講師:武覚超 (叡山学院教授 比叡山延暦寺執行)
日時:2009年5月16日(土) 10:40~12:00
場所:成安造形大学 本部棟三階ホール

日本仏教の母山といわれる比叡山は三塔十六谷と呼ばれ、東塔・西塔・横川の三塔を中心に多くの堂社僧坊が点在しています。その比叡山の道なき道を歩き、長い時間をかけて丁寧に研究を続けてこられた叡山学院教授・比叡山延暦寺執行の武 覚超先生にその発展の歴史を語っていただきました。
伝教大師最澄が唐の天台山から持ち帰った思想は、法華経をもとにした一乗(ひとつの大きな乗物)思想で、人を含むすべてのものに仏性があり、仏になれるというものであった。そしてその思想を日本国中に広めるため、仏塔をはじめとする堂社が建てられていった。その中心地となった比叡山には一乗止観院(現在の根本中堂)をはじめとして、伝教大師最澄の思想にもとづいた堂社が次々と建てられた。前半はこのように三塔が成立していった過程を解説いただきました。後半は最澄が記したその堂社で修行を行う僧侶のための心得とも言うべき「山家学生式(さんげがくしょうしき)」の内容を解説いただきました。「国宝とは何物ぞ。宝とは道心なり、道心ある人を名づけて国宝となす・・・」という冒頭の一説を紹介され、金銀財宝といった物質が国宝ではなく、利己を捨て他を利する慈悲の心を道心と言い、これこそが国宝であるという最澄の思想が熱く語られました。フォーラムの会員限定講座となった今回の講座。専門的な難しい内容もありましたが、内容に満足そうな顔もたくさんありました。

報告者:近江学研究所研究員 加藤賢治