講師:高梨純次 (滋賀県立近代美術館 学芸課長 近江学研究所学外研究員)
日時:2007年9月22日(土) 10:40~12:00
場所:成安造形大学 生涯学習センター
湖北は古代の仏像が集中して伝存していることで全国的にも注目される地域の一つです。高梨先生には、8世紀末から10世紀に造像された湖北の仏像の特徴とその像造背景についてご講義いただきました。鶏足寺の諸仏(木造薬師如来立像・木芯乾漆十二神将像)や日吉神社の木造千手観音立像など、奈良時代末期から平安時代前期にかけての仏像は、作風や技法に唐招提寺など南都の官営工房による仏像と共通する点が認められることなどから、当時の湖北の仏像は官営工房との密接な繋がりのなかで像造されたと考えられるとのことでした。また10世紀になると、延暦寺中興の祖良源をはじめ、湖北と関係が深い天台座主の影響のもと、延暦寺根本中堂の本尊薬師如来像の写しと考えられる仏像や、天台宗で常行三昧を行う際に用いられる宝冠阿弥陀如来像が造像されるなど、湖北の仏像にも天台宗の影響が色濃く認められるようになるとのことで、時代によって異なる湖北の仏像の造像背景についてお話いただきました。
報告者:小嵜善通 (成安造形大学教授 近江学研究所研究員)