講座名:近江商人の特徴
日 時:平成21年11月28日(土)
場 所:成安造形大学 本部棟三階ホール
講 師:宇佐美英機(滋賀大学教授)
11月28日公開講座が開講されました。今回は近江商人研究の第一人者である滋賀大学経済学部教授の宇佐美英機先生に、「近江商人の特徴」と題して語っていただきました。
宇佐美先生は歴史学の立場で今に伝わる資料をもとに近江商人を分析され、1.商い方法、2.地域貢献、3.奉公人管理という項目で詳しくその特徴を述べられました。
商いの方法においては、近代の経営方法である複数の者が共同出資する「乗り合い商い」や薄利多売によっていかなる状況下でも生き残れる手段を取ったこと、地域貢献の実践においては、「陰徳善事」を実践し、商業で得た富は地域社会に還元すること、奉公人管理においては、奉公人に立身出世を鼓舞し、仕事に対するモチベーションを高めることを重視したことなどが商家の家訓という形で遺された多くの資料から読み取れる。またそれ以外でも利益至上主義ではなく、利益の有効な分配方法や商いを終えた後の老後の過ごし方などが家訓の中に見えると紹介されました。
最後に、近江商人をどう評価するかという点について、一般には史実にもとづかない評価が流布されており、その真の姿を解明することは難しいところであるが、「陰徳善事」の実践といった無形の大切な財産を子孫に残すため、商家の家訓をしっかり書いて後世に伝えたことは間違いなく、これこそが近江商人の評価を高めたと近江商人の歴史的意義を述べられました。
利益至上主義が「美徳」とされる現代社会が世界的な経済不況によって現在閉塞しています。21世紀のより良い社会のあり方を考える時、「陰徳善事」という「地域貢献」の実践を主として書かれた近江商人の家訓の中にそのヒントが隠されていると思いました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治