近江学研究所の活動の進捗 | 研究員の活動

近江学フォーラム会員限定講座第5回「里坊―律院の庭園と西教寺本堂大壁画」

近江学フォーラム会員限定講座第5回 「里坊―律院の庭園と西教寺本堂大壁画」
日時:12月14日(土)10:20~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:加藤 賢治(本学准教授・本研究所副所長)
ゲスト:木村 至宏(本学名誉教授・本研究所顧問)

加藤賢治副所長

加藤賢治副所長


木村至宏顧問

木村至宏顧問


 文化誌「近江学」11号、テーマ「里のいとなみ」の中で、発表した講座タイトルと同名の論考について、筆者である加藤副所長が解説しました。
 「門前町坂本には名勝庭園を有する里坊が点在するが、その作庭の背景には、比叡山で厳しい修行をしてきた僧侶のある種の「悟り」に近い思想が流れているのではないか。」「また、西教寺の本堂にある日本画家三輪牒勢が描いた大壁画は、江戸時代初期の禅僧沢庵禅師が西教寺を訪れた時に、詠んだ詩がもとになっている。」と解説した後、ともに自然の中に人間が溶け込み、草木も動物も安らかに暮らす浄土を表しているのではないかと里坊と壁画の共通点をまとめました。そして、最後の20分西教寺の話のつながりということで、木村至宏顧問が、西教寺を菩提寺とする明智光秀の人柄を西教寺に残る文書や、木像、梵鐘などの資料を紹介しながら解説されました。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公の舞台をしっかり学ぶことができ満足でしたという感想が多く聞かれました。

近江のかたちを明日につなぐ「近江―受け継ぐかたち―信楽勅旨、茶器をつくる―」報告

連続講座 近江のかたちを明日につなぐ
「近江―受け継ぐかたち―信楽勅旨、茶器をつくる―」
日時:11月30日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:大西 左朗 氏(陶芸家)
対談:石川 亮 (本学准教授・本研究所研究員)

大西左朗氏

大西左朗氏

石川亮研究員

石川亮研究員

古くから焼き物の産地として知られる甲賀市信楽町勅旨の陶芸家大西左朗氏の仕事に迫る講座を開催しました。 戦後まもなく小物づくりの復興を目指し、先人の仕事を学びながら機能性に優れた独自の作風を確立してきた左朗氏の実父である大西忠左氏のものづくりの精神性について、また、大西左朗氏がその伝統を継承しながらも新素材の研究開発に取り組まれ、近年では朝宮の茶農家と連携するなど、煎茶を美味しく飲むための茶器の追求している制作活動について、信楽勅旨の歴史に裏付けられた「陶璃窯」の普遍的なものづくりについて語っていただきました。講座の中では、左朗さん自らが、作陶した2種類の茶器でお茶を煎れていただき、前列の方に飲み比べをしていただきました。

お茶を煎れる大西左朗氏

お茶を煎れる大西左朗氏

また、当日は関連企画として「近江のかたちを明日につなぐ展vol.13 信楽勅旨、茶器をつくる」を開催しました。忠左氏と左朗氏の作品の数々、陶璃窯の名前の由来となった掛け軸、作品のインスピレーションを受ける室町時代の陶器の破片など、作品の世界観が伝わる展示となりました。

「近江のかたちを明日につなぐ展」展示

「近江のかたちを明日につなぐ展」展示

「近江のかたちを明日につなぐ展」

「近江のかたちを明日につなぐ展」

[講師プロフィール]
大西 左朗 氏(陶芸家)
1964年 滋賀県信楽町生まれ。’88年 東洋大学社会学部応用社会学科卒業。 ’93年 京都府立陶工高等技術専門校図案科修了。滋賀県立陶芸の森 創作研修館嘱託を経て、‘96年 自宅工房で独立。‘07年 第17回秀明文化基金賞受
賞。’13年 信楽焼伝統工芸士(総合部門)認定。個展を中心に作品を発表。
対談:石川 亮 (本学准教授・本研究所研究員)

近江学フォーラム会員限定講座第4回「風景から識る近江―文学作品を通して―」報告

近江学フォーラム会員限定講座
「風景から識(し)る近江 ―文学作品を通して―」
日時:11月23日(土・祝)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:西本 梛枝 氏(文筆業(日本ペンクラブ・日本詩人クラブ・観光ジャーナリスト会議等々  会員)旅や観光に関した記事、随筆を主に執筆。)

西本梛枝氏

西本梛枝氏


 多くの文学作品中で描かれた「文学風景」を、作家のまなざしを想像しながら、その土地をたどっていく醍醐味を西本氏に講演いただきました。本講座では、井上靖『星と祭』、勝海舟『氷川清話』を題材に、文学作品を読み解かれました。
 「日常の中で〝見なれた風景〟になったその土地が、新鮮なものにしてくれることがわかってくる。」「文学作品たちからもらう〝ちょっとしたきっかけ〟は人の人生を豊かにする」。西本氏の感性豊かな語りから、作家たちが近江の風景からすくい取った近江の豊かさに触れることができる講座となりました。
[講師プロフィール]
西本 梛枝 氏(文筆業(日本ペンクラブ・日本詩人クラブ・観光ジャーナリスト会議等々  会員)旅や観光に関した記事、随筆を主に執筆。)
1945年、島根県生まれ。文筆家。神戸大学教育学部卒業。日本ペンクラブ、日本詩人クラブ、日本現代詩人会、観光ジャーナリスト会議会員。
3年間小学校教師を勤めた後、民放テレビで「東海自然歩道」の紹介番組を担当したのを切っ掛けに旅行ガイドブックや紀行書の執筆。一方で、テレビ、ラジオで旅を書いたり語ったり。著書は『鳰の浮巣』、『湖の風回廊』などがある。

「近江―挑戦のかたち―完全農薬不使用栽培を通してみる、朝宮茶のちから―」報告

連続講座 近江のかたちを明日につなぐ
「近江―挑戦のかたち―完全農薬不使用栽培を通してみる、朝宮茶のちから―」
日時:11月9日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:片木 明 氏(茶農家)
対談:真下 武久 (本学准教授・本研究所研究員)

片木明氏と真下武久研究員

片木明氏と真下武久研究員


 信楽の西、国道422号線沿いに店を構える「かたぎ古香園」。6代目当主片木明氏は、昭和50年から朝宮で、お茶の完全農薬不使用栽培を開始し、現在はそのパイオニアとして広く知られています。
 今回の講座では、片木明氏をお迎えし、「かたぎ古香園」が目指す安全と安心の徹底した追求の経緯、また、従来から高級茶として知られている朝宮茶の魅力について語っていただきました。
 今回は片木氏の意向で、階段式の座席ではなく、講師を取り囲むような車座をつくり、前列はゴザに座布団をしいて、後列は椅子席を用意して、アットホームな環境つくりを試みました。片木さんのお人柄を身近に感じる雰囲気は受講者のみなさんに好評を得ました。
 
 完全農薬不使用栽培というとてつもない挑戦から見えてくる、朝宮の土地や自然、お茶が持つ「ちから」を片木さんのお話や、茶葉の試食体験や、全員にふるまわれたお茶を味わうことで、体験を通して感じることのできる講座となりました。
会場風景

会場風景


会場風景

会場風景


ふるまわれた朝宮茶

ふるまわれた朝宮茶

「淡海の夢2019 堅田・湖族の郷写生会」報告

「淡海の夢2019 堅田・湖族の郷写生会」
日時:10月26日(土)10:50~12:20
場所:大津市堅田 本福寺周辺
講師:永江 弘之 (本学教授・本研究所研究員)、上原 結子(本学准教授)

大津市堅田地区での写生会風景

大津市堅田地区での写生会風景


 今回の開催地は大津市堅田地区です。堅田は、琵琶湖の水運・漁業など、湖上の特権を持つ堅田衆(湖族)が栄えた歴史ある町。その町並みをはじめ、一休和尚、松尾芭蕉ゆかりの寺院、浮御堂、堅田漁港など、趣深い湖辺の風景が魅力です。今回は、蓮如が真宗の布教拠点として滞在した寺院「本福寺」にご協力を得て、本堂にて受付・講評をさせていただきました。
本福寺本堂で開催した講評会の様子

本福寺本堂で開催した講評会の様子

近江学フォーラム会員限定講座第3回「甲賀の神仏―櫟野寺を中心として―」報告

近江学フォーラム会員限定講座第3回 「甲賀の神仏 ―櫟野寺を中心として―」
日時:9月21日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:髙梨 純次 氏(日本美術史専攻、公益財団法人秀明文化財団参事)

髙梨純次氏

髙梨純次氏


 近江に現存する秘仏、一般公開されていないものも含め200余点の仏像、神像をカラー写真と文章でまとめた『近江の祈りと美』を出版された髙梨氏に、甲賀の平安彫刻について講演いただきました。この講座は、10月に行う近江学フォーラム現地研修『甲賀の里をゆく』の事前学習として開催しました。講座では、甲賀市は多くの文化財が伝えられている滋賀県の中でも、本山寺院が多い大津市に次いで、二番目の数量を誇っていること。特に、櫟野寺や阿弥陀寺(甲賀市櫟野)には平安古像が集中して伝えられていることを事例を基に解説いただきました。また、現存する神像や仏像について、近年の研究成果を踏まえながら、見学されるに際しての見どころなどについてお話しいただきました。
[講師プロフィール]
髙梨 純次 氏(日本美術史専攻、公益財団法人秀明文化財団参事)
昭和28年(1953年)京都市に生まれる。同志社大学大学院文学研究科博士前期課程修了。滋賀県立琵琶湖文化館から滋賀県立近代美術館に勤務、学芸課長をつとめ、現在は(公財)秀明文化財団参事としてMIHO MUSEUMの研究・展示を担当。著書は『近江祈りと美』(写真・寿福滋、サンライズ出版)、『近江の古像』(思文閣出版)など。

2019近江学フォーラム会員限定講座第2回「衣生活用具からみる里の暮らし」報告

近江学フォーラム会員限定講座第2回 「衣生活用具からみる里の暮らし」
日時:7月13日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:須藤 護 氏(民俗学者、龍谷大学 名誉教授、龍谷大学 里山学研究センターフェロー)

須藤護氏

須藤護氏


 大津市田上牧地区にある田上郷土史料館に収蔵された民具の調査を10年かけてされている須藤護氏をお迎えし、民具から土地の暮らしを読み解いていただきました。
 郷土史料館が設立されたのは昭和43(1968)年。収蔵品のうち最も充実しているのが衣生活に関わる資料で、現在80歳から90歳くらいのおばあさんが、田上にお嫁に来るときに持って来られた日常着、作業着、訪問着その他美しい小物類がたくさん保管されています。この豊富な衣生活用具を通して、当時の田上の女性たちがいかに賢い暮らしを築いてきたか、その暮らし方をひとつひとつ解説いただきました。この調査を経て、2019年2月8日に国の登録有形民俗文化財として文科相へ答申されることになりました。地元の方々の継続的な調査への協力が結実し文化財登録につながったと須藤氏は語られました。
[講師プロフィール]
須藤 護 氏(民俗学者、龍谷大学 名誉教授、龍谷大学 里山学研究センターフェロー)
1945年、千葉県生まれ。民俗学者。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。日本観光文化研究所(近畿日本ツーリスト)、大学共同利用機関放送教育開発センター教員、龍谷大学国際文化学部教授を経て現職。著書に『木の文化の形成  日本の山野利用と木器の文化』(未来社)、『雲南省ハニ族の生活誌』(ミネルヴァ書房)などがある。2010年、今和次郎賞受賞。

2019近江学フォーラム会員限定講座第1回「近江と美濃を結ぶ里―奥伊吹・甲津原」報告

「近江と美濃を結ぶ里 ―奥伊吹・甲津原」
日時:6月29日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:髙橋 順之 氏(米原市教育委員会歴史文化財保護課主、伊吹山文化資料館学芸員) 

髙橋順之氏

髙橋順之氏


 米原市で歴史文化・資料館運営を通して広く市民に伊吹山の自然・歴史文化について教育普及に努められている髙橋順之氏をお迎えし、国の重要文化的景観「東草野の山村景観」に登録された奥伊吹・甲津原集落について講演いただきました。
 奥伊吹・甲津原集落は、標高520メートルの高地にあり、西日本屈指の豪雪地として知られており、かつて、3本の峠道で湖北と美濃を結ぶ拠点であったことから、顕教踊りや廻り仏、能面などの古い文化や文化財が入り込み、里人によって伝承されてきました。甲津原や坂下の村々が、山深い集落でありながら閉塞した土地ではなく、峠を介した往来がさかんな地域であったことが具体的な事例をもとに語られました。
[講師プロフィール]
髙橋 順之(たかはし・のりゆき)氏
1962年、滋賀県生まれ。奈良大学文学部史学科卒業。伊吹町教育委員会を経て、現職。滋賀県立大学非常勤講師。専門は日本考古学。著作に『伊吹山を知るやさしい山とひと学の本』(監修・共著)、『伊吹山物語―神の山と歩む上野人―』(編集・共著)、「近江の上平寺城から小谷城へ」(『中世城館の考古学』高志書院)などがある。

「淡海の夢2019 仰木・棚田里山写生会」報告

「淡海の夢2019 仰木・棚田里山写生会」
日時:6月8日(土)10:50~12:20
場所:大津市仰木周辺
講師:永江 弘之 (本学教授・本研究所研究員)、待井 健一(本学非常勤講師)

大津市仰木地区での写生会風景

大津市仰木地区での写生会風景


 琵琶湖を中心とした棚田・里山、湖国の風景は今、次世代に引き継ぎたい美しく貴重な日本の原風景として広く注目されています。「淡海の夢」は、年2回の写生会と公募風景展を通して、近江の素晴らしさを体感し固有の価値を再発見する講座です。本学イラストレーション領域で風景イラストを専門とする永江弘之研究員が、風景写生のコツをレクチャーし、講評会を実施しました。
 今回の開催地は、大津市仰木地区です。仰木は、比叡山から琵琶湖の西岸へと伸びる尾根沿いの農村集落で、1150年の歴史があります。周囲にゆったりと階段状に広がる棚田や雑木林など、人々が守り育んできた日本の原風景ともいえる風景が魅力です。
 風が強く天気が目まぐるしく変わる写生には難しい日和となりましたが、3年ぶりに仰木地区での棚田を描けることを楽しみに来られた受講者が集まりました。当日は、受付場所として仰木活性化委員会に協力いただき「御所の丘公園」を使用し、講評場所には仰木市民センターをお借りして実施しました。
仰木市民センターで開催した講評会の様子

仰木市民センターで開催した講評会の様子


[講師プロフィール]
永江弘之 (本学教授・近江学研究所研究員)
1960年 大阪府生まれ。大阪教育大学教育学部卒業。中学校美術科教諭を経て、2003年成安造形大学講師となり、現在、成安造形大学芸術学部芸術学科イラストレーション領域教授、08年から同大学附属近江学研究所研究員。近江学研究所公開講座「淡海の夢」(写生会・公募展)企画責任者。近江の風景に魅せられ、色彩感あふれる写実風景画や幻視風景画を制作。

公開講座「近江〜食のかたちー料理が伝える文化とは!?」報告

連続講座 近江のかたちを明日につなぐ「近江〜食のかたちー料理が伝える文化とは!?」
日時:5月18日(土)10:50~12:20
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:川西 豪志 氏(株式会社木馬代表取締役、ひさご寿し料理長) 
対談:石川 亮 (本学准教授・本研究所研究員)

川西豪志氏

川西豪志氏


 水郷と商家の街、近江八幡市で地元の食材をふんだんに使う料理人、寿し割烹と日本料理を楽しませる「ひさご寿し」2代目川西豪志氏をお迎えしました。本研究所の石川亮研究員かナビゲートする対談形式での講演を行いました。
 講演では、世界的に和食の注目度は高く、その理由として無形文化遺産に「和食;日本人の伝統的な食文化」が登録されたことは大きいことが話されました。川西氏は、登録された当時、フランスの宮殿で外務省の方々に懐石料理を振る舞うメンバーとして参加され、またその2年後に開催されたミラノ万博でも、日本食チームの一人として日本食を世界に広めるために参加されました。それをきっかけに、なぜ日本料理をつくるのか、自分が暮らす土地の食や文化を誇りに思えているか、日本食文化の中で近江料理とは何かを考え、近江八幡の自然環境、生産者や漁師などいろいろな人に地域の食を教わることを始めたというエピソードが語られました。
 講座の中では、川西氏がこれぞ近江の郷土食と考える「丁子麩の酢味噌和え」が振舞われ、味覚を通じた食文化の深さを味わう講座となりました。
石川亮研究員と対談

石川亮研究員と対談


[講座内容]
 水郷と商家の街、近江八幡市で地元の食材をふんだんに使う料理人、寿し割烹と日本料理を楽しませる「ひさご寿し」2代目川西豪志氏に迫ります。世界的に和食の注目度は高く、その理由に無形文化遺産に「和食;日本人の伝統的な食文化」が登録されたことは大きい。日本食文化の中で近江料理とは何か、その周辺と環境、様々な過程から育まれた料理に注目し食が伝える近江、日本の文化について、また多分野との交流から広がる食の可能性にも迫ります。
[講師プロフィール]
川西 豪志  氏 (株式会社木馬代表取締役・ひさご寿し料理長)
1976年 滋賀県近江八幡市生まれ。’95年 県立八日市高等学校卒業後、株式会社木馬 ひさご寿しに入社。有馬での修行後’03年帰郷、ひさご寿し料理長に。第一回日本料理コンペティション全国決勝敢闘賞、国家資格日本料理専門調理師、滋賀県日本調理技能士会理事、滋賀フードツーリズム推進協議会副会長、日本料理アカデミー正会員、龍谷大学非常勤講師。

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