近江学研究所について

近江学へのいざない

住むかたち  衣と食のかたち  道具のかたち  信仰のかたち
家族のかたち  コミュニティのかたち  風景のかたち
そして水のかたち、風のかたち

文化とは、すなわち人のいとなみ、暮らしの「かたち」である。

近江(滋賀県)の芸術・歴史・思想・民俗・自然環境を暮らしの文脈からとらえること。
それは「きもち」や「いのち」とつながり、生み出されてきた「かたち」の背後にある意味を明らかにしながら、新しい近江の姿を浮き彫りにする試みです。
現代に息づく暮らしのかたち(文化)から、失われたさまざまな暮らしのかたちまで、近江の多様な「かたち」に注がれる眼差しは、本学の創作活動、教育、研究によって育まれた造形的感性とも響き合います。文化の研究と「かたち」の再発見・検証は、分かちがたい両輪となり、近江という地域が本来もっているポテンシャルと相まって、地域学研究の新しいアプローチを提起することになるはずです。
また、個々の研究成果や発見が、「命」や「豊かさ」の意味を見直すきっかけになればいい。それは、日本に長く息づいてきた価値観と現代の価値観が融合した、未来に向けた新しい価値の発見と創造につながるはずです。全国でも類まれな美しい自然環境と豊かな文化資源にめぐまれた近江には、すでに新しい価値を生み出す土壌があります。

近江学研究所の理念

小嵜善通

成安造形大学附属
近江学研究所 所長

成安造形大学教授・学長

成安造形大学が位置する滋賀県(近江)は、中央に琵琶湖、それを囲む美しい山々という恵まれた自然環境を有するフィールドです。地形的にも東日本と西日本を結ぶ要衝にあたり、古代から主要な街道が交わる地として栄え、また、琵琶湖は日本海と太平洋を結ぶ大動脈として重要な役割を果たしてきました。そのため滋賀県には指定文化財はもちろん、芸術・歴史・思想・民俗・自然・環境の各分野において、かけがえのない豊かな文化資源が今に残されています。
1993年(平成5年)、滋賀県に開学した成安造形大学は、県内唯一の芸術大学として今日までアーティストの育成と芸術文化を発信する役割を担ってきました。「芸術による社会への貢献」を教育の理念とする 本学では、これまで積み重ねてきた芸術を柱とした教育・研究活動をもとに、新たな展開を目指しています。
20世紀に日本が手にした「物質的な豊かさ」は、高度経済成長と共に切り捨てられてきた「素材や道具、生活思想、自然観等」の上に築かれてきたともいえます。今ここで、失われた多くの事象を再検証し、それらの内にひそむ美しさ、かけがえのなさ、心の豊かさを再生し、未来に託さなければなりません。
本学が主唱する近江学は近江という地域が持つ固有の風土を改めて深く検証する学問です。芸術においては、個を深く掘り下げることによって、幅広く多くの人たちが共感する普遍的な美、新しい価値観を生み出してきました。同様に「地域の持つ固有性」を深く掘り下げることにより、21世紀の社会に活かせる普遍的な価値観を見い出せるのではないでしょうか。近江固有の文化・風土が内包する「豊かさ」を深く掘り下げる意義を感じています。
成安造形大学附属近江学研究所では、芸術の持つ創造精神と結びつけ、新たな可能性を探求します。

近江学研究所の取り組み

研究所の役割である、研究・教育・地域貢献の3つの柱を、具体的に実践し推進していきます。

■ 調査、研究
■ 研究成果のデータベース構築
■ 公開講座の開講
■ 地域とつながる学内基礎教育プログラムの充実
■ 生涯学習システムの構築
■ 共同研究による地域貢献
■ 文化誌「近江学」の発行
■ 研究紀要の発行
■ 近江学研究所Webサイトの運営
■ 県内文化施設とのネットワークの構築
■ 会員制研究会「近江学フォーラム」の運営

近江学研究所の役職者・研究員(50音順)

顧問
木村至宏 (成安造形大学 名誉教授)
所長
小嵜善通 (成安造形大学 教授・学長)
副所長
加藤賢治 (成安造形大学 教授・副学長)
参与
石丸正運 (公益財団法人秀明文化財団専務理事)
今森光彦 (写真家・成安造形大学客員 教授)
上原恵美 (京都橘大学 名誉教授)
岸野洋  (元公益財団法人 滋賀県文化振興事業団 理事長)
武覚超  (比叡山延暦寺長臈・延暦寺学問所所長・叡山学院名誉教授)
福家俊彦 (天台寺門宗総本山園城寺(三井寺)長吏)
客員研究員
大原歩  (成安造形大学 非常勤講師・京都大学大学院技術補佐員)
木津勝  (大津市歴史博物館副館長)
髙梨純次 (公益財団法人秀明文化財団 理事(MIHO MUSEUM研究・展示担当))
對馬佳菜子 (仏像・地域文化プロデューサー)
山本晃子 (高島市教育委員会文化財課 主監)
和田光生 (大津市文化財保護課 主査)
研究員
石川亮  (成安造形大学  准教授)
小嵜善通 (成安造形大学 教授・学長)
加藤賢治 (成安造形大学  教授・副学長)
永江弘之 (成安造形大学 教授)
真下武久 (成安造形大学 准教授)

沿革

2007年度(平成19年度)
近江学研究所運営委員会発足

2008年度(平成20年度)
4月 附属近江学研究所 設置
10月 会員制研究会「近江学フォーラム」発足
WEBサイト公開
1月 研究紀要『近江学』創刊号

2009年度(平成21年度)
5月 「近江学」商標登録
1月 研究紀要『近江学』2号

2010年度(平成22年度)
4月 近江学研究活動「里山 水と暮らし」3ケ年計画プロジェクト開始
11月 寿福滋写真展『山への祈り‐繖山百日回鋒行‐』を開催
1月 研究紀要『近江学』3号

2011年度(平成23年度)
1月 文化誌『近江学』(改名・リニューアル)4号 特集「石のある風景」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第1号を刊行

2012年度(平成24年度)
4月 近江学フォーラム会員に新たに家族会員・教育後援会会員を設置
6月 滋賀WEB大賞2012 最優秀賞(教育団体部門)受賞
1月 文化誌『近江学』5号 特集「木と暮らし」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第2号

2013年度(平成25年度)
4月 近江学研究活動「近江の絵馬現況調査」3ケ年計画プロジェクト開始
10月「仰木ふるさとカルタ原画展-在りし日の里山のくらし」
1月文化誌『近江学』6号 特集「火の物語り」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第3号

2014年度(平成26年)
11月 第27回「大津市文化奨励賞」受賞
1月 文化誌『近江学』7号 特集「金への畏敬」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第4号

2015年度(平成27年)
4月 「近江の山・道・湖」研究プロジェクト開始
4月 公開講座100回記念講演 作家 五木寛之氏講演
5月 日吉大社蔵「長沢芦雪筆 猿図絵馬復元模写」完成奉納
1月 文化誌『近江学』8号 特集「山は語る」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第5号

2016年度(平成28年)
5月 特別公開講座 千日回峰行大行満大阿闍梨 上原行照師「千日回峰行―山に溶け込むことから見えるもの」
1月 文化誌『近江学』9号 特集「道はつなぐ」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第6号

2017年度(平成29年)
4月 設立10周年を迎える
4月 10周年記念特別公開講座 歴史学者 水本邦彦氏 「村の暮らしと道の社会史―私が見た近江学」
1月 文化誌『近江学』10号 特集「湖と生きる」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第7号

2018年度(平成30年)
4月 「近江の里・川・祭」研究プロジェクト開始
4月 特別公開講座 日本画家 西久松吉雄(成安造形大学名誉教授)「杜と地層の風景を描く-近江と西日本」
1月 文化誌『近江学』11号 特集「里のいとなみ」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第8号

2019年度(令和元年度)
4月 特別公開講座 熊倉功夫氏(MIHO MUSEUM館長、国立民族学博物館名誉教授)「日本の食とお茶 -近江の食文化にからめて-」
1月 文化誌『近江学』12号 特集「川とはぐくむ」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第9号

2020年度(令和2年度)
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により活動自粛
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第10号

2021年度(令和3年度)
4月 オンデマンド講座(公開講座・近江学フォーラム会員限定講座)開講
3月 文化誌『近江学』第13号 特集「祭 よりどころ」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第11号

2022年度(令和4年度)
4月 近江学研究所ウェブサイトリニューアル
2月 文化誌『近江学』第14号 特集「禍 転じて」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第12号

2023年度(令和5年度)
4月 「惣・座・講」研究プロジェクト開始
5月 成安造形大学開学30周年記念特別公開講座 今森光彦氏(写真家・本学客員教授)「禍-転じて 禍とともに暮らす 自然災害と里山の再生-」
2月 文化誌『近江学』第15号 特集「惣 はじまりのコミュニティ」
3月『成安造形大学附属近江学研究所 紀要』第13号