おうみブログ

近江学研究所研究員が、近江にまつわるさまざまな情報を発信するブログです。

講座「琵琶湖の風景」を開講しました。

講座名 琵琶湖の風景
日 時 平成21年9月19日(土) 10:40~12:00
場 所 成安造形大学 本部棟三階ホール
講 師 今森光彦 (成安造形大学客員教授 写真家)

本年度3回目の近江学フォーラム会員限定講座「琵琶湖の風景」を開講しました。湖北の自然を多くのスライドを交えて生き生きと語っていただきました。ご参加いただきました皆様ありがとうございました。

永平寺を訪ねて


8月19日(火)研修と称して北陸福井県永平寺に行ってきました。
ご承知のとおり曹洞宗(そうとうしゅう)総本山永平寺(えいへいじ)は鎌倉時代に宗祖道元(どうげん)(1200~1253)が建立した禅宗寺院です。本来、念仏宗が念仏を称えると阿弥陀仏がすばらしき来世を必ず約束してくれるという他力宗教であるのに対し、禅宗は自ら坐禅(ざぜん)にて精神修養し、無になって悟りを開き仏となるという自力宗教であるとされています。しかし、道元の曹洞宗は禅宗でありながら少々異なり、道元は「修証(しゅうしょう)一如(いちにょ)」すなわち、修行の結果として悟り(証)に達するのではなく、修行(坐禅)そのものが悟りだといっています。
その思想の背景として、道元が比叡山で学んだ「山川(さんせん)草木(そうもく)悉皆(しつかい)成仏(じょうぶつ)」すなわち山も川も草も木もみんな仏性=仏の心を持ち、すでに悟りの境地にあるという「天台本(てんだいほん)覚(がく)思想」の強い影響がみられます。本覚思想は道元に限らず、比叡山で修行を積んだ法然や親鸞、日蓮や一遍等、仏教各派の宗祖や、修験道・神道等の思想にも少なからず影響を与え、木も草も人間とともに悟りを得るわけであるから、人間と自然とが平等、一体であるという、日本独特の思想を育んだといえます。
道元の主著『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』全九十五巻をみますと、難解な思想が語られる一方で、修行者には欠かせない衣服について語る「袈裟(けさ)功徳(くどく)」の巻や食事に必要な食器について語る「鉢盂(ほう)」の巻、毎朝の洗面について語る「洗面」、大小便の際の作法や意味についての「洗浄」という巻があり、人間が生きていく上で欠かせない日常生活すべてを含めた偉大なる思想が説かれています。永平寺で修行する雲水(うんすい)(修行僧)たちは朝、3時半に起床し、修行が始まるが、読経、食事の他、特に作務(さむ)と呼ばれる草抜き・掃き掃除・廻廊清掃・雪掻き等が重要視されます。また、食事や洗面、入浴、用便の時も、会話することが許されず、音を出すことさえも禁じられるという非常に細やかな作法と規則に支配されています。なぜそのようなことをするのかという疑問が出てきますが、無心で作務を行うことがすなわち悟りとなるのであるといわれています。
七堂(しちどう)伽藍(がらん)<法堂・仏殿・僧堂・東司(とうす)(便所)等の建物>を結ぶ廻廊は常に塵(ちり)一つなく完璧に磨かれています。無心で廻廊清掃に従事する雲水を眺めていると、いつの間にか彼らが見えなくなる(いなくなる)ような錯覚に陥りました。彼らが無になって全ての作務を行うとき、七堂伽藍とその背後に迫る山川草木とが完全に同化して見えなくなるような気がしました。そう感じたとき、壮大な宇宙の中で人間のみが煩悩を抱え無になれない生命体であるのかもしれないと思いました。これが道元禅師の残そうとした思想なのでしょうか。
永平寺には深遠なる道元禅師の思想が染み込み、今も静かに北陸の地で日本の心を語っているように思いました。  
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

2009-08-20T09:55:15+09:002009年8月20日|おうみブログ, エッセイ|

湖北の観音様を訪ねてきました

10月に計画しています近江学フォーラムの会員様限定の現地研修で訪れます湖北の観音様を一足先に近江学研究所永江弘之研究員と訪ねてきました。
午前11時に大学を車で出発し、湖西路を北に進みました。黒田観音寺の千手観音、石道寺の十一面観音、唐川赤後寺の千手観音、西野薬師堂充満寺の薬師如来と十一面観音、そして、国宝渡岸寺(向源寺)の十一面観音と五体の観音様を訪ねました。
この湖北の観音様はすべて独立したお堂に祭られ、特定のお寺のご本尊となっているのではなく、いつごろからというのはわかりませんが、黒田の観音様は15軒、赤後寺の観音様は80軒というようにその地域の村のみなさんがお守り続けておられます。当番のかたちはそれぞれ違いがありますが、1ヶ月や1年単位でお守りの当番が変わるということです。当番になると一般の方が拝観希望で電話連絡されたときにお堂をあけたり、観音様のお水をかえたりというご奉仕があるとの事です。観音様のお世話ができるということは家族の中に病人もなくみんな元気でいるということです、感謝しています。とおっしゃる当番の方の言葉に観音様に対する深い信仰心を感じました。
湖北の観音様は作家井上靖氏によって昭和46年(1971)5月11日から約1年間朝日新聞朝刊に連載された『星と祭』という小説の舞台となりました。琵琶湖で亡くした娘を忘れることができない主人公が湖北の観音様の慈悲にうたれて現実に向き合っていくという人間の生と死を深く観照した作品です。
赤後寺の千手観音はかつて賤ケ岳合戦時に村人の手によって近くの赤川に埋められ難を避けたと伝えられ、そのためにわずかに残る12本の腕の先がすべて失われているという無残な姿をしています。しかし、この観音様はコロリ(転利)観音と呼ばれ、衆生に起こる災いを一手に受け入れて、災いを福に転じてくれる観音様として親しまれています。『星と祭』の主人公もこの観音様に救われたひとりです。
一つ一つの観音様にそれぞれ伝承があり、篤い信仰があります。
遠くで雷の音が聞こえ、近くにヒグラシの声がする堂内。静寂の中での観音様との出会いは平生の雑念をリセットさせてくれました。長引く梅雨の雨も止み、晴れ間がのぞく午後4時、湖北を後にしました。

報告者:近江学研究所研究員 加藤賢治

山裾に佇む黒田観音寺

山裾に佇む黒田観音寺

プロジェクト科目「仰木森林学」2回目

7月19日(日)「仰木森林学」の2回目の授業が行われました!
今回の授業は前回の授業と場所は変わり、大久保と呼ばれる山林で作業しました。
今回の間伐は前回よりもヒノキが大きく育っており、木が倒れる時に地響きが大きく鳴り迫力がありました。伐採した木を2メートル間隔で切断し、「引っ張りだこ」という機械で山から林道に降ろしました。それらの木材をトラックに載せ、次回の木工作業を行うおごと温泉駅近くの工務店の作業場に運びました。
作業が一段落した後、午後12時に上仰木・辻ヶ下森林組合員と参加学生は上仰木自治会館へ。昼食をとり、午後から1時間あまり「森林塾」と銘打って、いつもご指導いただいています滋賀県の森林整備事務所の職員さんから森林を守るという県の事業についての解説をいただきました。その中で、少しでも森林に親しんでもらうための取組として、簡単な木工アクセサリー作りを紹介していただき、参加者は楽しく山桜の小枝を使ったアクセサリー作りをしました。
次回はいよいよ間伐材を利用した木工作業です。椅子、棚、テーブルなんでも作ることができます。楽しみです。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

伐採した間伐材を機械を使って切り出しました

伐採した間伐材を機械を使って切り出しました


木工アクセサリー作りに取組む参加者

木工アクセサリー作りに取組む参加者


できあがった作品「小枝のモッくん」

できあがった作品「小枝のモッくん」

2009-07-21T10:32:56+09:002009年7月21日|おうみブログ, フィールドワーク|

堅田フィールドワークを行いました。

7月12日(日)に近江学研究所所長の木村至宏先生が担当する芸術文化特論(民俗学概論)の授業の一環で、堅田フィールドワークを行いました。
研究所研究員の加藤も同行し、木村先生とともに約3時間、堅田のすべてを徒歩で巡りました。JR堅田駅に集合し、早速駅前の志賀廼家淡海顕彰碑を解説。堅田出身の喜劇役者(松竹新喜劇)を紹介しました。次にスポーツクラブコジャックビルを訪ねかつて江若鉄道の堅田駅であったことを説明、実業家ヴォーリズの建築として有名な日本基督教団堅田教会、恵心僧都源信の創建と伝えられる堅田満月寺浮御堂、湖族の郷資料館、浄土真宗蓮如上人旧跡である本福寺、堅田源兵衛の首の伝承で知られる光徳寺、中世堅田宮座の中心地伊豆神社、近江を愛した松尾芭蕉を偲ぶ記念碑(十六夜の弁)、今も多くの湖魚の水揚げがある堅田漁港、琵琶湖の最狭部にある琵琶湖唯一の灯台「出島(でけじま)の灯台」、そして新田義貞の妻、勾当内侍(こうとうのないし)の墓があり、その悲しい伝承が今も神事として伝わる野神神社を順に訪ねました。
梅雨の合間、蒸暑い中10ヶ所に及ぶ堅田の民俗ポイントを巡りました。木村先生の万歩計はこの3時間で1万歩を超えました。参加した学生たちはさすがに疲れ気味なところもありましたが、中世から近世にかけて、湖上交通の要衝であったため多くの人たちがここを往来し、恵心僧都源信、蓮如上人、松尾芭蕉、勾当内侍など歴史上の人物が登場する数え切れない伝承が今に伝えられているということを体感し、満足そうに帰途につきました。
歴史文化の薫り高い湖族の郷「堅田」を満喫した一日となりました。

報告者:近江学研究所研究員 加藤賢治


        浮御堂で芭蕉の句碑についての解説を熱心に聞く学生たち

2009-07-13T10:26:43+09:002009年7月13日|おうみブログ, フィールドワーク|

研究発表しました。

6月25日(木)午後6時半から京都市中京区のウイングス京都演習室で「京都民俗学会」の6月定例談話会にて研究発表をしました。
現在私は近江学研究所研究員として成安造形大学が位置する仰木地区の村落の祭祀組織について研究をしています。その研究の中間発表として私が所属する「京都民俗学会」で事例報告し、その分野の研究者からご意見等をいただきました。
村落の祭祀組織に関しては昭和初期に肥後和男博士の「宮座の研究」「近江に於ける宮座の研究」という研究論文から始まり、「宮座」というキーワードと共に多くの研究者が様々な事例に取組み進められてきました。
近江は「宮座」の宝庫といわれています。ここ近江をフィールドとしている関東の研究者も少なくありません。そのような中、仰木の小椋神社を中心とする祭祀組織も例外ではなく、今までに研究の対象となっていました。私はそのような先行研究を踏まえて、現在の習俗の魅力を掘下げ、新たな民俗研究の視点を探りつつ、仰木ワールドを極めたいと思っています。
私の研究は始まったばかりです。ある程度の成果が出ましたらまとめて発表したいと考えています。乞うご期待!

報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

2009-06-29T09:32:14+09:002009年6月29日|おうみブログ, イベント|

近江学研究所主催 公開講座「琵琶湖の魚」を開講しました。

講座名:「琵琶湖の魚」
日時:平成21年6月27日(土) 10:40~12:00
場所:成安造形大学 本部棟三階ホール
講師:前畑政善 (滋賀県立琵琶湖博物館 上席総括学芸員)

本日、近江学研究所主催の公開講座「琵琶湖の魚」を開講しました。滋賀県立琵琶湖博物館の前畑政善氏に琵琶湖に生息する魚類の変遷を解説していただきました。多数のご参加をいただき、ありがとうございました。

2009-06-27T13:19:30+09:002009年6月27日|おうみブログ, お知らせ, イベント|

近江学研究所主催 公開講座「近江の美術-描かれた近江-」を開講しました。


講座名 「近江の美術 –描かれた近江-」
日時  平成21年6月20日(土)10:40~12:00
場所  成安造形大学 本部棟ホール
講師  小嵜 善通(成安造形大学デザイン科教授・附属近江学研究所研究員)
本日、附属近江学研究所主催の公開講座「近江の美術 –描かれた近江-」を開催しました。
本学デザイン科教授・附属近江学研究所研究員の小嵜善通が、近江を描いた様々な絵画について、それぞれの作品が描かれた視点や背景などを解説いたしました。参加をいただきましたみなさまありがとうございました。
次回、第3回目の近江学研究所主催公開講座は6月27日(土)の開催です。定員になりましたら申込受付を締め切りいたします。お申込をお急ぎください。
詳しくはこちらをご覧ください。

2009-06-20T14:25:43+09:002009年6月20日|おうみブログ, お知らせ, イベント|

近江学研究所主催のプロジェクト科目「仰木森林学」始まる!

6月14日(日)「仰木森林学」の授業が行われました!

この授業は成安造形大学の地元仰木地区の山林を整備する事業に本学の学生さんが授業の一環として取り組むものです。
今から40年前に仰木村の村有であった山林を守るため、上仰木地区と辻ヶ下地区の住民が上仰木・辻ヶ下生産森林組合を組織し、自分たちの山を守る活動を始められました。組合員は現在303名、65haの山林を保全する活動が行われています。4年前から大学もその活動に参加させていただき、現在は授業の一環としてまた近江学研究所の活動として取り組んでいます。
授業としての初日にあたる14日は8名の学生が参加しました。おごと温泉駅を9時に集合し、組合員のお迎えを受けて山林へ。当日参加の約30名の組合員とともに初めの1時間半は山を体感するため、森林組合が保有する山林をトレッキングしました。休憩の後、村の長老さんから興味深い昔の山入り(50年前の村の保全活動)の話を聞きながらお弁当をいただき、そのあと滋賀県の山林保全指導員の間伐と枝打ちの解説を受けて、いよいよ保全活動へ。
初めて使う枝打ちのためののこぎりや間伐のためのチェエンソーを緊張しながら握り、約2時間、山に入りました。
午後2時半に終了。体験した学生さんからは「はじめ木々がうっそうとして暗かった森林が、間伐によって見る見る明るくなりおどろいた」「森林を守る大切さを実際にやってみて実感しました」などの感想が聞けました。帰りには組合員の方々から仰木の棚田米をお土産にいただき学生たちは満足そうに帰途につきました。天気にも恵まれすがすがしい気持ちになれた一日でした。
この取組は、このあと間伐材を利用し、地元の大工さんの指導を受けて本棚や椅子などの木工品を作る活動や、山林の斜面を測量する活動などを行う予定です。
またご報告します。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治

2009-06-15T11:13:09+09:002009年6月15日|おうみブログ, フィールドワーク|

近江学フォーラム会員限定講座「渡来人の足跡」開講しました。


講座名 「渡来人の足跡」
日時  平成21年5月16日(土)10:40~12:00
場所  成安造形大学 本部棟三階ホール
講師  大橋信弥(滋賀県立安土城考古博物館学芸課長)

安土城考古博物館学芸課長の大橋信弥氏を講師にお迎えし、近江学フォーラム会員限定講座「渡来人の足跡」を開講いたしました。古代の近江における大陸からの渡来氏族の実像や文化について考古学の立場から明快に解説していただきました。多くの会員に出席をいただき御礼申し上げます。今後のフォーラム会員限定講座の日程はこちらをご覧下さい。

2009-06-13T13:07:43+09:002009年6月13日|おうみブログ, イベント|
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