米田 実氏:近江学フォーラム会員限定講座 第5回

日時:2013年12月14日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:米田 実氏(日本民俗学会評議員)
タイトル:「民俗の力―近江の地域史と伝承―」

講師:米田実氏

講師:米田実氏


今年度のフォーラム会員限定講座の最終回は、日本民俗学会評議委員で甲賀市教育委員会事務局
歴史文化財課市史編さん室室長の米田実先生にご登壇いただきました。
 講演は「民俗の力 –近江の地域史と伝承−」と題し、甲賀市油日の油日神社や「奴振り」で
知られる油日祭りを例に挙げながら、急速に変わりつつある祭礼について語っていただきました。
 はじめに、祭礼のような無形の民俗文化財は、国宝や重要文化財のようないわゆる有形の
文化財と違って、伝承として受け継いできた人物がいなくなればその時点で無くなってしまう
非常にはかない文化財であるとしながら、歴史資料ともなる貴重で素晴らしいものであると紹介されました。
 それらの祭礼が、高度経済成長の時代から急速に形を変え、農村と都市の境が曖昧となってきている近年、
伝統の祭礼を何のためにやっているのかという問いかけに答えられず、重層的で複雑な村落の
素晴らしい儀礼が簡素化あるいは消滅する場合も多くなってきているとの現状も報告されました。
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 講義の終盤には、五年に一回行われるという油日祭りの「奴振り」を紹介する映像が流され、
その祭礼を見ることで近世の村組織の構造が理解できることや、それらを後世に伝えることで
村の人々の絆が深まって行く現状を理解することができました。
 民俗文化財を継承することは、第三者として村の外から見れば美しいものであるかもしれないが、
それらを受け継ぐために祭礼を行っている村の人々の苦労は計り知れない。その両面を知りながら、
現代の民俗文化財のあり方を常に考えなければならない。
今回の講座では民俗の持つ素晴らしき「力」と、その継承の難しさを改めて学ぶことができました。
報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治 
講師プロフィール
1959年大津市生れ。立命館大学経済学部卒、同文学部史学科中退。日本民俗学とくに祭礼文化史に関心を持ち、滋賀県内を中心に調査・研究を進め、各自治体史などに執筆する。現在甲賀市史編さん室勤務。日本民俗学会評議員
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連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」 近江~屋根のかたち-檜皮葺-

日時:2013年11月30日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:河村 直良氏 (株式会社河村社寺工殿社 代表取締役)
対談:小嵜 善通(本学教授・本研究所研究員)
タイトル:「近江~屋根のかたち-檜皮葺-」

講師の河村直良さん

講師の河村直良さん


11月30日(土)、近江学フォーラム連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」の4回目を開催しました。今回は、檜皮葺や杮葺を専門とされておられる河村直良氏を講師としてお迎えしました。
社寺などの伝統建築のなかでも、檜皮葺や杮葺は格式の高い和風建築に用いられてきたものですが、河村氏はこれまで県内では三井寺や石山寺、日吉大社などの檜皮葺工事に携わってこられました。
小嵜善通 研究員(本学教授)

小嵜善通 研究員(本学教授)


専門的な話がはずむ対談

専門的な話がはずむ対談


当日は、檜皮の現物だけでなく、檜皮採取や檜皮葺に用いる道具なども持って来ていただき、その使用方法をうかがうとともに、原皮師(もとかわし)が行う檜皮採取の方法や時期、また、檜皮は10年ほどで再生し、2回目以降の檜皮が実際に使用されていること、さらに、檜皮葺の寿命や、檜皮を留める竹釘のことなど、普段知る機会の少ない貴重なお話をうかがうことができました。
持続可能な材料を用いる檜皮葺の工法が、現在よく耳にするようになったエコの考え方にも通じると指摘された点や、「視る」ということが様々な状況においていかに大切かということを熱く語られる河村氏がたいへん印象的でした。

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報告:小嵜 善通

寺島典人氏:近江学フォーラム会員限定講座第4回開講

日時:2013年11月16日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:寺島 典人氏 (大津市歴史博物館学芸員)
タイトル:「快慶とその弟子行快-仏師の癖と分業-」

寺島典人氏

寺島典人氏


11月16日(土)、近江学フォーラム会員限定講座の4回目が開催されました。
今回は、「快慶とその弟子行快」と題して、大津市歴史博物館学芸員の寺島典人先生にご登壇いただきました。
新進気鋭の研究者である寺島先生を紹介する木村所長

新進気鋭の研究者である寺島先生を紹介する木村所長


寺島先生は美術史の中でも彫刻史がご専門で、今回は、前段で仏像がいつ頃、誰によって制作されたかを
判定する手段をわかりやすく解説していただきながら、後半は、その中でも非常に多く作品が残る快慶と
その弟子行快について、作風やその判定に関する最新の研究成果を発表していただきました。
はじめに、仏像の基礎知識をプリントで学びました

はじめに、仏像の基礎知識をプリントで学びました


寺島先生は、仏像の顔や、全体のスタイル、衣紋は仏像の制作を依頼する人の意向が反映され、
仏師の個性や特徴が出にくいが、耳や手足、指など造形的にあまり重要でない部分に仏師の癖などが
見られると解説され、最新の研究として仏像の耳を対象にした調査の事例を示されました。
耳のかたちだけですべてが解るわけではないが、仏像を刳り貫いた様子や、その他の造形的な特徴、
そしてそこに書かれた墨書(銘文)もすべて含めて、誰がいつ頃何のために制作したかが
徐々に解ってくるという地道な研究の姿を知ることができました。

今回、寺島先生にお話しいただいた研究内容は、今年の12月に発刊が予定されている
小学館の『日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院』の中で発表されるということです。
その難しい研究内容を丁寧な資料とともに、解りやすく解説いただき、終了後のアンケートにも
「難しい仏像の研究を解りやすく紹介していただき、新しく知ることがたくさんありました。」と
満足度の高い回答がいくつもありました。
報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治 

石丸正運氏:近江学フォーラム会員限定講座第3回開講

会場風景

会場風景


日時:2013年9月28日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:石丸 正運氏 (美術史家)
タイトル:「画人 近江蕪村 -紀楳亭と横井金谷-」
9月28日(土)、近江学フォーラム会員限定講座の3回目を開催しました。今回の講師は、近江学研究所の参与で美術史家の石丸正運氏を講師に迎え、「画人 近江蕪村—紀楳亭と横井金谷−」と題して語っていただきました。
石丸氏は「紀楳亭(1734〜1810)と横井金谷(1761〜1832)は近江ゆかりの文人画家であるが、与謝蕪村(1716〜83)の画風にきわめて近いスタイルで描いた作品を残している。楳亭ははやくから絵俳諧を蕪村に師事して学び、金谷は蕪村に私淑して画業を育んでいる。」と、資料を基にわかりやすく二人の画業を解説されました。
楳亭が京都から大津に移住したのは、京都での天明の大火がきっかけであるが、大津は蕪村のあこがれていた芭蕉ゆかりの地でもあり、風光明媚な自然環境が大きく影響したと大津の近江の美しさが強調されました。また、大津には楳亭の墓所や旧宅の石碑などが残っていると紹介されました。
近世の著名な文人画家を育てた近江の魅力を改めて知る機会となりました。
近江学研究所研究員 加藤賢治
石丸正運氏

石丸正運氏



石丸先生所蔵の横井金谷画の掛軸

石丸先生所蔵の横井金谷画の掛軸

連続講座第3回「受け継ぐかたち②-北近江の地酒・冨田酒造ー」開催

日時:2013年9月14日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:冨田 泰伸氏 (冨田酒造有限会社 十五代蔵元)
対談:加藤賢治・石川 亮(本研究所研究員)
タイトル:「近江~受け継ぐかたち②-北近江の地酒・冨田酒造-」
9月14日(土)、近江のかたちを明日につなぐ−受け継ぐかたち−の2回目ということで、加藤、石川2名の研究員がコーディネートし、湖北木之本の名酒七本槍で知られる冨田泰伸さんに登壇いただきました。
今回は、400年以上の歴史を持つという老舗の酒蔵であるということ、そして、知られざる湖北木之本の魅力も知っていただこうと第1部は私(加藤)が「湖北の要衝木之本」という内容で賤ヶ岳や余呉湖、伊香具神社など木之本を中心とした湖北を紹介しました。続いて冨田さんが登場。酒造りを中心に地元を巻き込んだ様々な取り組みについてお話をいただき、最後に石川亮研究員から非常に興味深い冨田酒造のWebサイトを紹介し、冨田酒造の商品開発などに触れながら対談が行なわれました。

 第1部木之本の紹介の中では、冨田さんの曾祖父である冨田八郎氏が滋賀県最古の図書館である「江北図書館」の理事長兼館長を努められ、現在もお父さんである光彦氏が引き継ぎ、湖北地域の歴史文化の継承に寄与されているということにも触れました。

木之本について解説する加藤研究員

木之本について解説する加藤研究員


 第2部で冨田さんは、愛する地元に良いものを残したい一心で、今があると自己紹介の中で語られ、近年の日本酒離れを憂いながら、厳しい酒造りの現状や、酒造りの行程など興味深く貴重なお話を語っていただきました。
冨田酒造有限会社 十五代目蔵元 冨田泰伸氏

冨田酒造有限会社 十五代目蔵元 冨田泰伸氏


 第3部では、素晴らしいWebサイトを拝見しながら石川研究員が質問を投げかけ、地域の篤農家(とくのうか)や地元の農業高校との連携、海外市場への進出、酒粕ジェラートや石けん、Tシャツやストラップなどの新商品の開発の話など、直接儲けにつながらないが、つくる人、買う人、地域の人みんなが笑顔になれるような取り組みについて熱く語っていただきました。
 受け継ぐかたちの2回目、伝統の酒造りを基礎としながら、地域とともにつくり、グローバルに展開するという、これからの酒造りのあり方にチャレンジされている冨田さんの活躍をしっかりみせていただきました。
冨田氏と対談をする石川研究員

冨田氏と対談をする石川研究員


冨田酒造㈲のwebサイトを見ながら商品の解説をしながら対談

冨田酒造㈲のwebサイトを見ながら商品の解説をしながら対談


冨田酒造㈲のグッズ

冨田酒造㈲のグッズ


 会場からは、「盛んに新商品開発へと活動をされている冨田さんの行動力に敬服します」「このような活動を教えていただく機会をいただき感謝します」など多数の前向きな感想をいただきました。
 冒頭に紹介した江北図書館を受け継いだ先代や先々代の行動力を受け継いだ冨田泰伸さんは、酒造りにとどまらず、広く地域を網羅してその新しい魅力を創出し、発信されることでしょう。
成安造形大学附属近江学研究所研究員 加藤賢治
冨田酒造webサイト>>こちらから

連続講座第2回「受け継ぐかたち①-彦根仏壇・株式会社井上-」開催

日時:2013年7月20日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:井上 昌一氏 (井上仏壇店 株式会社井上代表取締役)
対談:石川 亮(本研究所研究員)
タイトル:「近江~受け継ぐかたち①-彦根仏壇・株式会社井上-」
7月20日(土)、連続公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」シリーズの2回目を開催しました。
 今回は「受け継ぐかたち」というテーマで、伝統の技術を用いて新しいものづくりに挑戦している彦根仏壇・株式会社井上の代表取締役、井上昌一さんをお招きし、その取り組みについて詳しく語っていただきました。

株式会社井上の井上昌一さん

株式会社井上の井上昌一さん


美術作家としても活躍する石川亮研究員

美術作家としても活躍する石川亮研究員


 このシリーズは、近江学研究所研究員がコーディネイトするかたちで行なわれており、今回は美術作家として活躍している石川亮研究員がものづくりの視点で話を引き出しながら進めました。
 はじめは、井上さんが、彦根藩の武具をつくる職人から出発したという彦根仏壇の歴史から、彦根仏壇の特徴である金仏壇の制作行程、七職といわれる、木地師や塗師、錺金具(かざりかなぐ)師などの職人の役割などスライドや映像を交えて解説されました。
対談形式で講演は進められました。

対談形式で講演は進められました。


漆の塗りについて説明する井上さんと石川研究員

漆の塗りについて説明する井上さんと石川研究員


 その後、後継者不足や景気の後退、仏壇離れ等の現状を解決するため、新しい祈りのかたちを本学の学生や若手デザイナー等と新製品を開発する取り組みが紹介されました。新時代の仏壇や、仏様の手のかたちをあしらった持ち運び可能な祈りの対象となるグッズの提案など、斬新なアイディアが、実際に商品化された現物を前に話されました。続いて、仏壇を制作する木地師と塗師の技術を使い、カラーの漆がほどこされたおしゃれなデザインの食器や菓子箱、トレイなどの製品も紹介されました。
柒+(ナナプラス) 成安造形大学も参加した、コラボレーションから生まれた新しい仏壇

柒+(ナナプラス) 成安造形大学も参加した、コラボレーションから生まれた新しい仏壇


柒+(ナナプラス) 持ち運びができる、御仏の手をイメージした祈るかたちの提案

柒+(ナナプラス) 持ち運びができる、御仏の手をイメージした祈るかたちの提案


 現在、井上さんは、漆塗りの良さや新しいライフスタイルにつながる製品を海外に紹介し、観光客を誘致する取り組みに繋げるなど様々な活動を続けておられます。しかし、このような活動によってつくられる製品は非常に高価であり、安定した販売につながっていないという現状も話されました。
石川研究員はまとめとして、多少高価な食器であっても、大量生産大量消費から脱却し、その漆塗りや手作りの価値をしっかり認識する消費者を増やさなければならないし、そのために大学としてもそのような新しい価値観を学生に教えて行かなければならないと改めて感じたと感想を述べられました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
彦根仏壇の新たなブランドとして取り組む「chanto」について説明する講師たち

彦根仏壇の新たなブランドとして取り組む「chanto」について説明する講師たち


伝統を新しい感性で継承しようとする話に皆さん熱心に耳を傾けておられました。

伝統を新しい感性で継承しようとする話に皆さん熱心に耳を傾けておられました。


井上仏壇について>>こちらから
「柒+(ナナプラス)」についてフェイスブック>>こちらから
「柒+(ナナプラス)」滋賀県立大学・成安造形大学の学生デザインの仏具公開、IFFTに展示へ の新聞記事(しが彦根新聞)>>こちらから
新ブランド「chanto」 について>>こちらから

川嶋將生氏:近江学フォーラム会員限定講座第2回開講


日時:2013年7月13日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:川嶋 將生氏 (立命館大学教授)
タイトル:「中世近江の文化環境」
今年度2回目となるフォーラム会員限定講座を立命館大学教授の川嶋將生先生を迎えて開催しました。
講座のタイトルは「中世近江の文化環境」。近江の国は歴史上惣村が非常に発達していたこともあり、惣村文書が多く今に伝えられています。川嶋先生は具体的に菅浦文書や大嶋神社奥津嶋神社文書、今堀日吉神社文書などの記述から、芸能の発達について推考された興味深いお話をいただきました。
特に中世の近江に発展した「近江猿楽六座」や芸能を深く愛した武将である近江源氏「佐々木(京極)導誉」、そして「多賀大社の勧進猿楽や舞々等の芸能」について解説されました。
中世の近江は、「一国の米の取れ高が77万石という全国的に見ても最も豊かな土地であった」こと、「比叡山を背景とした天台旧仏教と新興の浄土系宗派が発展した」こと、そして「京都の東の玄関口として琵琶湖という運河とそれを囲む街道が発展し、交通の要衝であったこと」という3つの重要な要素が、芸能文化の発展の基盤をつくったとまとめられました。
最後に、このように芸能文化を育んだ近江であるが、例えば猿楽や田楽といった民俗芸能の基本的なものが現存せず、その理由も判明していないという大きな課題を残しているとの指摘もされました。
今回の講義で、近江が持つ豊かな水源に恵まれ、全国有数の米どころであり、街道が発達し、交通の要衝であるという特徴が、民俗芸能の発展においても欠かせない条件であったということが解り、「近江学」という学問にまた一つ新たな頁(ページ)が追加されました。

高島幸次氏:近江学フォーラム会員限定講座第1回開講


日時:2013年6月29日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:高島 幸次氏 (大阪大学招聘教授)
タイトル:「近江における起請と鉄火と傘連判」
6月29日(土)、近江学フォーラム会員限定講座の第1回目として、大阪大学招聘教授の高島幸次氏を迎え、「近江における起請と鉄火と傘連判」と題して近世信仰世界の深層について語っていただきました。
高島先生は、冒頭で「昔の人々は神や仏の存在を真面目に信じ、それらを中心に生活を行なっていたと思われがちであるが、科学技術が発展した現代社会の我々の信仰心と少しも変わりがなかったということをお話しします。」と講義のテーマを明確に提示され、興味深い話が始まりました。

高島幸次先生

高島幸次先生


近世に日本全土でつくられた「起請文」については、熊野三山が発行する「牛王符」や「牛王宝印」などに神の名前を書き、誓いを立てるという「起請文」の説明と、水口の宇治河原村と宇田村の争論の仲裁を例に、代官所の役人でさえも村人たちの論争を鎮めるためには「起請文」を書いて神に誓うことを前提にしなければならなかったことが紹介されました。
続いて、火で熱せられた鉄棒を握り、手が焼けただれるか否かで真実を探るという「鉄火裁判」の話がされました。これについても同じく水口の宇治河原村の文書を例に、鉄火裁判を行なえば、手が火傷でただれてしまうという事実は誰もが承知しており、このような裁判は、裁判に至るまでに何日間かの精進潔斎の日を設けて、裁判を行う前に決着をさせるという知恵があったのではないかと解説されました。
最後に訴状において、放射状に署名した「傘連判状」について話されました。通説では、傘のように円状に署名することで、この訴状を書いた首謀者を隠すという意味があるとされているが、史料の中には首謀者の名前が書かれている「傘連判状」があることや、本来一揆などの場合、全員が死を覚悟して取り組むものであり、わざわざ首謀者を隠す必要があったか、また、放射状に署名することで異形の訴状をつくり、神力を得たのではないかという高島説が説かれました。
科学が発展した現代社会においても、我々の生活の中には常に神の存在がある。逆に、近世の村落の中では神の存在を完全に信じていたかどうか疑わしい事実も見受けられる。すなわち今も昔も神に対して疑わしく思いながらも信じているというアンビバレント(両義的)な感覚を持って接していたのである。
今回の講演を聴いて、近世から現代にかけて大きく神の捉え方が変わっているわけではなく、未来においても人間が存在する限り、神の存在が無くなることは無いのだろうと思いました。
報告:加藤賢治(近江学研究所 研究員)

淡海の夢2013「坂本・石垣と里坊の町写生会」開催しました。

6月22日(土)に淡海の夢2013「坂本・石垣と里坊の町写生会」を開催しました。
今回も、31名の一般の参加者に、 本学イラストレーション領域の学生さんたちも参加し賑やかな写生会となりました。
天候は台風の影響で前日までは雨が降っており、開催が心配されましたが、晴れ男の永江弘之先生のパワーで、朝の曇天もお昼から晴れて来ました。

坂本は、歴史的な社寺・里坊や石垣に彩られた、町なみが魅力的です。
参加者の皆さんは思い思いの場所で熱心に写生をされていました。


永江先生も様々な場所にいる参加者の方を見かけては、指導を行われていました。

今回は、講師として画家の北村美佳先生にもご参加いただきました。
永江先生・北村先生の分かりやすく丁寧な講評を参加者のみなさんは真剣に受けておられ、質疑応答もかわされました。

講評会の様子。 左:北村美佳先生 右:永江弘之先生

講評会の様子。 左:北村美佳先生 右:永江弘之先生

次回の淡海の夢2013写生会は10月20日(日)の堅田・湖族の郷写生会になります。
2013年度近江学研究所の公開講座についてはこちらから

今森光彦氏:特別公開講座「ニッポンの里山」開講

日時:2013年6月15日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:今森 光彦氏 (写真家・本学客員教授)
タイトル:「ニッポンの里山」

満席の熱気ある会場

満席の熱気ある会場


 6月15日(土)、特別公開講座「ニッポンの里山」と題して、写真家として国際的に活躍される今森光彦本学客員教授に登壇いただきました。
 今森教授は都市と手つかずの自然空間との中間点に人間と自然が共存するエリアが存在し、それを「里山」と概念づけて長年にわたり研究を続けてこられました。その里山の代表とも言える仰木にアトリエを構えられ、1995年に新潮社から出版された「里山物語」という写真集によって「里山」が世界から注目されるようになりました。
今森光彦氏

今森光彦氏


 近年は、NHKとの共同プロジェクトとして、日本各地にある全国の里山を訪ねる番組「ニッポンの里山 ふるさとの絶景に出会う旅」を監修され、人と生き物が共存する「里山」を美しい映像で紹介されています。
今回の特別公開講座では、今森教授が取材された全国の里山の中から特に興味を持たれた20ヶ所について、写真を中心に解説されました。
 屋久島の杉や阿蘇の放牧、新潟十日町の棚田、伊勢の神域である照葉樹林など、全国的に知られる里山を中心に絶景ポイントが紹介され、撮影時の貴重なエピソードなども織り込みながら、これらの風景を残すための努力も必要であるなど、環境保護の問題点も指摘されました。
 会場内に映し出された美しい映像は、今森教授が撮影された未公開のもので、映像が変わるたびに会場から歓声とも聞こえるどよめきがおこりました。
今森光彦氏

今森光彦氏


 
 里山は人ともに多様な生物を育む環境を備えた持続可能な空間であり、単なる美しさだけでなく、その機能を十分に理解した上で、次世代に継承していかねばならないと改めて感じました。
報告:附属近江学研究所研究員 加藤賢治
《新聞記事に掲載されました》
【びわ湖大津経済新聞】写真家・今森光彦さんが公開講座「ニッポンの里山」-成安造形大学で >>記事はこちらから
今森氏が取材に関わっているNHK番組 「ニッポンの里山」については>>>こちらから
今森光彦氏の最近の取り組み・展覧会については>>>「今森光彦ワールド」から

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