日時:2012年6月9日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:山折 哲雄 氏
タイトル:「私の見た近江」
6月9日(土)、特別公開講座『私の見た近江』と題して、日本を代表する宗教学者山折哲雄先生にご登壇いただき、山折先生の目で見た近江の魅力について語っていただきました。
山折先生は特に2つ近江の魅力を取りあげられました。一つは「琵琶湖と比叡山の関係がおもしろい」ということです。
言うまでもなく比叡山は仏教の母山といわれるように、最澄に始まり、法然、親鸞、日蓮、道元など鎌倉新仏教を興隆した高僧らが修行をしました。その厳しい修行の中で彼らを一層苦しめたのは琵琶湖がもたらす高い湿気という風土でした。しかし、この湿気は、和辻哲郎がかつて論じたように、モンスーンの影響を受ける日本の風土の一つであり、この高い湿気から涼感という中国や欧米にない感覚が生まれました。涼しいという感覚は連歌や俳句等の日本文学に織り込まれ、日本独特の文化の基層となりました。そのような湿気の高い空間を琵琶湖と比叡山がつくり出し、数々の哲人を生み出した事は特筆に値すると述べられました。
もう一つは、「蓮如上人と近江商人の関係が微妙で、興味がつきない」ということです。
山折先生は『人間蓮如』をご執筆の際に、蓮如が歩いた近江の地をたどったことを懐かしく思い出しますと話されながら、蓮如は難しい教義ではなく、一般民衆に解りやすい御文章(ごぶんしょう)を書きながら布教し、浄土真宗を近江から出発して最終的に大教団につくりあげた。その中で大事なことは、浄土真宗が徹底的に権力や武力に抵抗した反社会的な宗教ではなく、根底には民衆のため世の中のためになると言う救いの宗教であったことであると述べられ、そのような真宗の考え方が近江商人の「三方よし」の中の「世間よし」につながったのではないかと指摘されました。
近江には比叡山と琵琶湖があり、まさにここが日本文化の根源を形成したと言えると力強く近江の魅力を語っていただき、定員を大きく上回る多くの参加者から大きな拍手がおこりました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治