていきます。
また、この取組は授業化されています。
先日5月16日(水)に第一回目の授業ガイダンス&レクチャーを行いました。

担当研究員: 大岩剛一先生(建築家・空間デザイン領域住環境デザインコース教授)
まず、大原研究員によりこれまでの2年間の研究調査活動についての報告がありました。
その後、担当研究員である大岩研究員が、スライドレクチャーを行いました。
仰木地域にて かつて行われてきた循環されながら資源を利用してきた持続可能な暮らしの中では、
建築素材である「藁」「竹」「土」「木」についても地元のものを使われ、「結」と呼ばれる共同体の協力で建設されてきた。
今回の自力建設でも、ほとんどの素材を仰木地域のものが使われることになりそうだと。
そして、2004年に成安造形大学の校庭に学生たちが自力建設した
「カフェテリア結」での取り組みについて報告されました。

間伐材を組み合わせた柱で躯体をつくる

カウンター下のストロー・ベイル(藁をサイコロ状にした塊)の上から土を塗る
学生が職人さんより学びながら、建設をはじめ、
ロゴマークや家具、照明のデザインに取り組んだ様子について話されました。

家具は住環境デザインクラスの学生によるコンペで選ばれた。

夜を徹して、作業を進めました。
「場所を自分たちの手で作り出すこと」の意味を、
経験をとおして実感することができる貴重な貴重な経験となる研究プロジェクトになりそうです。
次回は、5月26日(土)に授業を行います。
関心のある学生は、近江学研究所窓口(聚英館1階)までお問い合わせください。
■地域連携推進センターのブログにも紹介されました! →こちら
研究員展覧会のお知らせ 「Seeds 河原林美智子展」
ファイバーアート作家であり、テキスタイルアートコース非常勤講師、
また本年度より本研究所の客員研究員の河原林美智子による展覧会が京都で開催されます。
5月2日(水)放送のNHK「美の壺」にも、デザインされた麻のウエディングドレスが放映されるなど、
ご活躍です。
ぜひ、足をお運びください!
また、7月14日(土)に開催する公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」第2弾である
「近江~まとうかたち湖東の織物-近江上布-」では、
伝統工芸士の大西實さんと、麻素材の魅力やその制作について対談します。
そちらもお楽しみに!
■展覧会について■
Seeds 河原林美智子展
2012年5月19日(土)~6月2日(土)12:00~19:00 木曜は休廊日です。
Gallery Gallery
〒600-8018 京都市下京区河原町四条下ル東側 寿ビル5F
>>>地図
>>>「美の壺」詳細はこちら
>>>公開講座について
京都新聞「湖国探研-16」に加藤研究員が掲載されました。
5月14日(月)に京都新聞の滋賀の研究者を取り上げたシリーズの記事「湖国探研」に、永江先生に続き加藤研究員が取り上げていただきました。
成安造形大学の職員でもあり、研究員でもある加藤研究員が、様々な転機で出会いがあり、研究に突き進んできた経緯が伝わる記事となっています。
加藤研究員は、今年度近江学フォーラム会員限定の講座でも、長年研究されている「仰木・堅田の祭礼」について講演します。
近江学の研究活動が、広く知られていくことがとても嬉しいです。
講座報告「近江~素材のかたち 成子和紙」
日時:2012年5月12日(土)10:40〜12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:成子 哲郎 氏 対談:小嵜 善通(本学教授)
タイトル:「近江〜素材のかたち 成子和紙」
今年度の連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」の第1回目。講師には、和紙のなかでも「紙の王様」とも呼ばれる雁皮(がんぴ)紙を大津市桐生の郷で漉いておられる成子哲郎氏をお迎えしました。成子氏は、雁皮紙を江戸時代後期から製造する成子紙工房4代目で、「全国手すき和紙連合会」の会長も務められ、手漉き和紙の普及や保存継承に務めておられます。
当日は雁皮や楮(こうぞ)、三椏(みつまた)など、和紙の原材料となる樹皮サンプルや、紙漉きに用いる諸道具などを用いて、紙漉きの工程を説明いただき、後半では洋紙の原材料(パルプ)を用いた紙漉き実演も行っていただきました。受講者の皆さんには、この実演を通して和紙と洋紙との大きな違いを理解していただけたものと思います。また、雁皮紙、楮紙、葦(よし)紙のサンプルが受講者に配られ、和紙にじかに触れることにより、各々の紙質の違いを実感していただくことができました。
また、琵琶湖の葦を用いた葦紙製造過程において発生する環境問題や、日本画制作における和紙の重要性など、和紙製造の現状を熟知する成子氏ならではの話題や意見が次々と語られ、和紙への再認識を促された講座となりました。
附属近江学研究所 研究員 小嵜善通