おうみブログ

近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。

公開講座

特別公開講座『琵琶湖の景観』を開講しました。


日時:2013年4月27日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:金田 章裕 氏
タイトル:「琵琶湖の景観 〜水辺の文化的景観をめぐって〜」

金田先生のご紹介をする木村所長

金田先生のご紹介をする木村所長


 琵琶湖とそれを取り囲む山々という豊かな自然環境や千年を超える歴史文化を有する近江には景観をめぐって様々な取り組みが行なわれています。
 この日は、『文化的景観—生活となりわいの物語』の執筆者で人間文化研究機構・機構長で前京都大学副学長の金田章裕先生に近江の景観について語っていただきました。


 講演では、先ず近世の「近江八景」が水辺の風景として先駆的であったという話から始まり、2005年の景観法の試行、文化財保護法の改正のことなど、最近の景観についての捉え方を解説いただきました。そして、地域において人々の生活や生業、風土等が織り込まれた文化景観を重要文化的景観として、2006年に日本で始めて滋賀県の「近江八幡の水郷」が選定されたことなどが紹介されました。
 全国に35ヶ所ある重要文化的景観をスライドで紹介され、最後に沖縄県「竹富島」の「(土地)を売らない、汚さない、(美観を)乱さない、(集落景観、美しい自然を)壊さない、(伝統的祭事行事を)生かす」という住民によって主体的につくられた「竹富島憲章」について話され、「重要文化的景観をつくり、継承していくためにはそこに暮らす多くの人々の思いが一つにならなければならない」と熱く語られました。
 滋賀県には水辺に暮らす人々が祭礼とともに守り続けてきた文化的景観がたくさんあります。金田先生から様々なキーワードをいただき、それぞれの地域で暮らしに息づく景観が意識され、そこに暮らす人々が協力して景観を守ろうとする時、かけがえのない風景が後世に残されるのだと実感しました。
報告:近江学研究所 研究員 加藤賢治

2013年度附属近江学研究所 公開講座 応募申込受付中

2013年度附属近江学研究所 公開講座 応募申込受付中です。
附属近江学研究所の公開講座は、2013度も、日本を代表する研究者を招聘しての特別公開講座や、昨年に引き続いての連続公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」、そして仰木・坂本・堅田を舞台とした写生会など多彩なラインナップとなっております。
ぜひお申込ください。
 <2013年度近江学研究所 公開講座>
【特別公開講座】
   4月27日(土)「琵琶湖の景観」
  講師:金田 章裕氏(人間文化研究機構長・前京都大学副学長)  応募締切日 : 4/12(金)
   6月15日(土)「ニッポンの里山」
  講師:今森 光彦氏(写真家・本学客員教授)  応募締切日 : 5/31(金)
【連続講座 近江のかたちを明日につなぐ】
   5月11日(土)「近江~食のかたち -和菓子処藤屋内匠-」
  講師:遠藤 仁兵衛氏(和菓子処 藤屋内匠 十三代目店主)×加藤 賢治(本研究所研究員)
  応募締切日 : 4/22(金)
   7月20日(土)「近江~受け継ぐかたち① -彦根仏壇・株式会社井上-」
  講師:井上 昌一氏(井上仏壇店 株式会社井上 代表取締役)×石川 亮(本研究所研究員)
  応募締切日 : 7/5(金)
   9月14日(土)「近江~受け継ぐかたち② -北近江の地酒・冨田酒造-」
  講師:冨田 泰伸氏(冨田酒造有限会社 十五代目蔵元)×加藤 賢治・石川 亮(本研究所研究員)
  応募締切日 : 8/30(金)
   11月30日(土)「近江~屋根のかたち -檜皮葺-」
  河村 直良氏(株式会社河村社寺工殿社 代表取締役)×小嵜 善通(本学教授・本研究所研究員)
  応募締切日 : 11/15(金)
   12月21日(土)「近江~地域文化のかたち -『風と土の工藝』にみる地域活動-」
  講師:清水安治氏(滋賀県職員・一級建築士)×辻喜代治(本学教授・本研究所研究員)
  応募締切日 : 12/6(金)
【連続講座(写生会) 淡海(おうみ)の夢2013】
   5月25日(土)「仰木・棚田写生会」
  講師:永江弘之(本学准教授・本研究所研究員)ほか本学教員が参加予定
  応募締切日 : 5/10(金)
  6月22日(土)「坂本・石垣と里坊の町写生会」
  講師:永江 弘之(本学准教授・本研究所研究員)ほか本学教員が参加予定
  応募締切日 : 6/7(金)
   10月20日(日)「堅田・湖族の郷写生会」
  講師:永江 弘之(本学准教授・本研究所研究員)ほか本学教員が参加予定
  応募締切日 : 10/4(金)

2013-04-03T13:48:49+09:002013年4月3日|お知らせ, 公開講座|

ブライアン・ウィリアムズ氏と永江弘之研究員の公開講座を開催!

ブライアンさん

ブライアンさん


公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」第5弾を開講しました。
本日、附属近江学研究所主催の「近江のかたちを明日につなぐ」をテーマに
連続講座の第5回目として「風景のかたち~琵琶湖の原風景」を開講しました。
曲面絵画の風景画を発表する一方で、風景画家の立場から荒らされていく自然を憂い、
自然保護再生を訴えてこられたブライアンさんを講師にお招きし、
本学教授で風景画家である永江弘之研究員と対談いただきました。
ブライアンさんは、生物学的な視線で、長年、日本や世界を旅する中で出会った風景を読み解き、
その自然環境の豊かさがどこからくるものなのかを、語られました。

また、永江先生との対談では、身振り手振りを交えて、絵を描く楽しみが伝わるお話で盛り上がり、
ブライアンさんの幅広い魅力が伝わる講演になりました。


講演後、13:30からは、展覧会場ギャラリーアートサイトにて、ギャラリートークを行いました。
ブライアンさんの作品への想い、取り組み方、その作品ごとのエピソードを笑いやメッセージ性のある言葉で
お話頂きました。
また、サイン会も開催し、一日を通して、充実した講座となりました。


また、後日詳しいご報告を、ブログで行います。
日時:2012年12月1日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:ブライアン・ウィリアムズ氏 (風景画家)
対談:永江 弘之氏(本学准教授、本研究所研究員)
タイトル:「風景のかたち~琵琶湖の原風景」

公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」岩田康子氏と大岩研究員が対談しました。

 本学内で人気のカフェテリア「結」の経営者で、有限会社ブルーベリーフィールズ紀伊国屋代表取締役の岩田康子氏を講師に迎え、ご自身の体験をもとにした「ローカルフード」について語っていただきました。
 前半の講演では、滋賀県に移住し、ブルーベリーを栽培始められた当時の話から、かまどでご飯を炊くもてなしの発見、子供達に食べる楽しさをしらせること、そしてお手伝いのおばさまが話してくれた小さな幸せの話など、岩田氏が日常感じておられる食育や価値観について熱心に語っていただきました。
 後半は、近江学研究所大岩剛一研究員が聞き手となって対談が行われました。
大岩研究員は東京、岩田氏は京都と出身地は異なりますが、お二人は同世代であり、高度経済成長とともに、常にお金が出回り、ものにあふれた時代に成長されたとのこと。お互いに大量生産大量消費というこの社会の問題点を話されながら、食べ物に対しては特に、安く、簡単に手に入るものは基本的に体に悪いと警鐘を鳴らされました。
 すでに現代の経済社会の中で生活している我々は、どうしても安価で、手に入れやすいものに目が移ってしまう。難しい問題ではあるが、国民全員が本当に大切な次世代の価値観を持つことができるかということで、そうなれば社会も変わっていくのでは、と対談の最後を締めくくられました。

前半は岩田康子氏の講演が行われました。

前半は岩田康子氏の講演が行われました。



大岩剛一研究員

大岩剛一研究員




日時:2012年11月10日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:岩田 康子氏 (有限会社Blueberry Fields紀伊國屋代表取締役)
対談:大岩 剛一氏(本学教授、本研究所研究員)
タイトル:「食のかたち~ローカルフード」

淡海の夢2012「坂本・石垣と里坊の町写生会」開催しました!

10月27日(土)に「淡海の夢 坂本・石垣と里坊の町写生会」を開催しました。
あいにく、2日目(28日(日))は、雨天のため中止になりましたが、
27日は秋晴れの絶好の写生日和になり、28名の方が受講されました。
講師は、永江研究員(イラストレーション領域准教授)と、画家の井上よう子非常勤講師。

開会に合わせて、永江研究員より坂本の写生ポイント解説があった後、
滋賀院門跡前や、慈眼堂付近、日吉大社前など、思い思いの場所での写生を行いました。



講評会は、最澄が生まれたお寺である生源寺境内にある別当大師堂にて行ないました。
一人一人の作品について、講師より的確なアドバイスがあり、みなさん熱心に耳を傾けられていました。

左 井上よう子講師 右 永江弘之研究員

左 井上よう子講師 右 永江弘之研究員

2012-10-29T16:08:27+09:002012年10月29日|おうみブログ, お知らせ, フィールドワーク, 公開講座|

公開講座「魂のかたち~木地師の里のものづくり」を開講しました。


滋賀県東近江市の永源寺から山深く進むと、日本の木地師の発祥の地であるといわれる
小椋谷(蛭谷・君ヶ畑)がある。
ここは平安時代に天皇になれなかった悲運の親王、惟喬親王が隠棲した場所とされ、
親王が山の民に手挽ロクロの技術を教えたという伝承が残っています。
この日は、はじめに加藤研究員が、惟喬親王伝説や、
全国に散らばった木地師を座的な組織に取り入れネットワークを構築していたという
近世の「氏子狩制度」について解説。
また、小椋谷をフィールドワークした記録を写真で紹介しました。
つづいて、小椋谷で一旦途絶えていた木地業を復活させ、
唯一木地師としてこの技を独学で続け、木地を制作されている小椋昭二さんを招き、
工芸分野を専門とする辻喜代治研究員が木地の魅力についてインタビューしました。

講師 小椋昭二氏

講師 小椋昭二氏


辻喜代治 本学教授

辻喜代治 本学教授


話は、木地業を復活させようとした動機から始まり、木の種類や、
その制作の過程、販売方法まで多岐にわたりました。

インタビューの中で小椋さんは「すべてが苦労です」と試行錯誤の中での仕事を振返りながら、
「木はという素材には一つ一つ違った表情があり、出来上がった作品にもそれぞれ個性がある」
「貴重な古材や表情が面白い素材に出会うと興奮し、ロクロをまわすのが楽しみになる」など、
木工品の魅力や木地師としての喜びが語られました。
 最後に辻研究員は「均一で同じ形のプラスチック商品が蔓延する中、
唯一これのみという手作りの木製品を是非とも購入して、その美しさを味わってほしい。
またそういう価値を持つ消費者を増やしていく必要がある」と、
手仕事やそれによってつくられる物の大切さを会場に投げかけました。


日時:2012年9月15日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:小椋 昭二氏 (木地師)
対談:辻 喜代治氏(本学教授、本研究所研究員)
コーディネーター:加藤 賢治(本研究所研究員)
タイトル:「魂のかたち~木地師の里のものづくり」

近江学フォーラム会員限定講座 第2回「葛川の太鼓廻し」を開講しました!

 7月21日(土)、第2回目の近江学フォーラム会員限定講座を開催しました。
講師に大津市歴史博物館学芸員で近江学研究所の客員研究員である和田光生先生を迎え、
京都と若狭を結ぶ渓谷に位置する葛川坊村の明王院で行われる
「太鼓廻し」について講演いただきました。


 毎年7月18日に行われる葛川明王院の「太鼓廻し」という行事は、葛川地域の民俗行事であると同時に、比叡山延暦寺で行われる千日回峰行という僧侶の修行の一部でもあるという非常に稀な形式をとる祭礼です。和田先生は、その起こりが千日回峰行の礎を築いた相応和尚(そうおうかしょう)(831〜918)にあるとして、相応の人物像を資料に基づいて解説されました。
 伝承によると、相応和尚は法華経の「常不軽菩薩品」に基づき、毎日花を根本中堂に捧げるという行為を繰り返し、そこから長期間、山中を闊歩することで悟りを得るという回峰行にたどり着いた。その修行の起源は、比叡山ではなく比良山の麓、葛川の坊村「三の滝」で、山中での修行を支えてくれる不動明王を観想していた際、滝壺に不動明王が現れ、それに相応が飛びつき抱きついたところ桂(かつら)の古木であった。この古木で不動明王を彫り、安置したのが明王院の始まりである。

 和田先生はこの伝承が鎌倉時代前期の高僧である慈円によって書かれたと言われる『葛川縁起』によるところが多くあるとしながら、この葛川明王院から比叡山の千日回峰行が始まったという意義について話されました。そして、千日回峰行を行う行者がその通過儀礼として、この太鼓廻しに参加するということ、そして、その行事を葛川地区の住民が支えているという関係性が、この民俗行事の注目すべきところであると述べられました。
 また、先日18日の夜に行われた「太鼓廻し」の写真を投影され、この行事の全貌を臨場感あふれるスライドショーで紹介していただきました。来年の7月18日は是非とも葛川を訪れたいと思いました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
日時:2012年7月21日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:和田 光生氏 (大津市歴史博物館 学芸員)
今年開催された「葛川の太鼓廻し」の京都新聞の記事はこちら
 

公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」第2弾近江上布開講!


附属近江学研究所主催の「近江のかたちを明日につなぐ」をテーマに
連続講座の第2回目として「まとうかたち~湖東の織物-近江上布」を開講しました。
滋賀県の湖東地域は、長浜の絹織物(ちりめん)、とならんでこの地に自生する麻を素材とする織物の一大産地であった。
それらは近江上布と呼ばれ、古くから近江商人によって日本全国に流通し、近江の一大ブランドであった。

受講者に触れてもらいたいと紹介された近江上布や麻の作品

受講者に触れてもらいたいと紹介された近江上布や麻の作品


講演会は先ずコーデネータ―の辻喜代治が、テキスタイルアーテイストである河原林美知子近江学客員研究員を、作品を通じて紹介した。次に、麻織物の伝統を守り続けている大西實氏の仕事をビデオで紹介し、それを糸口に河原林氏が質問する形で進められた。
大西 實さん

大西 實さん


河原林 美知子研究員

河原林 美知子研究員


まず素材の麻の性質と、現在使用されている麻糸について話された。
現在、滋賀県では素材の麻は手に入らず、他の地域のチョマと呼ばれる麻素材を使っているが、ぜひとも滋賀県の麻栽培を復活させたいと力説されていた。特に大麻栽培は法律に引っかかる難しい部分があるので、多くの問題の解決が必要とされる。
次にその制作技法に話がおよび、大西氏は特に細い糸を使い、昔からの技法により絣模様を作りだされていることを、会場に持参された道具をつかって詳しく紹介された。
近江上布の特徴は、絣文様の麻織物で独特のしわ入ったものといわれている。
しかし県内の人にもあまり知られていないのが現状で、若い人たちに先ず麻素材を触って知ってもらうことの大切さが話題となった。そのために大西氏は伝統的な手織りだけでなく、電動織機を使ったりして様々なレベルの麻織物を制作されている。一般の人に広く知ってもらい、徐々にいいものに触れてもらうように工夫をされている。さらに近江上布は日常の暮らしの中で受けつがれてきたがゆえに、国や県の文化財としての保護や指定もないことが報告された。近江の歴史と風土と深くかかわる近江上布は、これからも大切に受け継がれていくべき滋賀県の文化財だと思われる。そのための保護運動も必要だと強く認識させられた。
報告:辻喜代治(コーディネーター)
ハネと呼ばれる織物の模様をつくる染め台の解説をする大西さん、辻研究員

ハネと呼ばれる織物の模様をつくる染め台の解説をする大西さん、辻研究員


■大西 實さんの近江上布を購入するには、こちらから
日時:2012年7月14日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:大西 實氏 (伝統工芸士)
対談:河原林 美知子(ファイバーアート作家、本研究所客員研究員)
コーディネーター :辻 喜代治(本学教授、本研究所研究員)
タイトル:「まとうかたち~湖東の織物-近江上布」

淡海の夢2012「仰木・棚田写生会」開催しました。


6月23日・24日に淡海の夢2012「仰木・棚田写生会」を開催しました。
今回も、両日あわせて44名の一般の参加者に、本学イラストレーション領域の学生さんたちも参加し賑やかな写生会となりました。
天候は直前までの台風4号の動向で雨天中止かとハラハラしましたが、両日とも晴れ男の永江先生のパワーで少し曇りがちながら、この時期にしては涼しい絶好の写生日和となりました。
両日とも、永江研究員から、写生開始前に現地で風景画を描く上での空気遠近法について参加者の皆さんへレクチャーがありました。

今回は、6月下旬と例年より少し遅い開催になり、青々とした生命力あふれる棚田が広がり気持ちのいい写生となりました。
その分綠が多い風景になり、参加者の皆さんは表現するのが少し難しかったとおっしゃっていました。


講評会では、フォトグラファー・グラフィックデザイナーの阪東勲先生に講師として初登場していただきました。
イラストレーションクラスの永江研究員と、グラフィックデザイナーの阪東先生お二人から、参加者一人一人へ構図から画材についてのアドバイスを丁寧にされ、参加者の皆さんは大変参考になったと思います。

阪東勲先生からの講評のようす

阪東勲先生からの講評のようす


永江研究員からの講評のようす

永江研究員からの講評のようす


阪東先生も棚田の風景がすっかり気に入られたそうで、ぜひみなさんに四季折々の棚田の風景や、棚田桜を描いてほしいとおっしゃっていました。
今年度の写生会は、10月27日・28日の坂本・石垣と里坊の町写生会が最終になります。
2012年度近江学研究所の公開講座についてはこちらから↓

特別公開講座『私の見た近江』を開講しました。



日時:2012年6月9日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:山折 哲雄 氏
タイトル:「私の見た近江」 
6月9日(土)、特別公開講座『私の見た近江』と題して、日本を代表する宗教学者山折哲雄先生にご登壇いただき、山折先生の目で見た近江の魅力について語っていただきました。
 山折先生は特に2つ近江の魅力を取りあげられました。一つは「琵琶湖と比叡山の関係がおもしろい」ということです。
 言うまでもなく比叡山は仏教の母山といわれるように、最澄に始まり、法然、親鸞、日蓮、道元など鎌倉新仏教を興隆した高僧らが修行をしました。その厳しい修行の中で彼らを一層苦しめたのは琵琶湖がもたらす高い湿気という風土でした。しかし、この湿気は、和辻哲郎がかつて論じたように、モンスーンの影響を受ける日本の風土の一つであり、この高い湿気から涼感という中国や欧米にない感覚が生まれました。涼しいという感覚は連歌や俳句等の日本文学に織り込まれ、日本独特の文化の基層となりました。そのような湿気の高い空間を琵琶湖と比叡山がつくり出し、数々の哲人を生み出した事は特筆に値すると述べられました。
 もう一つは、「蓮如上人と近江商人の関係が微妙で、興味がつきない」ということです。
 山折先生は『人間蓮如』をご執筆の際に、蓮如が歩いた近江の地をたどったことを懐かしく思い出しますと話されながら、蓮如は難しい教義ではなく、一般民衆に解りやすい御文章(ごぶんしょう)を書きながら布教し、浄土真宗を近江から出発して最終的に大教団につくりあげた。その中で大事なことは、浄土真宗が徹底的に権力や武力に抵抗した反社会的な宗教ではなく、根底には民衆のため世の中のためになると言う救いの宗教であったことであると述べられ、そのような真宗の考え方が近江商人の「三方よし」の中の「世間よし」につながったのではないかと指摘されました。
 近江には比叡山と琵琶湖があり、まさにここが日本文化の根源を形成したと言えると力強く近江の魅力を語っていただき、定員を大きく上回る多くの参加者から大きな拍手がおこりました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

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