公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」第1弾を開講しました。

日時:2013年5月11日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:遠藤 仁兵衛氏 (和菓子処藤屋内匠十三代目店主)
対談:加藤 賢治(本研究所研究員)
タイトル:「食のかたち~和菓子処 藤屋内匠」

本日、附属近江学研究所主催の「近江のかたちを明日につなぐ」をテーマに
連続講座の第一回目として「食のかたち~和菓子処 藤屋内匠」を開講しました。
創業寛文元年(1661)、近江八景や大津絵をかたどった落雁(らくがん)という伝統ある銘菓をつくり続ける和菓子処藤屋内匠の十三代目店主遠藤仁兵衛氏をお迎えし、本研究所の加藤賢治研究員と対談いただきました。

遠藤仁兵衛氏

遠藤仁兵衛氏


遠藤さんからのご厚意で、まんじゅう・干菓子・サブレセットが配られ、藤屋内匠での和菓子の変遷を学ぶことができました。

また、藤屋内匠の歴史、製菓方法や素材について、実演を交えながら伝統の技術を学ぶことができ、充実した講座となりました。
加藤賢治研究員 と 実演を行う遠藤夫妻

加藤賢治研究員 と 実演を行う遠藤夫妻


帰りには、実演したしおみまんじゅう、さつきを模した和菓子、焼き菓子をお土産に頂きました。
また、後日詳しいご報告を、ブログで行います。

特別公開講座『琵琶湖の景観』を開講しました。


日時:2013年4月27日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:金田 章裕 氏
タイトル:「琵琶湖の景観 〜水辺の文化的景観をめぐって〜」

金田先生のご紹介をする木村所長

金田先生のご紹介をする木村所長


 琵琶湖とそれを取り囲む山々という豊かな自然環境や千年を超える歴史文化を有する近江には景観をめぐって様々な取り組みが行なわれています。
 この日は、『文化的景観—生活となりわいの物語』の執筆者で人間文化研究機構・機構長で前京都大学副学長の金田章裕先生に近江の景観について語っていただきました。


 講演では、先ず近世の「近江八景」が水辺の風景として先駆的であったという話から始まり、2005年の景観法の試行、文化財保護法の改正のことなど、最近の景観についての捉え方を解説いただきました。そして、地域において人々の生活や生業、風土等が織り込まれた文化景観を重要文化的景観として、2006年に日本で始めて滋賀県の「近江八幡の水郷」が選定されたことなどが紹介されました。
 全国に35ヶ所ある重要文化的景観をスライドで紹介され、最後に沖縄県「竹富島」の「(土地)を売らない、汚さない、(美観を)乱さない、(集落景観、美しい自然を)壊さない、(伝統的祭事行事を)生かす」という住民によって主体的につくられた「竹富島憲章」について話され、「重要文化的景観をつくり、継承していくためにはそこに暮らす多くの人々の思いが一つにならなければならない」と熱く語られました。
 滋賀県には水辺に暮らす人々が祭礼とともに守り続けてきた文化的景観がたくさんあります。金田先生から様々なキーワードをいただき、それぞれの地域で暮らしに息づく景観が意識され、そこに暮らす人々が協力して景観を守ろうとする時、かけがえのない風景が後世に残されるのだと実感しました。
報告:近江学研究所 研究員 加藤賢治

フォーラム会員限定講座第5回「石造道標に見る道の機能」を開講しました。

12月15日(土)、今年度最後となる近江学フォーラム会員限定講座が開講されました。
近江学研究所木村至宏所長が「石造道標に見る道の機能」と題して、今年度の最終回を締めくくられました。

木村 至宏 近江学研究所 所長

木村 至宏 近江学研究所 所長


冒頭では、道標研究を始められた時、道標探しに夢中になり、
時間を忘れて帰りの電車が無くなってしまったというエピソードなどを話され、
続いて、道標の形や、背景、意義など詳しい資料をもとに解説されました。

 後半は、調査の際に撮影された道標約20基をスライドで紹介され、
現代の交通標識とは違い、一基ずつにその歴史や物語が見えてくると
道標の魅力を語られました。
 また、道標を中心としながら、街道やその地域に伝わる伝承、
近江商人の活躍など話は多岐に広がり、木村所長の近江に関する知識の深さに改めて感心されられました。
道標の研究は昭和40年代前半から始まり、いわば木村所長の研究の出発点、
すなわち木村近江学の原点と言えるものです。
今年度の締めくくりにふさわしい講義にフォーラム会員の皆さんの顔は満足そうに見えました。

 
報告:加藤賢治
日時:2012年12月15日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:木村 至宏氏 (附属近江学研究所 所長)

ブライアン・ウィリアムズ氏と永江弘之研究員の公開講座を開催!

ブライアンさん

ブライアンさん


公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」第5弾を開講しました。
本日、附属近江学研究所主催の「近江のかたちを明日につなぐ」をテーマに
連続講座の第5回目として「風景のかたち~琵琶湖の原風景」を開講しました。
曲面絵画の風景画を発表する一方で、風景画家の立場から荒らされていく自然を憂い、
自然保護再生を訴えてこられたブライアンさんを講師にお招きし、
本学教授で風景画家である永江弘之研究員と対談いただきました。
ブライアンさんは、生物学的な視線で、長年、日本や世界を旅する中で出会った風景を読み解き、
その自然環境の豊かさがどこからくるものなのかを、語られました。

また、永江先生との対談では、身振り手振りを交えて、絵を描く楽しみが伝わるお話で盛り上がり、
ブライアンさんの幅広い魅力が伝わる講演になりました。


講演後、13:30からは、展覧会場ギャラリーアートサイトにて、ギャラリートークを行いました。
ブライアンさんの作品への想い、取り組み方、その作品ごとのエピソードを笑いやメッセージ性のある言葉で
お話頂きました。
また、サイン会も開催し、一日を通して、充実した講座となりました。


また、後日詳しいご報告を、ブログで行います。
日時:2012年12月1日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:ブライアン・ウィリアムズ氏 (風景画家)
対談:永江 弘之氏(本学准教授、本研究所研究員)
タイトル:「風景のかたち~琵琶湖の原風景」

近江学フォーラム会員限定講座第4回「仰木・堅田の祭礼」を開講しました。

会員限定講座の四回目として、筆者である私、加藤研究員が今まで取材してきた身近な「宮座」の祭礼について話をしました。「宮座」とは昭和のはじめに肥後和男博士が宮座の宝庫と呼ばれた滋賀県を舞台に調査し、そのかたちを分類しましたが、時間がたつにつれ、そのかたちが変容してきています。
仰木と堅田という身近な集落に付いても例外ではなく、肥後氏の研究では分類できないような宮座が運営されています。
この日は、仰木祭りにおける親村(しんむら)よばれる村座組織の役割や、かつては野神講が行っていた野神祭りの現状など、二つの宮座の祭礼の変化を詳しく紹介しながら、祭礼の現状を報告しました。


日時:2012年11月17日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:加藤 賢治氏 (附属近江学研究所 研究員)

公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」岩田康子氏と大岩研究員が対談しました。

 本学内で人気のカフェテリア「結」の経営者で、有限会社ブルーベリーフィールズ紀伊国屋代表取締役の岩田康子氏を講師に迎え、ご自身の体験をもとにした「ローカルフード」について語っていただきました。
 前半の講演では、滋賀県に移住し、ブルーベリーを栽培始められた当時の話から、かまどでご飯を炊くもてなしの発見、子供達に食べる楽しさをしらせること、そしてお手伝いのおばさまが話してくれた小さな幸せの話など、岩田氏が日常感じておられる食育や価値観について熱心に語っていただきました。
 後半は、近江学研究所大岩剛一研究員が聞き手となって対談が行われました。
大岩研究員は東京、岩田氏は京都と出身地は異なりますが、お二人は同世代であり、高度経済成長とともに、常にお金が出回り、ものにあふれた時代に成長されたとのこと。お互いに大量生産大量消費というこの社会の問題点を話されながら、食べ物に対しては特に、安く、簡単に手に入るものは基本的に体に悪いと警鐘を鳴らされました。
 すでに現代の経済社会の中で生活している我々は、どうしても安価で、手に入れやすいものに目が移ってしまう。難しい問題ではあるが、国民全員が本当に大切な次世代の価値観を持つことができるかということで、そうなれば社会も変わっていくのでは、と対談の最後を締めくくられました。

前半は岩田康子氏の講演が行われました。

前半は岩田康子氏の講演が行われました。



大岩剛一研究員

大岩剛一研究員




日時:2012年11月10日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:岩田 康子氏 (有限会社Blueberry Fields紀伊國屋代表取締役)
対談:大岩 剛一氏(本学教授、本研究所研究員)
タイトル:「食のかたち~ローカルフード」

近江学フィールドワーク

 近江学Bのフィールドワークを10月20日(土)に行いました。
 恒例となっていますフィールドワークは近江学研究所が主催する「近江学」という授業の一環で年に一度行われているもので、今年は門前町坂本の町を訪ねました。
 JR比叡山坂本駅に午前10時半に集合。坂本は、世界遺産である比叡山延暦寺と日吉大社の門前町として古くから賑わい、比叡山の高僧が余生を過ごした美しい庭園を持つ里坊や、穴太衆積みという「石積みの美」が見られる名所として知られます。先ずは駅前でそのような坂本の概略を説明し、麓の滋賀院門跡を目指して出発しました。

 途中、京阪坂本駅前の最澄が中国から苗を持ち帰り開いた日本最初の茶園として著名な日吉茶園、その最澄が誕生し、産湯を使った坂本生源寺を紹介、穴太積み石垣を眺めながら11時過ぎに目的地、滋賀院門跡に到着しました。

 滋賀院門跡は徳川家康・秀忠・家光の三代の将軍に仕えた慈眼大師南光坊天海が開いた総里坊で、皇室との関わりがある門跡寺院としての格式も高い寺院です。そのため、庭園や絵画、仏具、襖絵、工芸品など貴重な名品を見ることができます。その滋賀院門跡を約1時間かけて見学しました。
 「盲己利他(もうこりた)」という最澄の言葉や、延暦寺に伝えられる「不滅の法灯」、天台座主が今も使われているという輿(こし)、比叡山の厳しい修行である千日回峰行の話など、当寺院から詳しい解説をいただきました。
 「天高く馬肥ゆる秋」を感じる秋晴れに恵まれ、滋賀院では対岸に美しい近江富士(三上山)を眺めることができました。学生達は日頃あまり触れることのない本物の文化財や仏教思想に触れ、貴重な体験をしました。

報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治

近江学フォーラム会員限定講座 第3回「琵琶湖の湖底遺跡」を開講しました。

松井 章先生

松井 章先生


9月29日(土)の近江学フォーラム会員限定講座は「琵琶湖の湖底遺跡」と題して、奈良文化財研究所埋蔵文化財センター長松井章先生に講義いただきました。
 松井先生は動物考古学、環境考古学がご専門で、特に縄文時代の貝塚の研究を続けてこられました。この日は、1990年に粟津湖底遺跡の発掘調査に参加された時の調査報告を中心に、湖底遺跡の魅力について語られました。
 湖底遺跡は国際的にウェットランドと呼ばれ、湿気によって保たれた湿地特有の遺物が発掘されることで注目され、特に琵琶湖の粟津湖底遺跡は9000年前の縄文早期の遺跡として世界的なレベルの研究報告となった。縄文早期のこの遺跡には陸上の遺跡では分解されて残らない植物性の遺物、特にドングリやトチの実、ヒシなどが良質な形で大量に出土し、層を成していた。これは、一家族が年月をかけて出したものではなく、集落総出で木の実を採取して一斉に皮むき等の加工をしたと考えられる。また、縄文中期の地層からはセタシジミの貝殻大量に出土し、その貝殻の断面から晩夏から初秋に採取されていた事もその調査で解明された。この遺跡の遺物には他の貝塚に見られるように、魚骨や獣骨などが極端に少ないことから、ここが単なるゴミ捨て場ではなく、近辺に集住した人々の共同作業場であったと考えられるとまとめられました。
 講演の最後に、国立の機関である奈良文化財研究所埋蔵文化財センターの所長である松井先生は、文化財レスキュー隊の隊長を務められており、東日本大震災で被災し流出した文化財を探索する任務に従事されているお話がありました。大震災の爪痕はこのように文化財保護の分野にも及び、完全な復興にはまだまだ時間がかるという現状を知らされました。

日時:2012年9月29日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:松井 章氏 (奈良文化財研究所 埋蔵文化財センタ―長)

公開講座「魂のかたち~木地師の里のものづくり」を開講しました。


滋賀県東近江市の永源寺から山深く進むと、日本の木地師の発祥の地であるといわれる
小椋谷(蛭谷・君ヶ畑)がある。
ここは平安時代に天皇になれなかった悲運の親王、惟喬親王が隠棲した場所とされ、
親王が山の民に手挽ロクロの技術を教えたという伝承が残っています。
この日は、はじめに加藤研究員が、惟喬親王伝説や、
全国に散らばった木地師を座的な組織に取り入れネットワークを構築していたという
近世の「氏子狩制度」について解説。
また、小椋谷をフィールドワークした記録を写真で紹介しました。
つづいて、小椋谷で一旦途絶えていた木地業を復活させ、
唯一木地師としてこの技を独学で続け、木地を制作されている小椋昭二さんを招き、
工芸分野を専門とする辻喜代治研究員が木地の魅力についてインタビューしました。

講師 小椋昭二氏

講師 小椋昭二氏


辻喜代治 本学教授

辻喜代治 本学教授


話は、木地業を復活させようとした動機から始まり、木の種類や、
その制作の過程、販売方法まで多岐にわたりました。

インタビューの中で小椋さんは「すべてが苦労です」と試行錯誤の中での仕事を振返りながら、
「木はという素材には一つ一つ違った表情があり、出来上がった作品にもそれぞれ個性がある」
「貴重な古材や表情が面白い素材に出会うと興奮し、ロクロをまわすのが楽しみになる」など、
木工品の魅力や木地師としての喜びが語られました。
 最後に辻研究員は「均一で同じ形のプラスチック商品が蔓延する中、
唯一これのみという手作りの木製品を是非とも購入して、その美しさを味わってほしい。
またそういう価値を持つ消費者を増やしていく必要がある」と、
手仕事やそれによってつくられる物の大切さを会場に投げかけました。


日時:2012年9月15日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:小椋 昭二氏 (木地師)
対談:辻 喜代治氏(本学教授、本研究所研究員)
コーディネーター:加藤 賢治(本研究所研究員)
タイトル:「魂のかたち~木地師の里のものづくり」

近江学フォーラム会員限定講座 第2回「葛川の太鼓廻し」を開講しました!

 7月21日(土)、第2回目の近江学フォーラム会員限定講座を開催しました。
講師に大津市歴史博物館学芸員で近江学研究所の客員研究員である和田光生先生を迎え、
京都と若狭を結ぶ渓谷に位置する葛川坊村の明王院で行われる
「太鼓廻し」について講演いただきました。


 毎年7月18日に行われる葛川明王院の「太鼓廻し」という行事は、葛川地域の民俗行事であると同時に、比叡山延暦寺で行われる千日回峰行という僧侶の修行の一部でもあるという非常に稀な形式をとる祭礼です。和田先生は、その起こりが千日回峰行の礎を築いた相応和尚(そうおうかしょう)(831〜918)にあるとして、相応の人物像を資料に基づいて解説されました。
 伝承によると、相応和尚は法華経の「常不軽菩薩品」に基づき、毎日花を根本中堂に捧げるという行為を繰り返し、そこから長期間、山中を闊歩することで悟りを得るという回峰行にたどり着いた。その修行の起源は、比叡山ではなく比良山の麓、葛川の坊村「三の滝」で、山中での修行を支えてくれる不動明王を観想していた際、滝壺に不動明王が現れ、それに相応が飛びつき抱きついたところ桂(かつら)の古木であった。この古木で不動明王を彫り、安置したのが明王院の始まりである。

 和田先生はこの伝承が鎌倉時代前期の高僧である慈円によって書かれたと言われる『葛川縁起』によるところが多くあるとしながら、この葛川明王院から比叡山の千日回峰行が始まったという意義について話されました。そして、千日回峰行を行う行者がその通過儀礼として、この太鼓廻しに参加するということ、そして、その行事を葛川地区の住民が支えているという関係性が、この民俗行事の注目すべきところであると述べられました。
 また、先日18日の夜に行われた「太鼓廻し」の写真を投影され、この行事の全貌を臨場感あふれるスライドショーで紹介していただきました。来年の7月18日は是非とも葛川を訪れたいと思いました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
日時:2012年7月21日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:和田 光生氏 (大津市歴史博物館 学芸員)
今年開催された「葛川の太鼓廻し」の京都新聞の記事はこちら
 

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