【公開講座】「ワークショップ『大津絵を描こう!』報告

【ワークショップ】大津絵を描こう!

【ワークショップ】
日時:7月25日(土)15:00~17:00
場所:成安造形大学 生涯学習センター
講師:大津絵師 五代目 高橋 松山 氏

大津絵の伝統的な技法を体験するワークショップを開催

公開講座「大津絵ってなに?―街道の民画『大津絵』入門」に続いて、ワークショップ「大津絵を描こう!」を開催しました。今回取り組んだ画題は「猫と鼠」。本来は食べる側と食べられる側である猫と鼠が酒盛りをする様子を描いた、大津絵を代表する風刺画の一つです。親しみやすい絵の中に、世相や人間社会への風刺や教訓が込められています。

制作は、「カッパ刷り」と呼ばれる型紙を用いた技法からスタートしました。型紙を使って猫や鼠、徳利などに色をのせた後、墨筆で輪郭や細部を描き加え、最後に朱を入れて仕上げていきます。高橋先生が一つひとつの工程を実演しながら、丁寧にご指導くださいました。

型紙を用いる技法は、街道を行き交う多くの旅人に向けて大津絵を効率よく制作するために培われたものです。午前の公開講座で学んだ大津絵の制作背景を、実際に筆を取りながら体験する機会にもなりました。

同じ型紙、同じ画題を使っていても、筆の運びや色の濃淡、輪郭線によって仕上がりはさまざま。特に目元の描き方によって猫や鼠の表情が大きく変わり、それぞれに味わいのある作品が出来上がりました。

制作後には、完成した作品を参加者同士で見せ合い、それぞれの表現の違いを楽しむ姿も見られました。同じ「猫と鼠」でも、一枚一枚に描き手の個性が表れているのが印象的でした。

午前の公開講座で大津絵の歴史や文化的背景を「知り」、午後のワークショップでは実際に筆を取って「描く」。二つのプログラムを通して、大津絵の歴史と表現の魅力をより身近に感じていただく一日となりました。

受講者の皆さんの感想(抜粋)
  • 中学以来の絵筆でしたが、楽しかったです。
  • 見るだけのものを、自分の手で描ける楽しさを味わえた。
  • 大津絵を描いてみたかったので、とてもよかったです。簡素なようで、描くとなるととても難しいなあと痛感しました。筆のタッチの変化の面白さ、スカッとした描写はとても素敵でした。
  • 前半で講座を受けて、後半でワークショップを受けたので、充実した時間となりました。見た目より難しいものでしたが、無心になれて楽しい時間でした。型は同じでも個性が出て、一人ひとり出来上がりが違うのが面白いですね!
  • 以前から大津絵に興味がありましたが、入り口がわからなかったので、気軽に大津絵に触れることができる機会があってよかったです。

なお、ワークショップ当日の様子をYouTubeショートで公開しています。ぜひご覧ください。

▼YouTubeショートはこちら

[講師プロフィール]

五代目 高橋 松山 氏

1996 年より五代目松山として画業に従事。1999 年にはカリフォルニアPacific Asia Museum にて、2019 年にはパリ日本文化会館にて制作実演。各地で個展を開催する他、大津市公開講座や大津歴史博物館での講演など、大津絵の魅力発信に努める。

2026-08-18T09:06:36+09:002026年8月7日|公開講座|

【公開講座】「大津絵ってなに?―街道の民画『大津絵』入門」報告

大津絵ってなに?―街道の民画『大津絵』入門

【公開講座】
日時:7月25日(土)13:00~14:30
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:横谷 賢一郎 氏|大津市歴史博物館 学芸員

「大津絵」をテーマに公開講座入門編を開催

令和8(2026)年度2回目の公開講座を開催しました。

近江学研究所では、初めてテーマに触れる方にも気軽に参加していただけるよう、昨年度から、近江の歴史や文化を分かりやすく紹介する「入門講座」を開催しています。

今年度の入門講座は、「大津市歴史博物館×成安造形大学 連携講座」として、「大津絵ってなに?―街道の民画『大津絵』入門」を開催しました。講師には、大津市歴史博物館学芸員の横谷賢一郎氏をお迎えしました。

江戸時代、東海道の街道筋で生まれ、街道を行き交う人々に親しまれた「大津絵」。今回の講座では、その成り立ちや時代背景、描かれた画題などをたどりながら、大津絵の魅力を分かりやすくご紹介いただきました。

大津絵は、はじめから美術作品として生まれたものではなく、街道を行き交う旅人などに向けて販売され、発展した民画です。人々の需要に応じてさまざまな画題が描かれ、より多くの人に届けるため、効率よく制作するための工夫も重ねられていきました。

また、初期に描かれた「十三仏」や「青面金剛」といった仏画から、「藤娘」や「鬼の念仏」などの世俗画へと、時代とともに画題が変化していったことについても、実際の作品を見ながら解説していただきました。

一見すると素朴で親しみやすい絵の中にも、当時の人々の暮らしや信仰、風刺など、さまざまな意味が込められています。大津絵を「絵」だけで見るのではなく、街道や人々の往来、社会の変化と結びつけて考えることで、その背景にある近江の歴史や文化にも触れる講座となりました。

会場では、横谷氏が持参された大津絵の掛け軸6幅なども展示され、講演終了後も多くの参加者が実物を間近で鑑賞されていました。

同日午後には、五代目大津絵師・高橋松山氏を講師に迎え、ワークショップ「大津絵を描こう!」も開催しました。ワークショップの様子は、別の記事でご紹介します。

受講者の皆さんの感想(抜粋)
  • よく知らない間は、大津絵は絵としてあまり好きではありませんでした。今回その成り立ちや、マーケティングオリエンテッドであることを知り、改めて興味が湧きました。絵としても好きになれそうです。
  • 初心者向けの講座で、楽しく参加させていただけました。
  • 大津絵が、芸術からよりも、庶民のみやげから始まったことにおどろきました。
  • 大津絵のできた経緯や当時の扱われ方がよく分かった。ところどころクスッと笑えるタイミングがあっておもしろかったです。鬼念仏はかわいらしく描かれているけれど、風刺的な意味があるというのは初めて知りました。大津絵が描かれた背景も聞けたので、とても興味深い講義でした。
  • 時間があっという間でした。資料をたくさん用意していただいていたので参考になりました。合羽摺りや手描きの箇所を具体的に示しながら作品解説していただき、スライドで写真が大きく出されるからこそ分かりやすかったです。

[講師プロフィール]

 横谷 賢一郎 氏(大津市歴史博物館 学芸員)

1993 年、同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻卒業。同年より大津市歴史博物館学芸員。専門は、日本近世絵画史。特に18 世紀の京派の絵師たちを専門とするほか、大津市歴史博物館では、大津絵をはじめ、近江八景の肉筆・浮世絵作品、ご当地絵師のほか、書跡・陶磁器・漆工芸など江戸時代の美術工芸全般を担当している。

2026-08-18T09:10:13+09:002026年8月7日|公開講座|

【特別公開講座】「コモンの再生―日本型コミューン主義のために」報告

コモンの再生―日本型コミューン主義のために

【特別公開講座】
日時:7月4日(土)14:00~15:30
場所:東本願寺視聴覚ホール
講師:内田 樹 氏|凱風館 館長・学校法人神戸女学院 理事長・神戸女学院大学 名誉教授

 

コモンの再生をテーマに、京都にて特別公開講座を開催

今回の会場は、近江学の講座として初めて滋賀を飛び出し、京都の東本願寺視聴覚ホールでの開催となりました。

当日はあいにくの雨模様となりましたが、会場には200名を超える多くの方々にお越しいただきました。足元の悪いなかご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

講師には、内田樹先生をお迎えしました。内田先生には、2024年度の「近江学研究所設立15周年記念特別公開講座」でも「コモンの再生」をテーマにご登壇いただき、大きな反響を呼びました。

今回はそのテーマをさらに深め、「コモンの再生―日本型コミューン主義のために」と題してご講演いただきました。

現代社会における個人の孤立や貧困といった課題に対し、ご自身が主宰する「凱風館」での実践を交えながら、「日本型コモンズ」のあり方や「弱い家父長制」という考え方、地方移住支援を通じた今後の展望などについてお話しいただきました。

近江学として初めて京都で開催した今回の講座も、多くの方にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。

受講者の皆さまからは、

・個人が「痩せ我慢」しつつも楽しめるコミュニティを作り、支える存在がいれば、強制せずとも自然と人は集まってくるのかなと今回の講義で感じた。自分も何かチャレンジしたい時、悩む時には人に頼って、いっしょに乗り越える力をつけたいと思った。

・コモン、コミューン、コミュニティなどについて具体的なお話を伺い、今後の時代に大変重要なテーマだと思います。自分自身もさらに深く理解し、今後生きていく上での糧にしていきたいと思います。

・大変勉強になる講演でした。特に「コモン(共有財)の再生」という考え方は、今後の地域づくりに重要な視点だと感じました。

・凱風館の話は具体的で分かりやすく参考になりました。

など、たくさんのご感想をいただきました。

 

なお、本講座のダイジェスト版をYouTubeで公開しています。有料講座として開催した90分間の講演から約20分を抜粋・編集し、講演のエッセンスをご覧いただける内容となっています。ぜひご覧ください。

▼YouTubeダイジェスト版はこちら

【講師プロフィール】
東京大学文学部仏文科卒、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。
東京都立大学人文学部助手、神戸女学院大学文学部助教授を経て同教授。
2011年退職後、神戸に武道と哲学研究のための学塾「凱風館」を設立。専門はフランス文学・哲学、武道論、教育論。合気道七段。近著に『知性について』『日本型コミューン主義の擁護と顕彰 権藤成卿の人と思想』『反知性主義者の肖像』などがある。

2026-08-18T17:29:31+09:002026年7月9日|公開講座|

【公開講座】「藤樹書院というコミュニティ―中江藤樹の教えを伝える村の結束」報告

藤樹書院というコミュニティ
―中江藤樹の教えを伝える村の結束

【公開講座】
日時:6月13日(土)10:40~12:10
場所:成安造形大学 聚英ホール
講師:山本 晃子 氏|高島市教育委員会文化財課課長 兼 中江藤樹・たかしまミュージアム館長

 

「藤樹書院というコミュニティ」をテーマに公開講座を開催

6月13日(土)、今年度(令和8年度)最初のイベントがいよいよスタートしました。その記念すべきプログラムは公開講座です。

今回は「藤樹書院というコミュニティ」と題し、高島市教育委員会文化財課課長・中江藤樹・たかしまミュージアム館長の山本晃子さんにご登壇いただきました。研究所が発行する文化誌『近江学』最新号にご執筆いただいた内容を中心に、中江藤樹の偉業や教えを受け継ぎながら形成されてきたコミュニティの姿についてお話しいただきました。

まず、「近江聖人」とたたえられた中江藤樹とはどのような人物だったのか、また、藤樹が学び人々に伝えた儒学・陽明学とはどのような教えなのかについて、わかりやすいスライドを交えながらご紹介いただきました。「致良知」、すなわち人が本来持つ良知(良い心)を磨き、それを実践することの大切さについてのお話は、大変印象的でした。

また、藤樹書院のある高島市大溝には江戸時代に大溝藩が置かれ、藤樹の教えが藩政にも生かされていたことや、安土桃山時代(織豊時代)に築かれた大溝城が、現在放送中の大河ドラマの舞台の一つとなっていることなど、地域の歴史にまつわる興味深いお話も伺うことができました。

講座の冒頭では、この4月に就任した加藤所長が挨拶し、「近江学は未来学である」という研究所の考えをお伝えしました。中江藤樹が学び、広めた陽明学には「知行合一」という考え方があります。これは、知識を得るだけでなく、それを実践に移すことを重視する教えです。

人工知能(生成AI)や情報通信技術(ICT)の発展が進む現代において、この考え方はますます重要になっているのではないでしょうか。パソコンやスマートフォンの画面上で多くのことが完結する時代だからこそ、本物を見て、触れて、考えたことを実際に行動へ移していくことの大切さを、改めて藤樹の教えから学ぶことができたように感じます。

皆さまもぜひ、「中江藤樹・たかしまミュージアム」に足を運んでみてください。

 

 

受講者のみなさんからは

・今日の講義を胸に秘め、たかしまミュージアムへ伺います。ありがとうございました。

・藤樹先生の名前くらいしか知らず今回の講座に参加しましたが、現在の教えにも通じているのかと、あらためて勉強が必要だと思いました。

・何度か訪れたことがあり理解しているつもりでいたのですが、講義により藤樹の偉大さが前にも増して知れることとなりました。

・近江聖人40才没、私は70才ですが……考えさせられました!明日から生き方を再考させ歩みたいと思いました!

などといった感想をいただきました。

 

[講師プロフィール]

山本 晃子氏(高島市教育委員会文化財課課長 兼 中江藤樹・たかしまミュージアム館長)

佛教大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻は日本仏教史。
今津町教育委員会町史編さん係を経て現在、高島市教育委員会文化財課課長兼中江藤樹・たかしまミュージアム館長。

2026-08-18T16:51:25+09:002026年7月8日|公開講座|

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