近江学フォーラム会員限定講座「近江の東海道と中山道」開講しました
2010年7月3日
講座名:近江の東海道と中山道
日 時:平成22年7月3日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:八杉淳(草津市立草津宿街道交流館館長)
東海道と中山道が交わる交通の要衝「近江」。近江はその道を通じて多くの「ひと」や「もの」とともに「文化」や「情報」が行き交い発展しました。この日は草津市立草津宿街道交流館館長の八杉淳先生にご登壇いただき、東海道、中山道を中心とした街道と近世宿場町の機能について詳しく語っていただきました。
古代から近江は北国と東国、西国を結ぶ三叉路にあたり、東海道・中山道・北国街道・北国脇往還・若狭街道・御代参街道など街道が琵琶湖を囲むように集中していた。現在でもJR琵琶湖線・国道一号線・瀬田唐橋・東海道新幹線・名神高速道路・京滋バイパス・近江大橋が瀬田川に架かっており、まさに交通の要衝であることがわかる。また、宿場町の機能として大名の宿泊施設であった本陣、脇本陣や一般の旅人が利用した旅籠の様子、そして草津宿から石部宿、石部宿から水口宿までの物資運搬の流れなど、当時の人と物の行き来について詳しく紹介していただきました。東海道と中山道が交差する草津宿を中心として、たくさんのスライドを介してわかりやすく講義いただきました。
近江学研究所研究員 加藤賢治
近江学フォーラム会員限定講座「湖北の仏像」開講しました
2010年6月5日
講座名:湖北の仏像-平安時代から鎌倉時代にかけて-
日 時:平成22年6月5日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:高梨純次(滋賀県立近代美術館 学芸課長)
6月5日(土)近江学フォーラム会員限定講座「湖北の仏像-平安時代から鎌倉時代にかけて-」を開講しました。講師は近江学研究所の学外研究員で滋賀県立近代美術館学芸課長の高梨純次先生です。京都のご出身ですが、大学卒業後、滋賀県立琵琶湖文化館の学芸員として滋賀県に来られ、滋賀県立近代美術館では設立準備から現在までご活躍されてきました。ご専門は日本美術史。中でも仏像彫刻史を中心として研究され、滋賀県の仏像研究の第一人者です。
この講座では湖北の仏像彫刻を中心に語っていただきました。「湖北には有名な十一面観音を中心に非常に優れた彫刻が多く残されているが、その優れた完成度をみると小さな工房で仏師がコツコツ制作していたとは考えにくい。おそらく奈良時代、湖北地域に国家的な規模の巨大な官営工房があったと考えられる。そして、平安、鎌倉時代にもそれを受け継ぎ、秀作を量産していた。」と多くの文化財のスライドを紹介しながらわかりやすく紹介いただきました。
また、時代や宗派などによる仏像の形式の違いなども解説いただき、新たな仏像鑑賞の方法を教えていただきました。
最近は歴史文化にスポットがあてられ古寺仏像鑑賞も若者の間で密かなブームとなっています。会員限定講座ということで内容的には難しいところもありましたが、参加者は十分に興味を持って聴講されていました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
公開講座「戦国時代の華 浅井三姉妹」開講しました。
2010年5月24日
講座名:戦国時代の華 浅井三姉妹-数奇な生涯と歴史上果たした役割―
日 時:平成22年5月22日(土) 10:40~12:00
場 所:成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師:畑裕子氏(作家・日本ペンクラブ会員)
来年のNHK大河ドラマで浅井三姉妹の江姫が主人公となることが決まっており、滋賀県ではすでに浅井三姉妹のブームが沸き起こっています。そのような中、近江学研究所でも公開講座に話題の講師を招聘しました。5月22日(土)の公開講座に昨年6月に『花々の系譜 浅井三姉妹物語』をサンライズ出版から出版されました滋賀県在住の作家畑裕子先生をお迎えしました。
講座は畑先生が自ら歩かれて取材された写真をもとに、浅井長政、織田信長、お市、豊臣秀吉など戦国の歴史を紹介されながら、その世に翻弄された三姉妹の人生を語りかけるようにゆっくりと感情豊かに語っていただきました。
講座の最後に先生は、「戦国の姫たちは、政略に飲み込まれ一般的に悲劇のヒロインと理解されているが、浅井三姉妹は母であるお市の教育を受け、それぞれがたくましく前向きに生きた。お江は徳川2代将軍秀忠の正室となり、3代将軍家光を生み、五女の和子は後水尾天皇の皇后となって明正天皇を出産した。」「お市の意を受け継ぎ、戦乱の中で浅井の血を徳川家や皇族にも残したという執念とも言うべき女性の強さを三姉妹から感じ取れる」とまとめられました。
近江学研究所研究員 加藤賢治
公開講座「古代近江の魅力」開講しました。
2010年5月15日
講座名 古代近江の魅力
日 時 平成22年5月15日(土) 14:00~15:20
場 所 成安造形大学 聚英館三階 聚英ホール
講 師 上田正昭(京都大学名誉教授・歴史学者)
5月15日(土)、京都大学名誉教授上田正昭先生にご登場いただき、表題の通り近江の魅力をたっぷりと語っていただきました。日本歴史学の第一人者である上田先生のご講演とあって公開講座の申し込みは400名を越え、会場を2つに分けて開催しました。
「古代の近江国は大国に分類され、天智天皇はこの地に都を置いた。現在は京都にかくれてあまりイメージがしにくいが、古代近江は東西の要として交通の要衝であり高句麗を中心に朝鮮半島とのつながりが深く国際的であり、水に恵まれ非常に豊かな国であった。」平安京、平城京よりも古くに都が設置された理由はそこにあると強調されました。
また、この時代には万葉集や勅撰漢詩集が編まれ日本文学の礎がここに築かれたことも特筆されると述べられました。最後には江戸時代に朝鮮通信使の外交官として活躍した雨森芳州を紹介され、このように優れた人物を多く排出した近江を誇りに思ってくださいと会場内の参加者に熱いメッセージを投げかけられました。
ゆっくりとわかりやすく丁寧で、ときにユーモアを交えながらのご講演は時間のたつのをしばし忘れさせてくれました。
近江学研究所研究員 加藤賢治
オープンキャンパスに「ちま吉」登場!
2010年4月30日
10月に行われる「大津祭」の公式キャラクター「ちま吉」は成安造形大学の学生がデザインしました。
今年度もプロジェクト科目として、授業の一環で大津祭本番までに京阪電車のちま吉ラッピング電車や、自動販売機のデザイン、携帯ストラップ・クリアファイルなどのグッズ販売などちま吉に関する企画をどんどん展開していく予定です。
大津祭の歴史は古く江戸時代初期にさかのぼり、長浜の曳山まつりと並んで湖国三大祭りの一つに数えられます。その源流は京都の祇園会に見ることができますが、精巧なからくりや装飾幕は大津祭独自の文化を今に伝えています。
大津祭を運営するNPO法人大津曳山連盟は2004年に発足し、大津祭の運営に加えて地域活性化の運動も含めてWebサイトの運営の他、様々な取り組みをされています。「ちま吉」もそのような取り組みの中で生まれてきました。
今やちま吉は大津祭を盛り上げ地域活性化のシンボルとして活躍しています。
今回は大津祭の中心地から飛び出しふるさとである成安造形大学に来てくれました。たくさんの来場者に囲まれ人気者でした。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
堅田小学校で歴史の授業!?
2010年4月29日
4月28日(水)、堅田小学校体育館で6年生203名を対象に歴史の授業をしてきました。
この授業のきっかけは、本学の教職員と学生がseian net.TVの企画で制作した中世の堅田衆を主人公としたアニメーションのドキュメンタリーが放映されたことで、それをご覧になった堅田小学校の先生が6年生の歴史の授業の一環でということで声をかけていただいたことにはじまります。私の本務が地域連携推進センターで地域貢献を仕事としていることもあり、喜んで引き受けさせていただきました。
堅田衆は古くから、特定の権力者に支配されることなく自治が行なわれていたこと、地侍層である殿原衆(とのばらしゅう)と農工商を中心とする全人衆(まろうどしゅう)が身分の違いがありながら役割分担をうまく行っていたことなど、スライドを交えて話をしました。6年生に中世の堅田衆を詳しく解説することは難しいことですが、そのところはアニメーションがわかりやすく解説してくれました。
小学生たちが少しでも歴史やアニメーションづくりに興味を持ってくれればと思いながら小学校を後にしました。
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
大津市歴史博物館土曜講座で研究報告をしてきました!
2010年4月22日
近江学研究所公開講座の初回が終了して、その足ですぐに大津市歴史博物館へ。17日午後1時半から大津市歴史博物館講堂において近江学研究所研究員の加藤が4年前から取り組んできた自分の研究を発表しました。
この講座は歴史博物館の企画展「元三大師良源展」の関連企画で開催されたもので、今回私は比叡山横川(よかわ)の麓にある仰木地区の古式祭礼について報告をしました。
成安造形大学が位置する仰木地区には小椋神社を中心としていわゆる「宮座」が運営され、村人が古くから伝わる祭礼を守ってきた。仰木地区は比叡山の麓にあり、琵琶湖を中心とする湖上交通の要衝にあたり、多くの人物や物資がそこを通過しました。そのような位置関係が仰木の歴史や伝承を深め、他には見られない風習が今に伝えられています。
近江は「宮座」の宝庫と呼ばれ、古くから宮座研究の舞台となりました。その村落組織の形態は多様であり複雑で神仏分離が厳しく行なわれた小椋神社を中心とする仰木地区はその中でも珍しい風習や伝承が多く残されています。
「親村」と呼ばれる村組織を詳しく見ながら、その古式祭礼の大切さを語りました。
150名という多くの方々にご清聴いただき、この講演が近江学研究の一助とご理解いただければこのうえない幸せです。今後も足元の研究を続け、多くの皆さんにその成果をお伝えしていきたいと考えています。
近江学研究所研究員 加藤賢治
公開講座「近江学概論」を開講しました。
2010年4月17日
講座名:近江学概論-とくに琵琶湖の呼称について-
日 時:平成22年4月17日(土) 10:40-12:00
場 所:成安造形大学 聚英館3階 聚英ホール
講 師:木村至宏(成安造形大学 附属近江学研究所 所長)
近江学研究所も開設3年目を迎えることができました。その研究所の主要な事業である公開講座も今まで以上に発展させていきたいと考えています。
4月17日(土)は今年度初めての公開講座を開催しました。毎年度初回の公開講座は恒例となっていますが木村所長が担当となっています。今回は「琵琶湖の呼称について」をテーマになぜ琵琶湖という名前がついたのかを多くの資料を提示しながら解説されました。
今でこそ地図で見ると何とか楽器の琵琶に似ていると言えなくもないが、地図がなかった近世初期になぜ琵琶の形に見えたのか。木村所長が何年も前から疑問に思われていたことについてその答えがこの講義によって明らかになりました。
琵琶湖には霊島「竹生島」があり、そこには古来インドの神である弁才天が祀られ、琵琶湖の湖辺に生活する人々の信仰の対象になっていた。その弁才天は別名妙音天とも呼ばれ、楽器の琵琶を抱えたその姿が尊崇されてきた。
確かに湖のかたちが琵琶に似ているということは否定しないが、砂浜に打ち寄せる細波の音は、自然の中で琵琶の音色と重なり、湖辺の人々はその湖を無意識のうちに弁才天の湖、琵琶の湖、と呼ばれるようになったとはいえないだろうか。
時のたつのを忘れさせるいつもの軽快な木村所長の語りで進んだ公開講座。写真や図版も含め多くの資料をひも解きながら、琵琶湖の呼称についての考察が論理的にまたロマンチックに語られました。学生も含め200名を越える参加者は満足そうでした。
近江学研究所研究員 加藤賢治
ギャラリーアートサイト主催の展覧会『望遠』始まる!
2010年3月9日
上下画像内/左2点 “日出山(遠景)” “日没山(遠景)” 2009 300×300/mm
上下画像内/右2点 “日出山(近景)” “日没山(近景)” 2009 230×185/mm
上 照明有り 下 照明無し 蓄光インク、アクリル
美術作家で本学非常勤講師の石川亮氏の展覧会『望遠』が3月8日(月)から始まりました。近江の風土を現代アートの視点でとらえた斬新な展覧会です。滋賀県は琵琶湖を中心として山々が取り囲み、その山から水が湧き出て川となり琵琶湖へ注いでいます。この環境に注目した石川氏はそれら山の信仰と麓のくらし、そして水との関係を解き明かしながら、自ら県内を歩き回り、80ヶ所の湧水を集めて展示しています。また、山の稜線をモチーフにした平面作品は空の部分を蓄光塗料で塗り重ね、部屋の照明を消すとその部分が光って稜線を浮かび上がらせるという趣向を凝らせた展示は見物です。
近江学研究所の協力で完成した滋賀県の山と川の地図も見応えがあります。是非とも成安造形大学ギャラリーアートサイトまで見に来てください!3月20日(土)まで。入場無料。最終日は1時から作家の講演会やゲストが参加しての座談会も行われます。私も出ます。ぜひご参加を!
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治
大津歴博企画展「元三大師良源」見てきました!
2010年3月7日
3月6日(土)、話題の大津市歴史博物館企画展「元三大師良源」を見学してきました。サブタイトルが「比叡山中興の祖」。最澄、円仁、円珍と続く延暦寺の系譜もいったんは力をなくしてしまいますが、この良源が疲弊した山内を復興します。サブタイトルはこのことに由来しますが、凄まじい改革を強い意志を持って断行したために、恐ろしい形相の天台座主のイメージが強く、良源自身が厄除の御札などになって民間信仰の対象になっていきました。
おみくじの元祖であるとか僧兵をつくったとか祈祷によって皇室の病を打ち払ったとか、たくさんの伝承が今に伝わっています。最澄や法然、親鸞などに比べると一般的には知られていない僧侶なのかもしれませんが、日本浄土教の祖ともいえる恵心僧都源信を弟子に持ち、自らが観音の化身であるとされた良源は、日本文化の基層をつくった魅力のある人物です。この展覧会の入り口から並ぶ全国各地より集まった元三大師像は圧巻です。
是非ともご高覧ください。4月18日(日)まで。一般800円/高大生400円/小中生200円
報告:近江学研究所研究員 加藤賢治