講師:大橋信弥 (滋賀県立安土城考古博物館学芸課長)
日時:2009年6月13日(土) 10:40~12:00
場所:成安造形大学 本部棟三階ホール
「渡来人の足跡」-近江の渡来氏族とその文化-と題して、近江における渡来人研究の第一人者である安土城考古博物館学芸課長大橋信弥先生に語っていただきました。
先ず『新撰姓氏録』『日本書紀』『続日本紀』という資料を基に東倭漢氏(やまとのあやうじ)系と、秦氏(はたうじ)系という2つの系統の渡来人が活躍をはじめ、中央政界において重要視されるようになったという概説が述べられました。そのうえで、小野妹子や伝教大師最澄などにつながる近江の渡来人たちが表で紹介され、その特徴が詳細に語られました。
近江での発掘調査による報告によると、古墳の石室の形や副葬品によって渡来系氏族の特徴が見え、村落跡の発掘においては、大壁建築やオンドルという朝鮮半島から渡ってきたと考えられる建築物の遺構が大津市中南部で集中的に発見されているという研究報告がされました。加えて、湖東の愛知川流域を本拠地とした依知秦氏(えちのはたうじ)が近江における渡来人の代表的氏族であり、『日本書紀』の白村江の戦いの項で一族である朴市田來津(えちのたくつ)の活躍が詳細に取り上げられていることから、中央において依知秦氏一族が非常に重要な地位を占めていたことがわかるという紹介がされ、近江の歴史の深さを知ることができました。
報告者:近江学研究所研究員 加藤賢治