近江学研究所設立3周年記念講演 第二弾 開講しました!

講座名:「戦国近江の歴史的位置」
日 時:平成23年5月7日(土) 10:40~12:00
場 所:ピアザ淡海 ピアザホール
講 師:小和田哲男(歴史家・静岡大学名誉教授)

5月7日(土)13:30から、研究所設立3周年記念講演が行われました。近江学研究所主催の講演会としてははじめて大津市打出浜の「ピアザ淡海」のピアザホールで開催しました。
講師は歴史家で静岡大学名誉教授、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」の時代考証をされている小和田哲男先生にご担当いただきました。
この日、近江学フォーラムの会員さんも含めて300名以上が会場に来られました。
近江学研究所では常に近江の独自性について検証をしていますが、木村所長は「近江を歴史の視点で捉えると「金太郎あめ」である。歴史のどこを切っても近江が出てくる。」といつもお話しされますが、この日は小和田先生が戦国時代を切ってくださいました。話しは近江の守護六角氏と京極氏から始まり、織田信長、明智光秀、羽柴秀吉、石田三成、浅井三姉妹と続いていきます。姉川の合戦、小谷城陥落、賤ヶ岳の合戦、安土城築城などこの時代の重要な出来事はすべて近江が舞台となっています。
小和田先生はその内容を丁寧に解りやすく解説いただきました。その中で大河ドラマの時代考証についても触れられ、史実をいかに脚色するかという難しさを楽しく語っていただきました。
参加者の皆さんの多くは「大変勉強になりました」と満足そうでした。

報告:近江学研究所 研究員 加藤賢治

公開講座「滋賀の文化の特性とこれから」を開講しました。

講座名 滋賀の文化の特性とこれから
日 時 平成23年4月23日(土)10:40〜12:00
場 所 成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師 石丸正運・木村至宏(対談)
進 行 辻喜代治

成安造形大学附属近江学研究所3周年記念講演「滋賀の文化の特性とこれから」を4月23日(土)、聚英ホールで開催しました。
今回は3周年記念の第1弾として、1980年代から滋賀県の文化振興をリードされてきた美術史家で近江学研究所参与の石丸正運先生と近江学研究所所長の木村至宏先生が対談されました。

当研究所研究員の辻喜代治先生の進行で対談が開始。滋賀県の文化の独自性とこれからのあり方について、各先生が意見を述べられました。
はじめは自己紹介を兼ねて石丸先生は滋賀県立近代美術館を、木村先生は大津市歴史博物館を設立された当時の滋賀の文化の諸相をお話しされました。

その後、人口増加率や住宅の増加、光ファイバーの普及率など滋賀県の日本一が辻先生から紹介され、近年、滋賀県が文化、経済的に成長する可能性を示唆されました。
続いて石丸先生が「近江八景」の「唐崎夜雨」を例に、滋賀県の風光明媚な自然環境が中世から現代にまで絵画の画題として描かれてきたと、滋賀の文化の特性を述べられ、木村先生は、湖・山・街道という3つの要素が滋賀県に豊かな歴史文化遺産を残したとその独自性を語られました。

最後に3名の先生方は、これからの文化振興のあり方として、成安造形大学の地域貢献を例に、大学生をはじめとする若年層の活躍や、それらを支援する文化振興団体である「文化・経済フォーラム滋賀」などの活発な活動が不可欠であり、そのような活動の積み重ねが滋賀県の文化の未来をつくるとまとめられました。

成安造形大学附属近江学研究所 研究員 加藤賢治

近江学フォーラム会員限定講座を開講しました!


講座名:フェノロサと近江
日 時:平成22年12月4日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:福家 俊彦(園城寺執事長)

明治期の日本に西洋美術が流入し、日本美術の価値が低迷した状況下で、日本の「美」を再発見し、その興隆につとめたアーネスト・フランシスコ・フェノロサ(一八五三〜一九〇八)。彼は生前三井寺法明院住職桜井敬徳と出会い強い影響を受け、今もこの三井寺法明院に静かに眠る。この日は三井寺執事長の福家俊彦先生にフェノロサの活躍について語っていただきました。
 福家先生はフェノロサが明治十五年五月に東京上野で行った『美術真説』という講演を取りあげ、彼の思想を紹介されました。フェノロサはその講演で西洋絵画と日本画を比較して日本画を再評価したこと、「美術」への愛好心と鑑賞眼の育成や優れた画家を育てることを目的として美術学校設立の必要性を訴えことが評価され、その後、日本美術振興のパイオニアとして活躍したと話されました。
 三井寺には国宝の非公開建築物「光浄院客殿」「勧学院客殿」があり、貴重な文化財を保護しながらできうる範囲で一般に公開するという日本美術の「粋」を啓発する活動を続けられていますが、湖都大津と日本の「美」をこよなく愛したフェノロサの意志がこのような取り組みに受け継がれているように感じました。

公開講座「日本画家から見た近江の風景」を開講しました

講座名 日本画家から見た近江の風景
日 時 平成22年11月20日(土)10:40〜12:00
場 所 成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師 大野俊明(成安造形大学教授)

江戸時代初期に成立した近江八景に代表される近江の風景を、これまで現代の日本画家がどのように表現してきたのか、数多くのスライドを用いての紹介から講座はスタートしました。池田遥邨・下保昭氏をはじめとする日本画家を取り上げられ、その作風の特徴や制作手法など、長年の知己でもある大野教授ならではの興味深いお話を聞くことができました。
続いては大野教授ご自身のこと。本学が湖西に開校されたことが近江を描くようになったきっかけとなったこと、また琵琶湖や三上山、比良山などをモチーフとする作品やスケッチをスライドを用いて紹介されました。写生を行なう場所探しの苦労や、時刻や季節によってその表情を変える風景のすばらしさなど、個々の作品制作の裏側にも触れていただきました。
現在も近江での取材は進行中とのことで、近い将来、琵琶湖十景というような形でまとめてみたいとおっしゃっておられます。果たして何処がどのように描かれるのか、今から大変楽しみです。

近江学研究所研究員 小嵜善通

近江学フォーラム会員限定講座「古地図に探る近江 地図に探る滋賀」を開講しました。

講座名:古地図に探る近江 地図に探る滋賀
日 時:平成22年11月13日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:松井善和(県立長浜高校校長・国際地図学会会員)

現在、県立長浜高校校長でおられる松井善和氏は、若いころから古地図を収集されてきました。そのきっかけは小学校のころお父さんから古い地図をもらい、常にそれに慣れ親しんできたことから始まります。大学では美術教育を専門とされていましたが、地理研究室にも出入りし、美術だけでなく地理の教員資格も習得されておられます。本格的に古地図のコレクションを始められたのは、教職につき収入を得だしたころからで40年近くになり、コレクションのために東京はもちろん、遠く北海道まで足を運ばれることもあるそうです。
 古地図のコレクションの話から始められた講演では、いたるところで古地図に対する思い入れが聞く者に伝わってきました。会場には最も大事にされている大判の近江の古地図二点が展示され、「地図を読む」ことの実践に始まり、近江から滋賀へ時代と共に変遷する有様を丁寧に、具体的にお話しいただきました。特に廃藩置県の混乱期の話や、滋賀県の市町村合併の歴史の中での変化や失われた地名の話では、その地域の聴講者も多く非常に興味深く聞きいっておられました。地名は単にそれだけでなく、受け継がれてきた歴史や文化そして人々の生活までも関わっており、残し継がれていくことの大切さを改めて認識させられました。

近江学研究所研究員 辻喜代治

近江学B 「比叡山とふもとの文化」坂本フィールドワーク

比叡山とふもとの文化」坂本フィールドワーク
講師:近江学研究所研究員 加藤賢治
平成22年10月30日(土)

この日は午後1時に最澄が誕生したといわれる坂本「生源寺」に集合し、大師堂をお借りして比叡山と坂本の文化の概略をレクチャー、その後坂本界隈をフィールドワークしました。
案内は加藤が担当しました。
台風の影響が心配されましたが、何とか雨に降られることなく散策ができました。
レクチャーのはじめは比叡山の思想と修行、そしてそこで研鑽を積んだ高僧の話しを中心に行い、後半は穴太積や里坊、滋賀院、慈眼堂、東照宮等のふもとの文化について解説しました。

解説の後、2時半に生源寺を出発、牛尾山、石積みを見ながら滋賀院へ向かいました。滋賀院では「忘己利他」(もうこうりた)という最澄の教えや、千年の法灯、小堀遠州作といわれる庭園、涅槃図など見学しました。その後、家康・秀忠・家光の徳川三代の側近として仕えた天海大僧正の墓所である慈眼堂、13体仏、日吉大社をめぐって4時に現地で解散しました。

「学生たちは学外でのフィールドワークということで、日本仏教の中心地でじかにその文化に触れることができ満足そうでした。これを機会により日本文化に関心を持ってくれればと期待しています。

公開講座「琵琶湖観光の過去・現在・未来」開講しました

講座名:琵琶湖観光の過去・現在・未来
日 時:平成22年10月2日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:中井保氏(株式会社 琵琶湖汽船 代表取締役社長)

前回に引き続き、少し前の歴史として、琵琶湖観光の今と昔が紹介されました。お話しいただいたのは琵琶湖汽船株式会社 代表取締役社長の中井保先生です。120年を超える歴史を誇る琵琶湖汽船株式会社の貴重な映像と写真を中心にその歴史が紹介されました。
 始めは湖上交通として鉄道連絡船や運送業として活躍していた琵琶湖汽船は、明治27年(1894)から方向性を転換、湖上遊覧船を就航させ、大正3年(1914)には「竹生島めぐり」が開始、昭和5年(1930)にマキノスキー場開設に伴ってスキー船が就航するなど早くも琵琶湖観光時代に突入した。昭和57年(1982)には大型外輪船ミシガンが、平成2年(1990)には大型客船ビアンカが就航し、湖上に異空間を演出するという新しい観光のあり方が提案された。そして、平成21年(2009)にエコクルーズ船megumiが就航し、琵琶湖にとけ込み、琵琶湖をじっくりと眺めるという形式の琵琶湖観光が今まさに始まった・・・。中井先生は琵琶湖汽船の歴史を辿りながら琵琶湖観光を語られ、まとめとして滋賀県の観光のあり方を問う観光論にまで及びました。
 最後に琵琶湖観光の発展のためには、生物多様性をはじめとして琵琶湖が持つ特有の観光資源の価値を再認識し、「琵琶湖ブランド」を確立して世界に発信すべきであると熱く語られました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

公開講座「旧江若鉄道と湖西線」開講しました

講座名:旧江若鉄道と湖西線
日 時:平成22年9月25日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:木津勝氏(大津市歴史博物館 学芸員)

今回は大津市歴史博物館学芸員の木津勝先生に今から40年前というちょっと昔の近江の話をしていただきました。木津先生は平成18年、大津市歴史博物館の企画展「ありし日の江若鉄道-大津・湖西をむすぶ鉄路(みち)-」を企画され、この日はその企画展を回想しながら、解説いただきました。
 講演では、鉄道ファンや江若鉄道株式会社のOBの方々、また周辺住民から寄せられた貴重な映像や写真がたくさん紹介され、会場全体が懐かしい雰囲気に包まれました。
 話は湖西の鉄道計画に始まり、立ち消えになった鉄道計画や鉄道が敷かれるまでの住民の夢、議会での議論など湖西の鉄道に対する周辺の人々の想いが話され、その結果として誕生した江若鉄道株式会社の歴史が紹介されました。
 最終的には近江今津まで開通する江若鉄道ですが、江州(滋賀)と若州(福井)を結ぶという社名にまでうたわれた夢がかなわなかったことも事実で、今も昔も大きな資本が必要となる鉄道敷設の難しさも述べられました。その夢は現在JR湖西線というかたちで実現していますが、今もなお今津と若狭方面を結ぶ鉄道の計画があることが紹介され、湖西の鉄道がまだまだ成長し発展するという夢が確認できました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

近江学フォーラム会員限定講座「近江の東海道と中山道」開講しました

講座名:近江の東海道と中山道
日 時:平成22年7月3日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:八杉淳(草津市立草津宿街道交流館館長)

東海道と中山道が交わる交通の要衝「近江」。近江はその道を通じて多くの「ひと」や「もの」とともに「文化」や「情報」が行き交い発展しました。この日は草津市立草津宿街道交流館館長の八杉淳先生にご登壇いただき、東海道、中山道を中心とした街道と近世宿場町の機能について詳しく語っていただきました。
 古代から近江は北国と東国、西国を結ぶ三叉路にあたり、東海道・中山道・北国街道・北国脇往還・若狭街道・御代参街道など街道が琵琶湖を囲むように集中していた。現在でもJR琵琶湖線・国道一号線・瀬田唐橋・東海道新幹線・名神高速道路・京滋バイパス・近江大橋が瀬田川に架かっており、まさに交通の要衝であることがわかる。また、宿場町の機能として大名の宿泊施設であった本陣、脇本陣や一般の旅人が利用した旅籠の様子、そして草津宿から石部宿、石部宿から水口宿までの物資運搬の流れなど、当時の人と物の行き来について詳しく紹介していただきました。東海道と中山道が交差する草津宿を中心として、たくさんのスライドを介してわかりやすく講義いただきました。

近江学研究所研究員 加藤賢治

近江学フォーラム会員限定講座「湖北の仏像」開講しました

講座名:湖北の仏像-平安時代から鎌倉時代にかけて-
日 時:平成22年6月5日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:高梨純次(滋賀県立近代美術館 学芸課長)

6月5日(土)近江学フォーラム会員限定講座「湖北の仏像-平安時代から鎌倉時代にかけて-」を開講しました。講師は近江学研究所の学外研究員で滋賀県立近代美術館学芸課長の高梨純次先生です。京都のご出身ですが、大学卒業後、滋賀県立琵琶湖文化館の学芸員として滋賀県に来られ、滋賀県立近代美術館では設立準備から現在までご活躍されてきました。ご専門は日本美術史。中でも仏像彫刻史を中心として研究され、滋賀県の仏像研究の第一人者です。
この講座では湖北の仏像彫刻を中心に語っていただきました。「湖北には有名な十一面観音を中心に非常に優れた彫刻が多く残されているが、その優れた完成度をみると小さな工房で仏師がコツコツ制作していたとは考えにくい。おそらく奈良時代、湖北地域に国家的な規模の巨大な官営工房があったと考えられる。そして、平安、鎌倉時代にもそれを受け継ぎ、秀作を量産していた。」と多くの文化財のスライドを紹介しながらわかりやすく紹介いただきました。
また、時代や宗派などによる仏像の形式の違いなども解説いただき、新たな仏像鑑賞の方法を教えていただきました。
最近は歴史文化にスポットがあてられ古寺仏像鑑賞も若者の間で密かなブームとなっています。会員限定講座ということで内容的には難しいところもありましたが、参加者は十分に興味を持って聴講されていました。

報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

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