松浦俊和氏:2014近江学フォーラム会員限定講座 第3回

日時:2014年9月27日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:松浦 俊和氏(大津市埋蔵文化財調査センター長)
タイトル:「古代寺院跡を探る」

講師の松浦俊和先生

講師の松浦俊和先生


今年3回目のフォーラム会員限定講座が9月27日(土)に開催されました。
今回は、近江の仏教文化をテーマとして「古代寺院跡を探る」と題し大津市埋蔵文化財調査センター長の松浦俊和先生にご登壇いただきました。

講義は、発掘された寺院の瓦のデザインをもとに、古代寺院の歴史をひもとくという大変興味深いものでした。
当時の寺院建築に使用された軒丸瓦は、中央の円形部分に蓮の花びらをモティーフとしたデザインが施され、花びらが単弁のものは渡来系氏族の、復弁のものは朝廷の支配下にある官寺であるといわれている。特に大津の寺院跡には単弁のものが多く出土するため、大友氏をはじめとする渡来系氏族の力が強かったことがうかがえる。南志賀廃寺には、蓮の花を横から見た「サソリ型」と呼ばれる特殊なデザインの瓦が出土し、この地域のみの特徴を示しているなど、詳しい解説がありました。
また、壬申の乱の大海人皇子軍が動いた後の遺跡に藤原宮式という特徴を持つ瓦が出土するという興味深い事例も紹介されました。この日の講義は16ページに及ぶ丁寧な資料をもとにわかりやすく近江の仏教に基づく古代史を解説いただきました。


連続講座 近江~空のかたち 近江の花火師 柿木博幸氏が講演しました

日時:2014年9月13日(土)10:40〜12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:柿木 博幸 氏 (㈱柿木花火工業代表取締役)
対談:加藤 賢治(本学附属近江学研究所研究員)
タイトル:近江〜空のかたち「湖国の夜空をデザインする ー近江の花火師-」

柿木花火店が運営する彦根花火大会(写真提供:柿木博幸)

柿木花火店が運営する彦根花火大会(写真提供:柿木博幸)


全国各地で繰り広げられる夏の風物詩「花火大会」。
その打ち上げ花火の起源は戦国期に武器として使用された鉄砲や大筒に遡ります。
 この日の連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」は、日本有数の鉄砲の産地として知られる長浜市国友の流れを継承し、今も湖国で唯一打ち上げ花火を製造、湖国の花火大会を手がける花火師柿木博幸氏(㈱柿木花火工業代表取締役)に登壇いただきました。

花火師の柿木博幸氏

花火師の柿木博幸氏


対談の加藤賢治(近江学研究所研究員)

対談の加藤賢治(近江学研究所研究員)


 講座は、打ち上げ花火の歴史から、コンピュータで制御される最新の仕掛け花火まで図版や写真で紹介いただきました。また、危険を伴う花火製造の裏側や、自然に優しいエコ花火、花火を通じた地域貢献など多岐にわたった内容で対談が進みました。

 講座の中で、柿木氏は、「湖北地域の先人が継承してきた伝統を受け継ぎ、そのバトンを次に繋げるために日々仕事をしています。」と語られ、また、新作花火をつくるには試し打が必要で、「いつ試し打をしても苦情が出て来ない地域の方々の理解には感謝しています。」と湖北地域の風土について話されました。
昔ながらの花火とエコ花火を水につけて、花火玉の外皮が水にとけるのを実験しました

昔ながらの花火とエコ花火を水につけて、花火玉の外皮が水にとけるのを実験しました


 単に花火を打ち上げて終わるのではなく、花火の破片(燃えかす)が自然に還るエコ花火の制作や、小学生に花火づくりを体感させ制作行程を見せることで、物が出来上がるまでの苦労や手間を体験させるなど、他の花火師には見られない社会貢献活動が紹介されました。
 花火は誰もが知る素晴らしい娯楽の一つとなっていますが、その裏側を知る人はほとんどありません。「これからの花火の見方が変わりました」という参加者からの感想がたくさん寄せられました。
報告:近江学研究所加藤賢治
【情報コーナー】
■ ㈱柿木花火工業 について>>>公式ホームページはこちら
■ 柿木博幸さんの花火映像 2012全国新作花火競技大会 YOUTUBEより >>>こちらから

寺島 典人氏:2014近江学フォーラム会員限定講座 第2回

日時:2014年7月12日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:寺島 典人氏(大津市歴史博物館学芸員)
タイトル:「近江の仏像とその見方」

寺島典人氏

寺島典人氏


 7月12日(土)、近江学フォーラム会員限定講座「近江の仏教文化」シリーズ第2弾、
「近江の仏像とその見方」を開催しました。
 講師には、大津市歴史博物館学芸員で仏像の調査・研究がご専門の寺島典人先生にご登壇いただきました。
 この日は、湖南市の古刹をめぐる現地研修(10月5日開催)のための事前講義として設定しており、専門的な仏像研究の話ではなく、現地研修で拝観する仏像の種類や、信仰のかたち等をわかりやすく紹介していただきました。
 はじめに、仏像の基本として、釈迦誕生仏から、苦行像、涅槃像、仏舎利、塔の紹介、そして、インドのバラモン教から異端派として登場してきた仏教の六道輪廻転生という思想の解説がされました。
如来の印を学ぶ受講者のみなさん

如来の印を学ぶ受講者のみなさん


 そのうえで、仏像を①如来部、②菩薩部、③明王部、④天部という4つのグループにわけて解説いただきました。
具体的には、釈迦如来や西方極楽浄土の阿弥陀仏、大日如来の手のかたちや、観音菩薩が三十三に姿を変えることや、不動明王の不思議、梵天・帝釈天の偉大さなど、少ない時間でしたが複雑な仏像の形式を詳しくまたわかりやすく解説いただきました。

 最後には神仏習合や本地垂迹など神像の話しにも触れられ、近江の仏像を中心としながら信仰の深さを知ることができました。
講座修了後、「仏像のわからなかった難しいところを教えていただき、現地研修が楽しみです」「先生の話し方がわかりやすく大変勉強になりました」など満足度の高いメッセージをたくさんいただきました。
報告:加藤賢治(近江学研究所研究員)
寺島 典人氏 プロフィール
1969年北海道札幌市生れ。神戸大学大学院文化学研究科博士課程中退。仏教美術(彫刻史)専門。

淡海の夢2014-仰木・棚田写生会を開催しました

6月21日(土)に淡海の夢2014「仰木・棚田写生会」を開催しました。
当日は、曇天で雨も心配されましたが、無事写生会は開催されました。
曇り空が続きましたが、雲が多い天気で、暑すぎない写生日和になりました。
一般の参加者17名と本学イラストレーション領域の学生7名の写生会となりました。
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開催にあたり、写生会企画者の永江研究員から開催のあいさつと、写生のポイントと仰木の棚田の獣害問題による柵の設置の説明が行われました。
続いて、今回の写生会の講師をしていただく本学非常勤講師のグラフィックデザイナーの板東勲先生の紹介が行われました。
板東先生が出版された関西の老舗飲食店を水彩画で描いた「味のある風景」(淡交社)の紹介もされました。

左:永江研究員 右:板東先生

左:永江研究員 右:板東先生


その後、参加者のみなさんは緑が広がる棚田へ写生に向かわれました。
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写生のアドバイスをする板東先生

写生のアドバイスをする板東先生


講評会では、日頃写生をされている方から、写生会にはじめて参加された方や数十年ぶりに絵を描いた方まで様々な参加者の力作ぞろいの作品が講評会で並びました。
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講評は永江研究員と板東先生が一つ一つの作品を丁寧に講評しました。
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大きな棚田桜は、光合成をするためにどんどん広がり大きくなるのでドーム型を意識して描くのがコツなど、日頃、自然や風景と向き合って描かれている永江先生や板東先生の具体的で的確なアドバイスがありました。
参加者のみなさんからは先生のアドバイスや他の人の絵を見ることで参考になった、楽しい一日になったと喜びの声をいただきました。
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今回の写生会のようすをネコのミモロが取材をしてくれました!
詳しくは>>こちらから
板東勲先生が出版された『味のある風景』については>>こちらから

宇佐美英機氏:2014近江学フォーラム会員限定講座 第1回

日時:2014年6月28日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:宇佐美 英機氏(滋賀大学教授)
タイトル:「近江商人と信仰」

宇佐美英機氏

宇佐美英機氏


6月28日(土)、今年度1回目の近江学フォーラム会員限定講座を開催しました。
今年度の会員限定講座は、合計5回の限定講座に一つのテーマ(今年度は「近江の仏教文化」)を設けました。これは、会員の皆様からのご要望におこたえしたもので、毎年行っています現地研修内容も限定講座に関連させました。
そのこともあり、今年度は多くの会員様に入会いただき、会員限定講座初回の今回も今までになくたくさんの参加者に来場いただきました。

この日の演題は、「近江商人と信仰」。近江商人研究の第一人者である滋賀大学経済学部教授の宇佐美英機先生にご登壇いただきました。
宇佐美先生は「今までも、近江商人が信仰心に富んだ人々であったいわれてきたが、決して信仰がもとになって商人が生まれてきたわけではない」としながら、「豊郷町出身の初代伊藤忠兵衛の信仰心と商売の関わり方を通じて、その接点を探ることは非常に意味がある」と語られました。
滋賀大学経済学部附属史料館所蔵 「中井源左衛門家文書 後発見

滋賀大学経済学部附属史料館所蔵
「中井源左衛門家文書 後発見


最後に、「近世江戸時代には、確かに仏教や儒教を中心とした価値観や行動規範が存在し、例えば世間のために奉仕をするという考え方は商人の活動に限らず多くの人々が道徳として持っていた。明治に入り合理主義が流入したことで、それらの信仰心や道徳が薄れてきたことは誰もが認識していることである。今、近江商人も含め、近世の信仰、価値観、道徳心を再度かえりみて、現代社会の社会に生かしていくことが求められている」とまとめられました。
報告:加藤賢治(近江学研究所研究員)
宇佐美 英機氏 プロフィール
1951 年福井県生れ。同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了。京都大学博士(文学)。滋賀大学経済学部教授。経済学部附属史料館長。主に日本経営史を研究、とりわけ近江商人の経営・社会活動を研究。近年は伊藤忠兵衛家、伊藤長兵衛家の分析にとりかかっている。主な著作『初代伊藤忠兵衛を追慕する―在りし日の父、丸紅、そして主人』、『近世京都の金銀出入と社会慣習』、『近世風俗志(守貞謾稿)』などがある。第7 回徳川賞(佳作)、第26 ハン六学術賞受賞。

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」第2回大西明弘氏、巧氏講演しました

日時:2014年6月14日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:大西 明弘氏 (有限会社大與3代目 代表取締役会長)
   大西 巧氏 (有限会社大與4代目 代表取締役社長)
対談:大原 歩 (本学非常勤講師・本研究所研究員)
タイトル:「近江~灯火のかたち-和ろうそくで暮らしをデザインする-」

6月14日(土)、連続講座第2回目「近江のかたちを明日につなぐ~灯火のかたち~」として、滋賀県高島市の近江今津にて大正三年に創業し今年で100年を迎えた「和ろうそく大與(だいよ)」3代目大西明弘氏、4代目大西巧(さとし)氏を講師にご登壇いただきました。
今回は、まずはじめに和ろうそくの火を灯し、その光の力を会場で共有しました。

はじめに櫨蝋の和ろうそくの光を感じました。

はじめに櫨蝋の和ろうそくの光を感じました。


第1部として大西明弘氏に、櫨蝋の手掛けの和ろうそくについて写真と映像を元に「櫨蝋」「灯芯」「手掛け」という手仕事による和ろうそくの製造過程について解説いただきました。
うるし科の櫨の実を乾燥させて搾った「櫨蝋」は、櫨を摘む人が少なくなり、生産地は九州の2か所のみになっていることなど、原料入手のおける問題について、自然災害や高度経済成長などの歴史背景を含めてこれまでの経過を語っていただきました。
また、櫨100%の大與の和ろうそくと、櫨100%ではない和ろうそくの火を灯すことで素材の違いが読み解けることを実際に見比べながら解説いただきました。
大西明弘氏

大西明弘氏


第2部では、大西巧(さとし)氏に登場いただき、大原研究員から質問を投げかけながら、これからの100年に和ろうそくをつなげていく新たな「米糠ろうそく」の取り組みについて対談いただきました。4代目として家業を継ぐ決意をしたきっかけとなった父のことばについて、そして、和ろうそくを人の暮らしの中へ取り戻すために「米糠蝋」を使いブランド化した「お米のろうそく」をつくりだした経緯についてお話しいただきました。
第2部の対談風景

第2部の対談風景


大西巧氏からは、「ろうそくの火について、かつて人が扱えないほど大きな力があった「火」を、人の知恵と技術によって扱うことができるようになったのが「ろうそく」であった。人と火をつなぐ「ろうそく」の存在をもう一度感じて暮らしに取り入れてほしい」と印象的でとても気持ちのこもったメッセージを投げかけられました。
大西 巧氏

大西 巧氏


大原 歩研究員

大原 歩研究員


会場からは、「和ろうそくに対する情熱が伝わってきた」「自然と人間が長い歴史をかけて積み上げてきた素晴らしさを実感することができました」「生活の中でろうそくを取り入れてみようと改めて考えさせられました」など多数のご感想をいただきました。
確かな技術と素材を使い生み出される3代目の和ろうそく。
伝統文化で終わらせない新しい視点から和ろうそくを考え、打ち出す4代目の和ろうそく。
100周年の新ブランド名の通り「火と人(hitohito)」をつなぎ、人と人をつなぐ「灯し火」として新しい魅力を創り出されていくものとして、とても希望を感じました。
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また、今回の講座は、
午後に開催した芸術文化研究所公開講座「大與とgrafの 人の事・モノの事・コトの事」と連動して行なわれました。
午後は、コーディネーターを津田睦美研究員が行ない、講師にgraf代表・デザイナーの服部滋樹氏をお迎えし、大與が100年を記念して新ブランドを立ち上げるに至った経緯について、ブランディングを行なったgrafの服部滋樹氏のこれまでの仕事から探っていく内容で開催されました。
そして、夕方からは学内のカフェテリア結にて、大與の100年記念パーティーを開催されました。
4代目の大西巧さんとのつながりから滋賀県のさまざま作り手や表現者の方々が集まり、大與のこれからを応援するアットホームな温かい素敵な会となりました。
近江学研究所として、この大與の歴史の1ページをサポートできたことを嬉しく思います。
パーティにて、大西巧氏によるご挨拶

パーティにて、大西巧氏によるご挨拶


報告:大原歩(近江学研究所研究員)
<大與のご紹介>
ホームページは>>>こちらから
<大與のお知らせ>
びわ湖放送「滋賀経済NOW」
6月21日(土) 22:00~22:30 大西巧さん 
※放映の中で、今回の講座の風景が流れます。
■詳しくは>>>こちらから
「比叡の光」
6月22日(日)、29日(日) 2週にわたり放映 大西明弘さんが和ろうそくについて語ります
[京都放送(KBS)] 日曜日8:45~9:007:45~8:00
[びわ湖放送(BBC)] 日曜日7:45~8:00
■詳しくは>>>こちらから

淡海の夢2014-坂本・石垣と里坊の町写生会開催しました

5月24日(土)に淡海の夢2014「坂本・石垣と里坊の町写生会」を開催しました。
25名の一般の参加者と本学イラストレーション領域の学生10名が参加し賑やかな写生会となりました。
写生前に、企画者で講師の永江弘之研究員から、参加者へ写生のポイントを解説がありました。
その後、清々しい快晴のなか、新緑が美しい坂本に参加者のみなさんはそれぞれ写生に向かわれました。

写生前に参加者へ写生のポイントを解説する永江研究員

写生前に参加者へ写生のポイントを解説する永江研究員


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写生会中にも、永江研究員が、参加者のみなさんにアドバイスに回られました。
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約5時間の写生を終えて、生源寺の別当大師堂をお借りして、永江研究員と本学非常勤講師の待井健一先生の講評会が行われました。
二人の講師の丁寧で熱心な講評と参加者からの質疑応答で、講評会はとても盛り上がりました。
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講評をする永江研究員

講評をする永江研究員


講評をする待井先生

講評をする待井先生


同じ場所を写生しても、捉え方や表現方法は様々だったり、何度も坂本は写生会場になっていますが、今まで知らなかった場所を写生場所に選ばれる参加者の作品を見ることで、先生方も発見があると仰っていました。
何度も参加されている方から数十年ぶりに絵を描いた方や初心者の方も交えて、和やかで楽しい雰囲気のなかで講評は終了しました。
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次回の淡海の夢は6月21日(土)開催の仰木・棚田写生会です。
写生会はどなたでも参加できます。ご興味のある方は是非ご参加ください。
申込はこちらから

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」 喜多俊之氏が講演しました

日時:2014年5月10日(土)10:40〜12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:喜多 俊之 氏 (プロダクトデザイナー、大阪芸術大学教授)
タイトル:「近江〜未来のかたち-地場産業とデザイン-」
連続公開講座「近江のかたちを明日につなぐ」は、これまで県内のものづくりの現場を数多く取り上げてきました。
しかし一方で伝統的なものづくりを現代の暮らしにどう生かしていくか、ということも大きな課題と考えています。
そこで今回は基調講演として、プロダクトデザイナーの喜多俊之氏をお招きし「地場産業とデザイン」と題して、お話していただきました。

講師 喜多俊彦氏

講師 喜多俊彦氏


喜多氏は日本を代表するプロダクト(工業)デザイナーで、早くから家電や家具のデザインを手がけられ、現在では大阪、イタリア、中国に事務所を開設。
世界的に活動されております。そして先端のデザインほか、早くから日本の伝統的な産業にも取り組まれ、現代の生活にあった商品開発も行われています。
講演では氏のこれまでのデザインされた製品をみていきながら、その制作過程での問題や取り組みを、わかりやすく話していただきました。
特に、デザインという概念が日本に入ってきたとき「意匠」や「図案」という言葉が当てられ、中国では「設計」として受け入れた違いを述べられ、興味を引きました。
地場産業をデザインした作品など、スライドを約100枚ほど紹介いただいた

地場産業をデザインした作品など、スライドを約100枚ほど紹介いただいた


現在の日本人の家は納戸と化し、せっかくの生活の舞台が台無しになっていて、豊かな暮らしを取り戻すには、まずそこを変え、いいモノを使う空間を作り出すことが大事だと提案されました。
さらに滋賀は大切な自然が豊かで、これを生かした基本的なグランドデザインが必要だと、その可能性を語っていただきました。
最後に現在取り組んでいる介護製品が紹介され、会場の多くの人が興味を示されていました。
参加者には日々の暮らしを見直し、デザインという言葉が身じかに感じられる講演となりました。
報告:辻 喜代治(近江学研究所客員研究員)

喜多俊之氏の情報 
・公式ホームページは>>>こちらから  
・インタビュー 産経ニュース【転機話しましょう】(101)「工業デザイナー、喜多俊之・イタリア式交流でチャンスつかむ」 は>>>こちらから 
・インタビュー ソニーマガジン「デザイナー喜多俊之さんに聞く「デザインの力」」は>>>こちらから

太田浩司氏 特別公開講座「黒田官兵衛と北近江」開講しました

日時:2014年4月26日(土)10:40〜12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:太田 浩司 氏 (長浜城歴史博物館 館長)
タイトル:「黒田官兵衛と北近江」

講師 太田浩司氏

講師 太田浩司氏


平成26年度はじめての近江学研究所主催の公開講座が4月26日(土)に開催されました。
 今回の特別公開講座は「黒田官兵衛と北近江」と題して、長浜城歴史博物館館長の太田浩司先生に登壇いただき、今年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の主人公である黒田官兵衛について史料をもとに解説していただきました。

 はじめに、大河ドラマのあらすじをたどるように官兵衛の波瀾万丈の生涯が解説されました。どこまでが歴史上の事実で、どこまでが伝承かという難しいところも話されながら、軍師というよりも城攻めの先方を務めるなど、勇敢な武将としての人物像を明らかにされました。ただ、官兵衛最大の特徴はやはり「調略」であるとされ、北条氏の小田原城攻めにおいて優れた調整力による官兵衛の活躍を強調されました。 
太田先生が用意した16ページもの資料を見ながら、講演が行われました

太田先生が用意した16ページもの資料を見ながら、講演が行われました


 本題である黒田官兵衛と北近江の繋がりについては、黒田家発祥の地が北近江の旧伊香郡黒田村であること、官兵衛の子である松寿丸(後の長政)が長浜城で人質として生活していたこと、そして、賤ヶ岳の合戦に官兵衛が参戦していたことがあげられ、特に、賤ヶ岳の参戦については、昨年発見された貴重な史料によってはじめて官兵衛が賤ヶ岳にいたことが証明されたと最新の研究成果が披露されました。
 黒田家は関ヶ原の合戦の後、九州福岡において52万石の大名として大きく加増されたが、官兵衛が毛利氏に精通し、調略によって小早川秀秋の裏切りの背景に深く関わっていたことが証明できるとその真相を明らかにされました。
 NHK大河ドラマは確かに「ドラマ」でありその域を超えませんが、それ故に面白く楽しむことができます。織田につくのか、毛利につくのか、いつの時代もどのように最善の道を選ぶかが大切で、今回のドラマのプロデューサーは、官兵衛を通じて、自分を信じること、そして相手を信じることが大切であるというメッセージを伝えようとしているのではないかと思いました。太田先生の講義をきっかけに、史実とフィクションを織り交ぜながらの大河ドラマに注目したいと思います。
木村所長より新年度のご挨拶

木村所長より新年度のご挨拶


近江学研究所についてもご案内させていただきました

近江学研究所についてもご案内させていただきました

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」〉近江~地域文化のかたち-「風と土の交藝」にみる地域活動-開催

連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」〉近江~地域文化のかたち-「風と土の交藝」にみる地域活動
日時:2013年12月21日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師: 清水 安治 氏(滋賀県職員・一級建築士)
対談:辻 喜代治 (本学教授・本研究所研究員)
タイトル:「近江~地域文化のかたち-「風と土の交藝」にみる地域活動」

講師 清水安治氏

講師 清水安治氏


2011年から、高島市全域を使って開催されている「風と土の交藝」の陰の仕掛け人である清水安治氏に、
このプロジェクトの具体的な内容について紹介していただきました。
講演ではまず、4回目となる2013年のイベントをまとめたダイジェスト版ビデオによるプレゼンテーションで、全体が紹介されました。
近年各地域で開催されているアートイベントとの違いについて、「他のイベントとは違い工芸や地域の産業、古民家の再生、農業や漁業も含んだ、暮らしを意識した地域イベントである」ことを強調されました。
さらに開催期間もあえて寒い冬の11月から12月を選び、高島らしい季節を体験してもらうことも、特徴の一つになっています。
今年からは開催地域を二つにわけて、二週の週末3日間ずつ計6日間開催されました。
このプロジェクトのきっかけは、毎年春に開催されている地域の工芸家たちのオープンアトリエをヒントにして、地域間住民の交流と、外に向けて高島市の魅力をアピールする目的でスタートしました。
高島市も高齢化と過疎化が進み空き家も多く見られ、それらを活用することも大きな目的になっています。タイトルの“風”は来訪者や移住した作家、“土”は地域の作家や住民をさします。
お互いがその暮らしや作品を通じて交流し、多くの人に高島の魅力を感じてほしいと生み出された、滋賀スタイルのプロジェクトです。
今回は50か所の会場が設けられ、会期中それらの会場を巡った人は4500人以上になります。
講演会場には90人近くの聴取の人が集まりました。その中には他の地域のモノづくりの人も多く参加していて、最後の意見交換のところでは、これから出来れば連携をしていきたいと提案されていました。
すでに信楽を中心とする工芸家たちも会期中に視察を行っており、交流が始まろうとしています。
今後こうした取り組みが進み、この滋賀スタイルのプロジェクトが広がれば、県全体の活性化と、他府県にその魅力を強くアピールできると強く感じました。    
(辻喜代治)
講師プロフィール
清水 安治 氏(高島市職員・一級建築士)
1961 年滋賀県高島市生まれ。滋賀県庁職員として、滋賀県立大学「近江環人地域再生学座」の
開設や半世紀ぶりとなる高校の木造校舎新築を地元産木材で造ることに関わるなど、地域資源を
活かすことにこだわる活動を続けている。地元高島市では、地域の工芸作家の暮らしぶりと作品
を住み開きする「風と土の交藝」を立ち上げ、高島の魅力を発信する。一級建築士。
対談 辻 喜代治研究員

対談 辻 喜代治研究員



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