おうみブログ
近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。
フィールドワーク
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フィールドワーク
5月21日(土)、坂本公民館2階大会議室で第13回近江歴史回廊大学「近江の歴史を築いた人々」クラスの授業を行いました。
この日はこのクラスの2日目の授業日で、私は3時間目の授業を担当しました。内容は坂本周辺のフィールドワークです。
はじめ30分程度プロジェクターで坂本周辺の歴史スポットの紹介とその背景にある宗教民俗を解説しました。その後、屋外へ出て慈眼大師天海大僧正が建立した滋賀院門跡、その墓所である慈眼堂、近江出身の幕府お抱えの大工の棟梁甲良宗広が日光東照宮の試作品として建設したといわれる日吉東照宮を見学しました。
この授業は天海大僧正にスポットを当て、信長によって壊滅的な打撃を受けた比叡山延暦寺を家康の腹心として復興に務めたことや家康の死後東照大権現として日光東照宮を建設した偉業などを中心に解説しながら天海ゆかりの遺跡を巡りました。
この日は初夏の蒸し暑さもありましたが、30名の熱心な受講生の皆さんは最後まで熱心に勉強されていました。
報告:附属近江学研究所 研究員 加藤賢治
草津川の上流、鶏冠(けいかん)山、金勝(こんぜ)山、竜王山と連なる山々は金勝アルプスと呼ばれ親しまれています。その中でも中心となる竜王山に登ってきました。
近江には竜と名の付く山や地名がたくさんありますが、これは農耕と結びついた水の神である竜にまつわる信仰によると考えられています。その代表である竜王山には、かつて栄えた仏教文化の遺物が多く残され、また、山頂付近には風化した奇岩があらゆるところに露出するという神秘的で特異な風景を醸し出しています。用意されています。
魅力たっぷりの登山路は大津市上田上(かみたなかみ)の上桐生のバス停から始まります。
はじめに待ってくれているのが砂防ダムとして明治15年にオランダ人の手によって建設された「オランダ堰堤」。近代建築の遺産として大切に残されています。
次に現れたのが通称「さかさ観音」呼ばれる磨崖仏です。巨岩に彫られた三尊形式の磨崖仏が何らかの力によって壁面がずり落ち逆さの位置で落ち着いたものです。
そこを過ぎ、第二名神高速道路をくぐって山に入っていくと、狛坂廃寺跡に出ます。そこではかなり古い年代を感じさせる堅牢な石垣と、「狛坂磨崖仏」という県内で最も著名な磨崖仏に出会いました。奈良時代に遡る作風であるとされていますが、様相が日本独自のものとは異なり、朝鮮文化の影響を強く持っているため、じっくりとこの磨崖仏に対峙すると、異国の山林に迷い込んだ錯覚に陥りそうです。
そこを後にして、山頂を目指します。徐々に風化した奇岩が見え始め、山頂への分岐点を過ぎると、茶沸観音と呼ばれる岩に刻まれた可愛い石仏と対面しました。そこから山頂までの間に重ね岩と呼ばれる摩訶不思議な自然造形物を見ることが出来ました。
いよいよ山頂です。山頂付近には八大龍王をお祭りする小さな祠があり、この龍王に因んでこの山を竜王山と名付けたと考えられています。
そこから尾根筋を真っ直ぐ歩くと「金勝寺」(こんしょうじ)に至ります。今回はこの奈良時代から伝わる古寺まで足をのばさず、来た道を戻って鶏冠山に繋がる尾根道を早足であるきました。途中に眺められる奇岩・巨岩はかなりのもので、中でも「耳岩」や「天狗岩」は特に大きく、目を引きます。
この日は天候が悪く、帰路についたと同時に雷雨に遭い、ずぶ濡れになりましたが、この日見たものはすべてが新鮮で魅力的でした。おかげさまで調べものが増えました。
成安造形大学附属近江学研究所 研究員 加藤賢治
比叡山とふもとの文化」坂本フィールドワーク
講師:近江学研究所研究員 加藤賢治
平成22年10月30日(土)
この日は午後1時に最澄が誕生したといわれる坂本「生源寺」に集合し、大師堂をお借りして比叡山と坂本の文化の概略をレクチャー、その後坂本界隈をフィールドワークしました。
案内は加藤が担当しました。
台風の影響が心配されましたが、何とか雨に降られることなく散策ができました。
レクチャーのはじめは比叡山の思想と修行、そしてそこで研鑽を積んだ高僧の話しを中心に行い、後半は穴太積や里坊、滋賀院、慈眼堂、東照宮等のふもとの文化について解説しました。
解説の後、2時半に生源寺を出発、牛尾山、石積みを見ながら滋賀院へ向かいました。滋賀院では「忘己利他」(もうこうりた)という最澄の教えや、千年の法灯、小堀遠州作といわれる庭園、涅槃図など見学しました。その後、家康・秀忠・家光の徳川三代の側近として仕えた天海大僧正の墓所である慈眼堂、13体仏、日吉大社をめぐって4時に現地で解散しました。
「学生たちは学外でのフィールドワークということで、日本仏教の中心地でじかにその文化に触れることができ満足そうでした。これを機会により日本文化に関心を持ってくれればと期待しています。
7月10日(土)近江学研究プロジェクト「里山〜水と暮らし」の前期最終授業が行われました。
この日は11:00〜12:30現地(仰木JA多目的会議室)で聞き取り調査を行いました。参加学生14名が4班に分かれ、ご協力いただいた4名の仰木(平尾地区)の方々から棚田のことや昔の生活のことなど聞かせていただきました。
棚田の水争いの話しや屋号のこと、平尾地区に伝わる伝承、仰木祭りのこと、戦後の生活のことなど話しは尽きず、1時間半があっという間に終わりました。
午後は棚田に向かい、前回の続きで大倉川から取水する北山水路の最終地点までをたどりました。この地点の田を耕作する方に案内をいただき、複雑に配置される田に注がれる水の経路を確認し、それぞれ学生たちが地図でチェックして行きました。
学生たちはこの日を含め成果をレポートにまとめ提出することが最終の課題です。我々研究員はその報告を受け、後期の研究プロジェクトに活かして行きたいと考えています。日を重ねるごとに新しい発見があります。仰木地区は研究素材の宝庫です。ますます研究を深め研究成果を発表したいと思います!次のフィールドワークが楽しみです。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
7月5日、今年の仰木森林学がスタートしました。これは成安造形大学が位置する仰木地区の山林をその所有者である仰木地域の森林生産組合の方々とともに森を守るという活動です。昨年まではプロジェクト特別実習として参加していましたが、今年度はボランティア活動として教職員にも輪を広げて参加させていただきました。残念ながら初日の本学の参加者は少なくなりましたが、約30名の上仰木・辻ヶ下生産森林組合の役員さん会員さんとともに汗を流しました。
今回の内容は山の尾根を歩き、山林の境界線を一つ一つ確認し、山林の状況を踏査することでした。梅雨の大雨のさなかで天候を心配しましたが、何とか晴れ間も見え山稜はすがすがしい空気に包まれました。
次回は7月25日です。間伐作業に入ります。参加されたい方は近江学研究所まで!
近江学研究所研究員 加藤賢治
5月3日「仰木祭」の見学を行いました。研究プロジェクトの一環で先ず仰木という村落を知るため、その代表的な祭礼である仰木祭りを体感しました。授業の登録者の他にも参加者があり、総勢20名で見学を行いました。引率者はプロジェクト担当教員大岩先生、永江先生、蔭山先生と私加藤です。午後1時45分JRおごと温泉駅に集合し、仰木へ向かいました。途中で仰木の歴史や中心となる小椋神社の解説を入れました。
今回のポイントはなぜ「仰木祭」が今に残っているのかを考えるということです。必要なければ祭礼もなくなっているはずです。この祭りはかつて仰木の地に11年間すんだといわれる源満仲の伝説に基づいています。仰木は近世以降四ヶ村と呼ばれ上仰木、辻ヶ下、平尾、下仰木の四つの村に分かれ、水利の問題で様々な争いごとがあったといわれています。
満仲は義経や頼朝の先祖であり、清和源氏の祖ともいわれる武将です。仰木では神様として扱われています。もしかすると四ヶ村の水利争いを満仲の伝承が一つにまとめる働きをしていたのではないかとも考えられます。
昭和になっても所々祭りの形式は変化してきています。今年度から実施する仰木研究プロジェクトは「水と暮らし」をテーマに様々な方面から村落を調査していきます。伝承の役割など何か見えないものが見えてくるような期待でいっぱいです。
午後8時、神輿が小椋神社に戻り、祭りは終了です。学生たちは少し疲れた様子でしたが、それぞれが何かを発見したように見え満足そうに思えました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
4月24日(土)、今年度の近江学研究所の最も注目すべき取り組みである研究所独自の研究「里山〜水と暮らし」がスタートしました。この研究はプロジェクト演習A1・A2という授業名で授業の一環として行われます。当日は10名の学生が021教室に集まり、近江学研究所研究員の大岩先生、永江先生、蔭山先生、そして私加藤がそれぞれこの研究の概要をレクチャーしました。
また、参加した学生は一人ずつ自己紹介しを交えながら、研究への意気込みを語ってくれました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
12月5日(土)大学がある地元「仰木」の村落をフィールドワークするプロジェクト科目が最終日を迎えました。
この科目は、4月から全8回を数え、仰木村落フィールドワーク、仰木祭りの見学、田植え、稲刈り、間伐材の伐採、木工工作、山林測量など様々な体験を通して自分や地域、社会を見つめ直すという目的で開講されています。
この日は最終回ということで、参加した学生は2時間目にI棟プレゼンテーションルームで自分が仰木のフィールドで得たもの(収穫)を一人一人披露しました。
その後、午後から仰木でお世話になりました方々を招待し、「収穫祭」と題して、懇親会を開催しました。
大学内の自然食カフェレストラン「結」の釜戸で、学生たちがつくった仰木棚田米を炊き、担当教員の小林はくどう先生が仰木の野菜と猪肉をふんだんに使った名物「はくどう鍋」を準備され、みんなでおいしくいただきました。
特別講師の蔭山歩先生も「仰木には大切に守られてきたものがたくさん残っています。それらに気づいた学生さんたちはこの授業の中で何か大きなものを得たことと思います」とあいさつされました。
仰木の皆さんも、「森林保護活動も含めこのような活動を閉ざすことはできない。みんなで協力して続けていきましょう」と次年度へ向けての意気込みも語られました。
報告:近江学研究所 研究員 加藤賢治
11月22日(日)仰木森林学(全4回)の授業もいよいよ最終日となりました。1回目は山林フィールドワーク、2回目は山林間伐作業、3回目は切り出した間伐材を利用した木工作品制作と続き、最終回は山林の面積を計測する測量実習が行なわれました。
専門の県の職員さんから直接ご指導いただき、地元の方々と一緒に3班に分かれて測量作業を行ないました。専門の機材(望遠スコープ)を使っての作業。慣れるまでは戸惑いますが、慣れれば木々の間隙をぬってポイントとなる赤白の棒を探すという難しい作業も徐々に快感に変わっていきました。
午前中、この測量実習を行い上仰木の自治会館で昼食、その後、各班が測量結果を発表して、仰木森林学の締めくくり「修了式」へ。
修了式では上海からの留学生が「私の生まれ育った上海には仰木のような山がなく、この4回の授業は本当に刺激的でした。森林を守ることの大切さ、またその苦労が、そして森林を守る地元の方々の熱い情熱がこの体験によってよくわかりました。これからもこのような活動に参加したいです」とコメントをくれました。
4回の授業に際して、車での送迎や、お昼ご飯の準備、お土産まで戴くなど地元の方々に本当にお世話になりました。ありがとうございました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
11月21日(土)、講座「近江学」の学生さん対象の補講として、大津市歴史博物館の企画展を見学してきました。
企画展は「湖都大津 社寺の名宝展」と題され、大津市内10ヶ所の社寺が保有する仏像と神像を中心とした文化財を集めて開催されていました。
今回の見ものは、展示の方法。普通の展覧会であれば、社寺ごとに文化財を並べて展示するところですが、今回は仏像の種類ごとに分けて展示がされていました。いわゆる仏像というものは、○○如来、○○菩薩などというように、数え切れないほどの種類に分かれています。これは、何千巻あるといわれるお経に基づいて仏像が生まれるからといわれています。このことが仏道に入ってない我々にとっては非常に複雑でわかりにくくなっています。
そこで、今回の展示は、仏像を如来部、菩薩部、明王部、天部と4つの種類に分け、例えば如来部であれば、釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来など如来さんを固めて展示し、如来部に属する仏様の特徴が詳しくわかりやすく解説されるようになっています。続いて菩薩部は聖観音菩薩、弥勒菩薩、千手観音菩薩など、各社寺の菩薩部の名宝が並ぶという感じです。
今回の展覧会の図録も本学の卒業生らが仏像のイラストレーションを描いて親しみやすく編集され、大きな反響を呼んで話題となりました。残念ながら展覧会は11月23日で終了となりますが、図録は販売されますので購入できます。是非ご一読ください!
学生たちはこの展覧会を企画されました大津市歴史博物館の寺島典人学芸員の解説を受け、その後じっくり見学をしました。仏像・神像の不思議に触れ、???をたくさん感じながら、日本仏教の一端を垣間見ることができました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治