講師:大岩剛一 (成安造形大学教授 近江学研究所研究員)
日時:2007年5月19日(土) 10:40~12:00
場所:成安造形大学 本部棟三階ホール

近江学A第3回「里山とスロー・ランドスケープ」

近江学A第3回「里山とスロー・ランドスケープ」

本講義では、大津市仰木の里山を各地のニュータウンと比較しながら、人間が住む場所、ひいては「住むこと」の意味について考察し、地域学としての近江学の可能性を探る。豊かな森と棚田、多数の社寺、共同墓地と無数の地蔵、そして里山の生態系の一翼を担う家々。そこは鳥や虫、植物、人間と死者の魂が共に暮らす村でもある。ここには琵琶湖と里山をめぐる生命の循環、壮大な「命の水系」がある。人と人、人と地域、人と自然が有機的につながり、自然界の循環と人々の宇宙観が重なるスロー・ランドスケープがある。
近代社会は普遍的で合理的なもの、定量化できるものに最大の価値を求めてきた。その結果、地域社会に固有の文化が破壊され、生活様式が画一化し、知は多様性を失った。最大公約数的な思考が主流を占めるこの時代に、地域学は逆に、つつましい世界や小さな空間、ローカルな場所に内在する力(コスモロジーと豊かな想像力)を旗印に掲げる。それは、私たちの暮らしを覆う画一化(グローバル化)への最大の抵抗力となるはずだ。

報告者:大岩剛一 (成安造形大学教授 近江学研究所研究員)