日時:2012年5月12日(土)10:40〜12:10
場所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講師:成子 哲郎 氏  対談:小嵜 善通(本学教授)
タイトル:「近江〜素材のかたち 成子和紙」
今年度の連続講座「近江のかたちを明日につなぐ」の第1回目。講師には、和紙のなかでも「紙の王様」とも呼ばれる雁皮(がんぴ)紙を大津市桐生の郷で漉いておられる成子哲郎氏をお迎えしました。成子氏は、雁皮紙を江戸時代後期から製造する成子紙工房4代目で、「全国手すき和紙連合会」の会長も務められ、手漉き和紙の普及や保存継承に務めておられます。
 当日は雁皮や楮(こうぞ)、三椏(みつまた)など、和紙の原材料となる樹皮サンプルや、紙漉きに用いる諸道具などを用いて、紙漉きの工程を説明いただき、後半では洋紙の原材料(パルプ)を用いた紙漉き実演も行っていただきました。受講者の皆さんには、この実演を通して和紙と洋紙との大きな違いを理解していただけたものと思います。また、雁皮紙、楮紙、葦(よし)紙のサンプルが受講者に配られ、和紙にじかに触れることにより、各々の紙質の違いを実感していただくことができました。
 また、琵琶湖の葦を用いた葦紙製造過程において発生する環境問題や、日本画制作における和紙の重要性など、和紙製造の現状を熟知する成子氏ならではの話題や意見が次々と語られ、和紙への再認識を促された講座となりました。
附属近江学研究所 研究員 小嵜善通